9月1日、Techstrong.AIが「SoftBank-Backed SB Energy Wooed OpenAI With $5.5 Billion Deal Ahead of Planned IPO: Report」と題した記事を公開した。SoftBank傘下のAIデータセンター開発企業SB Energyが、稼働中のデータセンターがゼロ・データセンター部門の売上収入もゼロという状態でIPOを申請しようとしている。その核心にあるのが、OpenAIへの55億ドル相当の株式ワラント付与という異例の取引だ。
IPO前に55億ドルの"口説き料"
孫正義氏率いるSoftBankが過半数株式を保有するAIデータセンター開発会社SB Energyが、OpenAIに対して約55億ドル相当の株式ワラント(新株予約権)を発行した。IPOの草案文書で明らかになったもので、最初にWall Street Journalが報じた。
ワラントはOpenAIに将来の株式を一定条件で取得する権利を与えるもので、SB EnergyのIPO後、同社が特定の時価総額マイルストーンを達成するたびに段階的に行使可能になる仕組みだ。付与時点(今年1月)の評価額は36億ドルだったが、6月末時点で55億ドルに膨らんだ。
SB EnergyはこのIPOで50億〜70億ドルの調達を目指しており、早ければ来月(10月)にも公開申請を行う見通しだ。
出資・契約・保証が入り組む「相互依存の網」
今回の取引が際立つのは金額だけではなく、関係者間の資金的な結びつきの複雑さにある。
- OpenAI → SB Energy:今年初め、OpenAIがSB Energyに5億ドルを出資。IPO後は一桁台のパーセンテージの株式を保有する見込み
- SB Energy → OpenAI:2028年まで、ChatGPT Enterpriseを含むOpenAIのソフトウェア・サービスを最低5000万ドル分購入する契約
- SoftBank → OpenAI:SoftBankはOpenAIへの累計投資額が約650億ドルに達する主要出資者
- NVIDIA → SB Energy:NVIDIAがSB Energyの株式を保有し、IPO関連の2件の非公開取引で30億ドルを拠出。うち1件はIPO公開価格より10%割引で株式を取得できる条件
NVIDIAの参画はGPUサプライヤーとしての戦略的意図とも重なる。SB Energyのような大規模データセンター事業者が成長すれば、NVIDIAの主力製品であるAI向けアクセラレーターの需要も直接拡大する。出資はハードウェア供給網を確保しつつ、主要顧客の成長に乗る二重の意味を持つ。またSoftBankは孫正義氏が主導するAI基盤整備構想「スターゲート(Stargate)」プロジェクトを推進しており、SB EnergyのIPOはその資金調達の一環とも位置付けられる。これらの関係を総合すると、業界の主要なハードウェア・ソフトウェア・資本の提供者が、互いの顧客・投資家・保証人として機能する超連結型の構図が浮かび上がる。
オハイオの巨大キャンパスと「実績ゼロ」のリスク
OpenAIは今月、SB Energyが計画するオハイオ州南部の主力キャンパスに対して、17本の個別リースを締結した。このキャンパスの概要は以下のとおりだ。
- OpenAIがカバーするコンピューティング容量:約8ギガワット(17本のリースの合計規模)
- キャンパス全体の電力インフラ計画:10ギガワット(天然ガス発電所の新設を含む総設備容量)
- SB Energy全社の受注残高:約9ギガワット分(公表ベース、金額換算で約4000億ドル超)
3つの数値はそれぞれ異なる対象を指しており、「8ギガワット=OpenAIとの契約分」「10ギガワット=キャンパスの設備規模」「9ギガワット=全社受注残」と読み分けると整理しやすい。
しかしSB Energyの現状は、これらの数字と大きく乖離している。
- 稼働中のデータセンター:ゼロ
- 建設中の容量:800メガワット
- 受注残高の大半はまだ契約上の約束であり、稼働・収益化には至っていない
SB Energyは現時点でデータセンター部門に売上収入がないことを認めている。再生可能エネルギー部門(太陽光・蓄電池システム)は2026年上半期に1億4000万ドルの売上(前年同期比66%増)を計上したものの、同期間の純損失は32億ドルに急拡大した(前年同期は2億5000万ドル)。損失拡大の主因はワラント評価額の変動に伴う会計処理だ。
IPO草案ではSB EnergyがOpenAIへの依存を「実質的(substantially dependent)」と明記しており、OpenAIの財務状況が悪化した場合に自社経営が「重大な悪影響を受ける可能性がある」とリスクファクターに記載している。
「自社への出資者のみが顧客」という構造
SB Energyの主力データセンター顧客は現在、自社への出資者のみで構成されている。SoftBank・OpenAI・NVIDIAという生成AIエコシステムの中枢プレイヤーが、出資者・顧客・保証人を同時に兼ねる形だ。IPO草案はこの一極集中を率直にリスクとして開示しており、外部投資家にとってはIPO評価の核心的な論点となる。
IPOを通じて外部資本を取り込むことで顧客基盤の多様化を図ろうとしているが、現時点ではこの構造的な依存関係が最大のリスク要因でもある。
詳細はSoftBank-Backed SB Energy Wooed OpenAI With $5.5 Billion Deal Ahead of Planned IPO: Reportを参照していただきたい。