9月1日、SD Timesが「Broadcom Announces VMware AI Factory, Enabling Faster Time to Production AI and Greater Control Over AI Tokenomics」と題した記事を公開した。BroadcomがVMware Explore 2026(ラスベガス)で発表した「VMware AI Factory」は、ベアメタルサーバーの調達からモデル推論の提供まで一気通貫で自動化するプライベートAIクラウド基盤だ。企業がパブリッククラウドへのAI依存を見直し、データ主権とコスト管理を手元に取り戻す「リパトリエーション(本拠地回帰)」の流れを背景に、その訴求力は増している。
ベアメタルからモデル推論まで「数週間→数時間」へ
AIインフラ構築において長年の課題となっているのが、物理サーバーの調達からモデルが実際に推論を返すまでのリードタイムだ。BroadcomはこれをVCF(VMware Cloud Foundation)の基盤自動化で解決しようとしている。
VMware AI FactoryはVMware Private AI Cloudのソフトウェア定義基盤として位置づけられており、ハードウェアプロビジョニング、ソフトウェアスタックの有効化、エンドツーエンドのライフサイクル管理を完全自動化する。BroadcomによればVCFの基盤自動化により、ベアメタルサーバー展開からAIモデルの初回推論提供まで、数週間かかっていた作業を数時間に短縮できるとしている。
VMware Cloud Foundation DivisionのCPOであるPaul Turner氏は次のように述べている。
「エンタープライズはデータが存在する場所でAIを動かしたい。しかし、ベアメタルからモデルへの道のりは遅く、複雑で、コストがかかる。VMware AI Factoryはそれを変える。インフラ展開の自動化、ライフサイクル管理の統合、そして好みのハードウェアと検証済みモデルの選択を可能にする。」
製品マーケティングVPのPrashanth Shenoy氏もSD Timesのインタビューで「企業がオンプレミスのプライベートクラウドに回帰し、プロダクションワークフローをリパトリエーションしている」と言及している。パブリッククラウドへのAIワークロード集中に伴うコストやデータ主権の問題が背景にある。
GPU共有とモデルガバナンスが核心
VMware AI Factoryの技術的な肝は、GPUリソースのプール化と共有にある。従来はワークロードごとにGPUを専有することが多かったが、VCFでは組織横断でGPUを共有し、複数モデルを同一ハードウェア上で並行稼働させる構成をとる。
合わせて発表された新機能・今後提供予定の機能は以下のとおりだ。
- Multi-tenant Model Sharing:AIモデルをテナント間・部署間で安全に共有する機能。独立した名前空間によりデータプライバシーを維持しつつ、重複したモデルデプロイによるGPU無駄遣いを排除する。
- AI Gateway:オンプレミスとクラウド環境をまたぐモデルガバナンスを統一するゲートウェイ。インテリジェントなプロンプトルーティング、トークン・使用量のレートリミット、アプリケーション認可などを備える。企業が複数モデルを使い分けるマルチモデル環境において、どのリクエストをどのモデルに振り向けるかをポリシーで制御できる点が特徴だ。
- Secure AI Sandboxes and Governance:AIエージェントが生成するコードの実行を隔離する仮想コンテナ空間。エージェントの呼び出し方法、アクセスするツール、出力の検証手順を制御レイヤーで定義する。自律的に動作するAIエージェントがホスト環境へ意図せず影響を及ぼすリスクを低減するための仕組みで、エンタープライズのコンプライアンス要件にも対応しやすくなる。
統合されたモデルギャラリーは、ITチームとデータサイエンスチームに対して、VM・コンテナ・GPUリソースにまたがるモデル推論とRAG(Retrieval-Augmented Generation)ワークフローを単一インターフェースで管理する手段を提供する。トークンスループット、レイテンシ、計算・メモリ使用率のオブザーバビリティも組み込まれている。
「AI Tokenomics」とは何か
本製品の発表タイトルに明示されているAI Tokenomicsは、VMware AI Factoryが差別化ポイントとして強調する概念だ。AIモデルへのAPIアクセスはトークン単位で課金・計測されるが、企業がパブリッククラウドのモデルAPIを利用する場合、トークン消費量の把握・制御・コスト配賦は難しくなる。VMware AI Factoryが提供するAI Gatewayのレートリミット機能やオブザーバビリティは、トークン消費をチーム・アプリケーション・ユーザー単位で可視化・管理するための基盤となる。これにより、どの部署がどれだけのAIリソースを消費しているかを把握し、適切なコスト配賦やクォータ管理を実現できる——それがBroadcomの言う「AI Tokenomicsのコントロール」の実態だ。オンプレミスでモデルを自社保有することで、トークン単価のコントロールも含めた経済的合理性を取り戻す、という訴求構造になっている。
MetalSoftとの提携でベアメタル自動化を強化
展開速度をさらに高める施策として、BroadcomはMetalSoftとの新たなパートナーシップも発表した。これにより、VCF向けの統合ヘテロジニアスベアメタル自動化を提供する。
ここで時間軸の整理をしておく。前述の「数週間→数時間」はVCFの基盤自動化全体(ベアメタル展開からモデル初回推論まで)の短縮効果を指す。一方、MetalSoftとの統合が対象とするのはベアメタルプロビジョニングのステップ単体であり、この工程に限れば数週間から数分への短縮が可能になるとしている。複数ベンダーの物理サーバーをVCF管理コンソールから直接プロビジョニング・再構成でき、ベンダー固有ツールが不要になる点が特徴だ。
ハードウェア面では、CiscoやDell Technologies、Lenovo、Supermicroなどが認定するVCF AI ReadyNodesと組み合わせて動作する。また、AMDとの協業により、AMD Instinct GPUとオープンなAMD ROCmソフトウェアエコシステムを組み合わせた構成も提供予定だ。ゼロタッチプロビジョニングがvSphere・vSANからKubernetesおよびAMD GPUオペレーターまで、スタック全体のエンドツーエンド展開をオーケストレーションする。
150以上のモデルに対応
VCFユーザーは、オープンソース・商用を合わせて150以上のモデルをオンプレミスで稼働させることができる。元記事にはNemotron 3、Gemma 4、Qwen 3.7-Max、GLM 5.2といったモデル名が例示されているが、これらは元記事に記載されたままの表記であり、各モデルの最新バージョンや正式名称については各プロバイダーの公式情報を参照されたい。Broadcomは主要AIモデルプロバイダーと連携し、データ主権を確保しながら、VCFの組み込みサービスを通じてモデルをサービスとして提供するかたちを目指している。
詳細はBroadcom Announces VMware AI Factory, Enabling Faster Time to Production AI and Greater Control Over AI Tokenomicsを参照していただきたい。