9月1日、How-To Geekが「Stop writing prompts for Claude」と題した記事を公開した。この記事では、Claudeの新機能「Record a skill」を使って、プロンプトを自分で書かずにClaudeへワークフローを覚えさせる方法について詳しく紹介されている。「AIに仕事を任せたいのに、任せるための説明を書く作業が一番しんどい」——そんな逆説を正面から解決しようとする機能だ。
「Record a skill」とは何か
Claudeには以前からSKILL.mdファイルという仕組みがある。これは、ユーザーが自分のワークフローや好みの作業手順をマークダウン形式のテキストで記述しておくと、Claudeがその手順に従って動いてくれる機能だ(公式ドキュメントも参照)。いわゆるシステムプロンプトをファイルとして永続化するイメージに近い。
問題は、「良いSKILL.mdを書くこと自体が難しい」という点だった。自分の作業手順を正確かつ網羅的にテキスト化するには、ステップを言語化する能力と根気が必要で、説明が雑だとClaudeの動きも雑になる。典型的なガベージイン・ガベージアウトだ。
新機能「Record a skill」はこの問題を根本から解決する。 ユーザーが自分でSKILL.mdを書く代わりに、Claudeに作業の様子を「見せる」だけでよい。Claudeが画面とマイクを録画・録音しながら作業を観察し、SKILL.mdを自動生成する。自分のやり方を「説明できる能力」がなくても、「やって見せる」だけで自動化が完結するのが最大の革新点だ。
使い方
現時点ではMacデスクトップアプリのCoworkモード限定の機能で、Webアプリ・Windows版・Linux版では使えない。CoworkモードはClaudeデスクトップアプリに搭載された、AIがユーザーの画面を参照しながら並走して作業を支援するモードで、後述のComputer Use機能とも連携する。利用できるユーザーはかなり限られるが、条件を満たすなら試す価値は高い。
操作手順は以下のとおりだ:
- ClaudeデスクトップアプリでCoworkモードに切り替える
- チャットウィンドウ内の「+」ボタンをクリック
- 「Record a skill」を選択
- 録画開始後、そのまま自分で作業を実行する
Claudeはクリックしたボタンやウィンドウをすべて把握し、マイクで拾った音声も処理する。録画終了後、スクリーンショットと音声を組み合わせて詳細なSKILL.mdファイルを自動生成する。
作業中に「声に出して考える」ことが重要
記事が特に強調しているのがナレーションの重要性だ。画面録画はClaudeに「どこをクリックするか」を教えるが、「なぜそこをクリックするのか」は音声が伝える。判断の根拠や意図を口に出しながら作業すると、生成されるSKILL.mdの精度が大きく上がる。
また、スキル録画にはより高性能なモデルを使うことを推奨している。スキルを正確に理解・記述するためのコストは惜しまないほうがよく、一度しっかり書けたSKILL.mdは軽量モデルでも問題なく実行できる。
「Computer Use」との組み合わせで真価を発揮
「Record a skill」が特に力を発揮するのが、ClaudeがブラウザやGUIアプリを直接操作する「Computer Use」系のスキルとの組み合わせだ。Computer UseはAnthropicが提供するClaude独自の機能で、AIが人間と同じようにマウスやキーボードを操作してGUI上のタスクを実行できる(Anthropic公式のComputer Use解説も参照)。
従来、このComputer Use向けのSKILL.mdを手書きするには「右上のボタンをクリック、次にポップアップの2番目の選択肢をクリック…」という記述を延々と書き続ける必要があり、記事の筆者は「プロとしてプロンプトを書き慣れている立場でも消耗が激しかった」と述べている。「Record a skill」はまさにこのボトルネックを解消する。
実際にどんな用途で使えるか
記事の筆者が「Record a skill」導入後に特に大きな改善を実感した3つのユースケースが紹介されている。
1. SEOチェックリストの自動化
記事公開前のSEO作業(カテゴリ分け、タグ付け、画像メタデータの入力など)は1記事あたり10〜15分かかる。以前はClaudeに任せても誤操作が続き手動でやり直しが発生していたが、「Record a skill」で正確な操作場所を見せたことで安定して動くようになった。定型データ入力やフォーム操作を繰り返す業務全般に応用できる。
2. GUIアプリの操作自動化
別のアプリをClaudeに操作させる方法には、MCPサーバーやAPI連携(技術的なアプローチ)と、Computer UseなどのGUI操作(非技術的なアプローチ)がある。後者は設定コストが低い分、スキルの記述が大変だったが、これも録画で解決できる。
3. その他の定型ルーティン
週次で同じ画面を同じ順番でクリックするような、低判断・高頻度の作業全般が対象になる。こうした「単純だが毎回やるのが面倒」な作業こそ、録画ベースのスキル登録と最も相性がよい。
「教えること」の難しさをClaudeに転嫁する
記事の言い方が的を射ている。
"Record a skill" takes the burden of teaching off your shoulders and instead forces Claude to be a better student, essentially absorbing the skill from you by watching and listening as you work.
自分のやり方を知っていることと、それを人に教えられることは別の能力だ。「Record a skill」はその非対称性を解消する。ユーザーは「説明する人」ではなく「やって見せる人」になればよい。プロンプトエンジニアリングのスキルを持たないユーザーでも、自分の作業をClaudeに引き継がせるハードルが大幅に下がる。Claudeのデスクトップアプリが対応プラットフォームを拡大するにつれ、この機能の恩恵を受けられるユーザー層は一気に広がるだろう。
詳細はStop writing prompts for Claudeを参照していただきたい。