8月31日、Inside AI News が「Zhipu AI First-Half Revenue Grows 400% to $141.96 Million」と題した記事を公開した。中国AIスタートアップのZhipu AIが2025年上半期に前年同期比400%増となる約1億4200万ドルの売上を記録した。香港上場申請に伴う開示書類で明らかになったこの数字は、DeepSeekが火をつけた価格戦争の只中でも中国AIスタートアップが事業規模を急拡大できることを示す事例として注目される。同社が公開市場でどう評価されるかは、中国AI業界全体の指標にもなりうる。
売上400%増、953.9百万元の中身
北京に拠点を置くZhipu AIは、上半期売上として9億5390万元(約1億4196万ドル)を計上した。この数字は香港証券取引所への上場(ティッカー:2513.HK)に際して提出された開示書類に記載されている。
ただし、利益・損失の内訳は開示されていない。売上規模だけでは、同社がスケール追求のためにキャッシュを燃やしているのか、それとも健全な収益構造を持つのか判断できない。粗利益率の推移が、今後の持続可能な成長を見極める指標になる。
なお、開示書類によれば、この売上数字には資産売却や政府補助金などの一時的な収益は含まれていないとされており、400%成長が事業の実態を反映している可能性は高い。
成長の背景:価格競争と国産チップへのシフト
売上急増の要因は複数ある。
価格戦略が大きい。Zhipu AIはAPIサービスの価格を積極的に引き下げた。これは2025年初頭にDeepSeekが引き起こした中国モデル市場の価格戦争と同じ構図だ。価格を下げながら売上を伸ばしたという事実は、数量ベースの普及が進んでいることを示す。
もう一つの柱が国産チップへの移行だ。Zhipu AIはHuaweiのAscendプロセッサを採用し、NVIDIAハードウェアへの依存を下げている。米国の輸出規制が強化される中、中国製シリコンでの運用実績は、政府・国有企業向け案件において差別化要因になりうる。
販路としては、政府機関や国有企業向けの契約に注力している。データの国内保管を義務付ける「データ主権」要件が、国内ベンダー選択を後押しする構造になっている。
競合との位置づけ
Zhipu AIの主力モデルGLMシリーズは、Alibaba(Qwen)、Baidu、ByteDanceと直接競合する。Alibabaのオープンソースモデルであるクウェン(Qwen)が広く普及している状況に対し、Zhipu AIはエンタープライズ向けカスタマイズとオンプレミス展開を差別化軸に据えている。
中国AIスタートアップの売上公表値としては、この規模はめずらしい。Moonshot AIやMiniMaxが公表している数字はZhipu AIを大きく下回る。
最新モデルのGLM-5は、西側フロンティアモデルと競合するとされるベンチマーク結果を、推論コストの大幅削減で実現したと主張している。
残るリスク
楽観的な数字の一方で、課題も明確に存在する。
- 顧客集中リスク:顧客内訳は未開示。少数の大口契約が売上の大半を占めている可能性がある
- マージン圧迫:価格競争が続けば、売上が伸びても利益率が悪化するシナリオは現実的だ
- 市場の断片化:中国AI市場は依然として分散しており、競争は激しい
- コスト増:販売・マーケティング費用が拡大しており、近期の収益性を圧迫する可能性がある
直近の私募ラウンドでの評価額は約30億ドルとされている。香港上場により、中国AIユニコーンの時価総額の目安が公開市場で示されることになる。
年内に年間売上20億元の達成も視野に入るペースだが、政府調達の季節性が下半期に影響する可能性もある。
展開の視点
Zhipu AIは東南アジアや中東のクラウドパートナーを通じた国際展開も進めており、国内市場の飽和リスクに対するヘッジを図っている。
記事では、この成長軌跡をAlibabaやTencentが黒字化前に三桁成長を続けた「クラウドコンピューティング黎明期」に重ねている。AIモデルプロバイダーが同様の軌跡を描くかどうかは、資本調達環境の継続にかかっている。
Zhipu AIが単独で上場可能な公開企業として成立するかを示すテストケースとして、次の2四半期の数字が注目される。
詳細はZhipu AI First-Half Revenue Grows 400% to $141.96 Millionを参照していただきたい。