8月31日、独立系テクノロジーリサーチ会社のFuturum Researchが「NVIDIA Q2 FY 2027: AI Infrastructure Demand Extends Into FY 2028」と題した記事を公開した。NVIDIAのFY2027第2四半期(2026年)決算は売上高約14兆円($96.22 billion)と前年比106%増を記録し、市場予想を大幅に上回った。問題は業績の良し悪しではなく、「供給が需要に追いつかない」という構造的な逼迫がFY2028まで続くという点にある。
売上高約14兆円、市場予想を大幅に上回る
主要数字は以下の通りだ。
- 売上高:$96.22 billion(約14兆円、前年比+106%)、ウォール街コンセンサスの$92.38 billion(約13.4兆円)を上回る
- データセンター売上:$89.02 billion(約12.9兆円)(前年比+117%、前四半期比+18%)
- うちハイパースケーラー向け:$48.71 billion(約7.1兆円)
- AIクラウド・産業・エンタープライズ向け:$40.31 billion(約5.9兆円)
- 調整後営業利益:$63.96 billion(約9.3兆円)(前年比+124%)、営業利益率66.5%(前年同期61.1%)
- 調整後EPS:$2.22(前年同期$1.01)
Jensen Huang CEOは「AIインフラの構築は全速前進だ。Vera Rubinは、まさにこの瞬間を動かすために設計された」とコメントした。
最大のポイント:Vera Rubinが量産フェーズへ
今四半期で最も重要な戦略的アップデートは、次世代プラットフォーム「Vera Rubin」が本格量産に入ったことだ。Vera Rubinは、NVIDIAが2025年のGTC基調講演で発表した次世代アーキテクチャであり、現行のBlackwellの後継にあたる。
Vera Rubinはすでに以下のパートナーで稼働している。
- CoreWeave
- Google Cloud
- Microsoft Azure
- Oracle Cloud Infrastructure
- Nebius
この顔ぶれは、ハイパースケーラー・ネオクラウド・インフラ専業ベンダーを同時に取り込んでいることを示す。プラットフォームはGPUアクセラレーターにとどまらず、Spectrum-6スイッチシステム(NVIDIAのInfiniBand後継となる高速ネットワーク製品群)、Vera CPU(NVIDIAが独自開発するArmベースのCPU)、BlueField-4 STX(ネットワーク処理とセキュリティ機能を統合するDPU)を含み、ネットワーキング・セキュリティまで一体で提供するAIファクトリー(大規模AI推論・学習施設)向けの参照アーキテクチャとして位置づけられている。
現行のBlackwell Ultraが「現在の需要」を支えるプラットフォームだとすれば、Vera Rubinは「その次の調達・計画サイクル」に向けた可視性をパートナーに与えるものだ。NVIDIAをチップサプライヤーとしてだけ評価する視点では、この変化を捉えきれない。
Blackwell Ultraはハイパースケール需要を維持
Blackwell Ultraはハイパースケーラー向け売上を前年比で倍以上に成長させ、前四半期比でも+13%を記録した。投資家が「大手AI顧客が設備投資を減速させるのではないか」と懸念していた中での数字であり、その不安を払拭した形だ。
一方でメモリコストの上昇が利益率の圧迫要因となっており、一部ではAIサーバーの価格を15%以上値上げしたことも顧客に通知済みだ。NVIDIAがその値上げを実施できること自体が、需要の逼迫度合いを示している。
調達コミットメントと資金調達が示す長期視野
供給面では、調達コミットメント(主にメモリ)が前四半期の$119 billion(約17.3兆円)から$279 billion(約40.6兆円)へ増加した。数年先の需要をカバーするための部材確保だ。
資金調達面では、Apollo、BlackRock、Blackstone、Brookfield、Goldman Sachs、KKRとの戦略的パートナーシップにより、AIインフラ向けに合計$500 billion(約72.8兆円)を超えるサードパーティ資本の動員を目指す(正式合意を前提)。オハイオ州PORTS-Pike Technology Campusでは、SB Energyとの提携により土地・電力・建屋を確保。保証義務の上限は$105 billion(約15.3兆円)、最初のサービスフェーズはFY2029の予定だ。
Q3ガイダンスと利益率の一時的な低下
Q3 FY2027の売上ガイダンスは**$108 billion(約15.7兆円、±2%)**。コンセンサスの$105.15 billion(約15.3兆円)を上回る。なお、このガイダンスは中国向けデータセンター・コンピュート売上をゼロと仮定しており、それを除いた地域での需要の底堅さを示すものだ。
利益率については、メモリコスト上昇の影響でQ4 FY2027に71〜72%まで一時低下する見込みだが、FY2028には価格改定の効果で72〜73%へ回復すると見ている。FY2028の売上は約70%成長を見込む。
まとめ
Futurum Researchは、エンタープライズIT・通信・クラウドインフラを専門とする独立系リサーチ・アナリシスファームだ。同社の分析では、今四半期のNVIDIAは「需要不足」ではなく「供給制約」の状態にあると整理している。Vera Rubinの量産開始、$279 billion(約40.6兆円)の調達コミットメント、そして$500 billion(約72.8兆円)規模の外部資本調達の枠組みは、単一四半期の業績を超えた構造的な需要継続を裏付けるものだ。
※編集部の考察:注目すべきは、中国向け売上を除外した前提でFY2028の70%成長を見込んでいる点だ。地政学リスクを保守的に織り込んだ上でのガイダンスであり、需要の地理的な広がりと米中規制リスクへの耐性を同時に示している。チップ単体の供給動向だけでなく、Vera Rubinを軸としたインフラスタック全体の垂直統合戦略がNVIDIAの成長持続力を左右する局面に入っている。
詳細はNVIDIA Q2 FY 2027: AI Infrastructure Demand Extends Into FY 2028を参照していただきたい。