9月1日、Runtime Wireが「Together AI signs 250 MW Saudi deal, projects $5B annual revenue」と題した記事を公開した。この記事では、AIクラウドプロバイダーのTogether AIがサウジアラビアの国家AI企業HUMAINと250MWのデータセンター契約を締結し、年間50億ドルの収益を見込む大型インフラ案件について詳しく紹介されている。
Together AIがサウジアラビアで250MWの大型契約
Together AIは、サウジアラビアの国家AI企業HUMAINとの間で、250MW規模のデータセンターへのアクセス契約を締結した。この規模は、GPU換算で12万チップの運用を可能にするものだ。
Together AIはX上の投稿で、このプロジェクトが年率換算50億ドル超の収益に相当すると説明した。ただし注意が必要な点がある。この数字は施設が完全稼働したと仮定した場合のグロス収益予測であり、すでに計上・回収した売上ではない。さらにNew York Timesの報道によれば、Together AIはHUMAINに対してレベニューシェアで対価を支払う構造になっており、50億ドルがそのままTogether AIの取り分になるわけではない。
それでも、同社が直近で公表していた11.5億ドル(ARR換算の受注残)と比較すると、4倍超の規模感だ。前者が既存契約の積み上げ、後者が完全稼働時の売上予測という性質の違いはあるが、ビジネス規模の急拡大を示す数字であることに変わりはない。
「電力こそがAIの本当のボトルネック」
Together AIがこの契約に踏み切った背景には、米国内の電力不足がある。
Together AIは投稿の中で「電力こそがAIにおける真のボトルネックだ」と明言した。CEOのVipul Ved Prakash氏はNew York Timesの取材に対し、米国内のデータセンタープロジェクトは地域住民からの反発や建設中止・一時停止措置が相次いでおり、国内キャパシティが逼迫していると説明している。サウジアラビアでの展開は、こうした国内の制約を回避するための現実的な選択肢として浮上した。
Prakash氏は2013年にAppleに買収されたソーシャル検索サービスTopsy共同創業者としても知られる。2022年に機械学習研究者のPercy Liang氏やCe Zhang氏らと共にTogether AIを立ち上げ、オープンモデルの学習・カスタマイズ・サービング向けクラウドインフラを構築してきた。
今回の契約ではHUMAINが電力とインフラを提供し、Together AIが推論ソフトウェア・モデルカタログ・顧客基盤を持ち込むという役割分担になっている。レベニューシェア方式を採用することで、Together AIはデータセンターの建設コストを自社のバランスシートから切り離すことができる。
オープンモデルに特化した戦略的意図
Together AIがこのプロジェクトをオープンモデル向けインフラとして位置づけている点は、単なるマーケティングではなくビジネスモデルに直結している。
MicrosoftやAmazon、Googleは自社の独自モデル開発者を支援するクラウド支出を持つが、オープンモデルにはそうした専用予算がない。Together AIはオープンモデルのホスティングを提供することで収益を得る構造であり、顧客がクローズドモデルのAPIを直接購入する代わりにTogether AI経由でオープンモデルを使えば使うほど利益が増える。
サウジ資本との深い結びつき
HUMAINは2025年5月にサウジアラビア公共投資ファンド(PIF)が設立したAI企業で、皇太子のムハンマド・ビン・サルマン氏が取締役会長を務める。すでにNvidia・AMD・AWSとのインフラ契約を締結しており、Nvidiaとの提携では5年間で最大500MW・数十万GPU規模の計画を描いている。これらのパートナーシップの概要はHUMAINの公式サイトでも確認できる。
Together AIとサウジ資本の関係はこの契約だけにとどまらない。2025年7月に完了した8億ドルのシリーズC資金調達(公式ブログ)はAramco Venturesが主導し、Nvidia・Vista Equity Partners・General Catalyst・Emergence Capital・Salesforce Venturesなどが参加した。この調達でTogether AIの評価額は83億ドルに達したとTechCrunchは報じている。
7月時点でTogether AIは500MW超のコンピュート容量を新規投資家の独立出資によって確保したと発表していたが、今回の250MW案件はその裏付けとなる具体的な契約だ。
今回の契約の商業的成否は、施設がどれだけ早く商用稼働に入り、予測される年間50億ドルのうちどれだけの収益をTogether AIが実際に取り込めるかにかかっている。米国内でのデータセンター建設が難航するなか、資本・電力・地政学的な条件が整うサウジアラビアを選んだこの判断は、今後の業界全体のインフラ戦略にとっても一つの試金石となるだろう。
詳細はTogether AI signs 250 MW Saudi deal, projects $5B annual revenueを参照していただきたい。