8月31日、The Decoderが「ChatGPT now faces stricter EU oversight as a very large search engine」と題した記事を公開した。EUがChatGPTを「超大規模検索エンジン(Very Large Online Search Engine)」としてDSA上で初めて指定し、OpenAIが通常より厳格な監督義務を負うことになった——AIアシスタントが「検索エンジン」として法的に分類されるという、前例のない規制の動きだ。
ChatGPTがEU規制の「検索エンジン」枠に入った理由
EUのデジタルサービス法(DSA)は、オンラインプラットフォームや検索エンジンの規模に応じて義務を課す法律だ。月間アクティブユーザーがEU域内で4,500万人以上に達するサービスは「超大規模(Very Large)」と分類され、通常より厳しい義務が生じる。
EUは今回、ChatGPTがウェブ検索を行い、ユーザーの問い合わせに回答できるという機能を根拠に、検索エンジンとして初めて分類した。OpenAIのチャットボットがEU域内で月間4,500万ユーザーという閾値を超えていることも確認されている。
同時に、RedditとRobloxも超大規模オンラインプラットフォームとして再分類された。両サービスはユーザーがコンテンツを共有できることが根拠だ。これにより、DSAの指定を受けたプラットフォーム・検索エンジンの総数は28件となった。
注目すべきは、RedditやRobloxのような従来型UGCプラットフォームとChatGPTが同一の指定ラウンドで対象となった点だ。業種・サービス形態が大きく異なる三者がまとめて規制対象に加わったことは、EUが「AIサービスを既存の規制カテゴリに積極的に当てはめる」姿勢を強めていることを示している。OpenAIにとってこの指定は単独の出来事ではなく、プラットフォーム規制の網をAI全体に広げようとする動きの一部として読む必要がある。
課される義務の具体的な内容
3サービスには今後4ヶ月以内に追加義務を満たすことが求められる。主な義務は以下のとおりだ。
- リスク評価の実施:違法コンテンツ、未成年者への危険、選挙干渉などへの影響評価
- 広告アーカイブの公開:外部から閲覧可能な形式での広告記録の維持
- 承認済み研究者へのデータアクセス提供
- 半年ごとの透明性レポート提出
- 違法コンテンツの報告・苦情処理メカニズムの整備
- 危機対応メカニズムの構築
EUとしては、アイルランドおよびオランダの規制当局と協力しながら、ChatGPTに対する監査権を新たに獲得することになる。EU委員会副委員長のHenna Virkkunen氏は、対象サービスが厳格な監督に従うことになると述べた。
「学習データへのアクセス権」は解釈次第
今回の指定で特に議論を呼んでいるのが、研究者向けデータアクセスの範囲だ。DSA第40条に基づくアクセス義務が、モデルの学習データやモデルの重み(weights)にまで及ぶかどうかについて、法律専門家の間で見解が割れている。
アムステルダム大学の法学教授Natali Helberger氏はTech Policy Pressに対して次のように語っている。
「第40条のアクセス義務が、システミックリスクの特定やリスク軽減措置の評価に必要な場合、学習データやモデルの重みへのアクセスも含まれるかどうかという点で、興味深い問いを提起する。」
ただし、今回の分類がEU委員会に対してモデルを直接テストする権限を明示的に与えるものではない点は明記されている。
技術的な観点での読み解き
「AIアシスタント=検索エンジン」という解釈はDSAの既存条文を拡張適用するものであり、AI固有の規制フレームワークが整備される前段階の措置と見ることができる。EUには別途、AI法(AI Act)が存在するが、同法は汎用AI(GPAI)に適用される。今回のDSA指定はそれとは独立した枠組みで、ChatGPTの「検索機能」に着目した分類だ。
OpenAIにとっては、透明性報告の義務化や研究者へのデータ開示要件が、今後のモデル開発・運用戦略に影響を与える可能性がある。
詳細はChatGPT now faces stricter EU oversight as a very large search engineを参照していただきたい。