8月31日、The Next Webが「Zuckerberg's plan to replace staff with AI lasted four months」と題した記事を公開した。MetaがAIエージェントで従業員の大半を置き換える計画「Project OT」を立案したものの、第二波計画が中止となり期待を大きく下回る結果に終わった経緯について、Reutersのスクープをもとに詳しく報じている。
AIで人員を60%削減——Metaの野心的計画
Metaは今年前半、「Project OT(Organization Transformation)」というコードネームで、AIエージェントに従業員の日常業務を肩代わりさせる計画を進めていた。Reutersが内部文書やメモ、録音記録、そして社内事情に詳しい20名以上へのインタビューをもとに報じた内容であり、The Next Webはそのスクープを詳細に伝えている(Reuters原報道も合わせて参照されたい)。
計画の発端は今年1月、マーク・ザッカーバーグがハワイの自宅でシニアチームと会合を開いたことだった。AIが数千人規模の従業員が担う日常業務を引き継ぎ、いわゆる「talent-dense(優秀な少数精鋭)」な人材がバーチャルワーカーを監督する体制を構想した。この「talent-dense」という表現はReutersが入手した内部文書中の用語として紹介されている。内部文書によれば、一部チームで最大60%の人員削減を検討するシナリオもあったという。
Metaはこの計画を認め、チームの60%削減はあくまで特定チームのシナリオであり、全社規模で60%削減する意図はなかったと説明した。
二段階計画、第二波は中止
計画は2段階構成だった。第一波として5月に人員削減、第二波として11月にさらなる組織改編を実施する予定だった。ある人事幹部は、削減規模が3年前に実施した約25%の大規模レイオフと同等かそれ以上に達すると試算していた。
ところが5月19日の夜、翌朝の第一波実施直前にザッカーバーグは11月の計画を中止した。翌日には約8,000人(全社員の約10%)の削減が実施され、同週には7,000人がAI関連ポジションに異動となった。なぜ第二波が中止されたのか、Reutersは確認できていないと明記している。
なお、MetaのAI投資・開発方針そのものは継続中であり、今回の計画見直しは「AI活用の撤退」ではなく、組織変革の手法と速度についての修正とみるべきだろう。
AIエージェントが「量」を生んだが「質」は伴わなかった
計画縮小の根本にあるのは、AIエージェントが期待を下回ったという現実だ。CTO(最高技術責任者)のアンドリュー・ボスワースが6月に投稿した社内データによれば、AIによる内部プラットフォームやインフラへのコード変更は前年比220%増に達した。しかし、実際にユーザーが体験できる新機能や改善として届いたコード変更は36%増にとどまった。
この乖離は数字の問題に留まらなかった。4月の社内投稿では、制御されていないAIエージェントが「大規模かつ破壊的なアクションを実行しており、人間ではまず実行しないようなもの」と記されていた。深刻なセキュリティ・技術インシデント(サービス停止や情報漏洩の可能性を含む)は前年比40%増、対応に費やした時間は70%増となった。
6月には、Metaが新たに導入したAIカスタマーサポートボットの脆弱性をハッカーが突き、オバマ政権時代のホワイトハウス公式Instagramなど著名アカウントに不正アクセスされる事件も発生した。
従業員の反発と組織の動揺
現場の従業員は、自分たちがAIの「後継者」を育成させられていると確信するようになった。Metaはエンジニアをソフトウェアパズルの作成(AIの学習データ用)に異動させ、多くの社員が「単純作業だ」と社内に投稿した。また米国従業員のデバイスにキーストロークやマウス操作を記録する追跡ソフトウェアを導入し、AIエージェントに人間のPC操作を学習させようとした。このプログラムは6月に一時停止された。
その後、26人の従業員が「AIシステムが病気休暇中の社員を解雇対象として選別した」として会社を提訴している。
社内の空気は一変した。元記事によれば、社員は幹部の投稿に象の絵文字で返信するようになったという。これは英語の慣用表現「elephants never forget(象は決して忘れない)」に由来し、「会社の行いを忘れない・記録している」という意思表示とされる行動だ。社内のエンゲージメントスコアは半期Pulse調査で74%から55%に低下し、労働組合結成の動きも加速した。
ザッカーバーグ自身が「読み誤り」を認める
7月の社内タウンホールでザッカーバーグはこう述べた。「エージェント開発のトラジェクトリは、少なくともここ4ヶ月、我々が期待していた形では加速していない」。それでも3〜6ヶ月以内に効果が出ると見込むと付け加えた。ボスワースは8月、AI生産性の向上を理由に「休暇を取るのをやめるよう」社員に求めた。
一方でMetaの公式メッセージは変化している。現在Metaは「人材に賭ける」という趣旨の広告を出稿しており、ザッカーバーグが8月に公開した6,500語に及ぶエッセイでは雇用の増加を予測しつつ、「個々の企業では雇用が減る可能性がある」とも認めている。
設備投資の方針は変わっていない。MetaはAIチップとインフラへの今年の投資額として少なくとも1,300億ドルを計画している。ザッカーバーグは今年の全社規模の追加レイオフはないと約束したが、「全社規模」という表現はチーム単位の削減や2027年以降を排除しておらず、社員も気づいている。
現場が注視するのは、Metaが公開をやめた一つの数字——「AIが生み出すコードの量に対し、ユーザーに届く機能の数がいつ追いつくか」だ。
詳細はZuckerberg's plan to replace staff with AI lasted four monthsを参照していただきたい。