9月1日、Los Angeles Timesが「China blasts Anthropic and sets tough terms for U.S.-China AI safety talks」と題した記事を公開した。中国がAnthropicのClaudeを名指しで批判しつつ、米中AI安全対話に先立って厳しい条件を突き付けた経緯について詳しく報じている。米中の技術摩擦が続くなか、AI安全性をめぐる対話が純粋な技術議論にとどまらない政治的文脈を持ち始めていることを示す動きとして注目される。
AnthropicをCCTV系アカウントが名指し批判
中国国営放送CCTVに関連するソーシャルメディアアカウント「玉渊谭天(Yuyuantantian)」が、「Anthropic Has Contracted the American Disease(アンソロピックはアメリカ病に罹った)」と題した投稿を公開し、AnthropicのAIモデル「Claude」を直接名指しした。
批判の内容は具体的で、Claudeが「ユーザーデータの境界を越えた」「隠密な監視を行った」「無断でウェブサイトドメインを送信した」と主張している。
元記事によれば、このアカウントは中国政府の政策的思考を示す公式的なシグナルとして頻繁に利用されている。単なるSNSの投稿ではなく、中国当局の対外メッセージを体現する媒体として機能しているという点が重要だ。
「米国モデルはすでに歪んだ方向に進化した」
投稿の核心にある主張はこうだ:
「アメリカのフロンティアモデルはすでに歪んだ方向に発展している。これは交渉が最初から単なる技術的な対話ではなく、以前の問題すべての延長線上にあることを意味する。米国は自らが引いた『安全境界』を世界全体のデフォルトルールにしようとしている」
さらに投稿は、「米国が提案する『管理』は、中国にアメリカ企業が部分的に定めた秩序を受け入れさせる試みだ」と断じた。米国政府がAI分野のセキュリティ境界を守るべき立場にありながら、「繰り返し後退してきた」とも批判している。
対話前に突き付けた前提条件
中国は「実質的な」米中AI協議が始まる前提として、米国が自国のAI企業に対しても同等の安全基準・情報開示・監査ルールを適用していることを証明することを要求した。元記事ではこれが中国側が示した主要な条件として報じられている。
この要求の背景には、9月24日に予定されている習近平国家主席の訪米がある。トランプ大統領との首脳会談に先立ち、AI分野での対話が行われる見通しだが、会談日程はまだ確定していない。Bloombergの過去の報道によれば、中国当局はアジェンダの詳細を把握できておらず、誰を派遣するかも決めかねている状況だという。
AnthropicのMythosが「攻撃的兵器」になりうるとの懸念
元記事によれば、中国当局はAnthropicのMythos(元記事では詳細は明かされていない)が自国に対して利用される可能性を警戒している。通常目的でのアクセスをAnthropicが拒否していることも、不信感を強めている要因だ。
Anthropicは昨年、米国の安全保障上の懸念を理由に、中国企業へのサービス提供を遮断した。ただし、これが実際に効果を上げているかは疑わしい。
さらにAnthropicは、アリババがClaudeに「不正」アクセスするために数千の偽アカウントを使用したと非難している。アリババはこの主張に対して現時点で回答していない。
OpenAIやGoogleも同様に、自社モデルが中国で利用されることへの懸念を表明している。
技術対話か、政治的駆け引きか
今回の一連の動きが示すのは、AI安全性をめぐる対話が純粋な技術的議論に収まらないという現実だ。元記事が報じる範囲において、中国側は米国主導のAI安全基準の枠組み自体を「技術覇権の延長」として捉えており、その前提を受け入れること自体を拒否する姿勢を示している。
AnthropicおよびU.S. State Department(米国務省)は、米国営業時間外に送られた取材依頼に対し、記事公開時点で回答していない。
詳細はChina blasts Anthropic and sets tough terms for U.S.-China AI safety talksを参照していただきたい。