9月1日、The Next Webが「ChatGPT Ads hits $1B annualised as the EU brings it under the Digital Services Act」と題した記事を公開した。ChatGPTの広告事業が開始から200日未満で年換算10億ドルという節目を超えたと同時に、EUがChatGPTをデジタルサービス法(DSA)上の規制対象に指定した——この二つの出来事が同時期に重なったことで、「チャット上の会話内容を広告ターゲティングに使えるか」という問いが業界全体に突きつけられている。
200日未満で年換算10億ドル
OpenAIの発表によれば、ChatGPTの広告事業は開始から200日未満で年換算収益(annualised revenue run rate)10億ドルに到達した。
同社はこの広告事業の位置づけを「無料tierの資金源」と説明する。広告はサブスクリプション、エンタープライズ契約、有料API利用とともに収益の柱となっており、週10億人以上とされる無料ユーザー向けのChatGPTを支えるものだ。
今回の発表のもう一つのポイントは、広告の購入経路の拡張だ。新たに「Ads Manager」が導入され、ヨーロッパ・インド・中東・北アフリカのいずれの企業も直接広告を購入できるようになった。これまで代理店を経由しなければ参入できなかった市場に、中小企業が直接アクセスできる体制に変わる。
課金モデルも進化している。クリック単価(CPC)課金と成果最適化入札が現在のキャンペーンの大半を占めるようになった。TNWが以前報じたCPC移行の動きの延長線上にある。
EUがDSA上の「超大型検索エンジン(VLOSE)」に指定
OpenAIが広告拡大を発表した前日の8月31日、欧州委員会はChatGPTを**デジタルサービス法(DSA: Digital Services Act)上の「超大型オンライン検索エンジン(VLOSE: Very Large Online Search Engine)」**に指定した。Euronewsが報じた。
VLOSEはDSAが定める規制カテゴリのひとつで、EU域内での月間アクティブユーザーが4500万人を超えるオンライン検索エンジンに適用される最上位の監督区分だ。指定を受けたプラットフォームには、透明性報告の定期提出やアルゴリズムの外部監査への対応など、通常のプラットフォームより厳格な義務が課される。
指定のトリガーとなった数字は1億5910万——EU内での月間アクティブユーザーの申告値だ。DSAの指定閾値は月間4500万ユーザーであり、ChatGPTは3倍以上でこれを超えている。
なお、OpenAIによる広告拡大の発表は翌9月1日付であり、厳密には「同日」の出来事ではない。ただしその時間差は1日であり、規制強化の発表と事業拡大の発表がほぼ同時期に重なったという構図は変わらない。
DSAの指定には具体的な義務が伴う。最も直接的に広告事業に影響するのが「公開広告リポジトリの整備義務」だ。欧州委員会のガイダンスによると、指定されたプラットフォームは以下の情報を広告終了後1年間にわたって公開し続けなければならない:
- 広告コンテンツ
- 広告主の情報
- 掲載期間
- ターゲティングパラメータ
- リーチ数(到達ユーザー数)
OpenAIにはこの義務への対応に4ヶ月の猶予が与えられており、監督機関はアイルランドのデジタルサービス調整機関が担う。
規制の「抜け穴」とパーソナライゼーションの問題
DSAには、センシティブなデータを用いたプロファイリング広告を禁止する条項がある。ただしこのルールは「オンラインプラットフォームの提供者」を対象として書かれており、ChatGPTは「検索エンジン(VLOSE)」として指定されたため、この禁止規定が適用されるかどうかは現時点で明確でない。
これが重要な意味を持つのは、チャットボットという性質上、ユーザーが検索窓には絶対に入力しないような個人的な情報を打ち込む可能性があるからだ。OpenAIは発表の中で、ユーザーのChatGPT上の会話内容を広告に活用する可能性について、「国やユーザーの設定によって、より広いChatGPT上の体験を参照することがある(depending on a user's country and settings, we may reference broader ChatGPT experiences)」と述べている。この記述が、過去の会話内容をターゲティングに用いることを示唆するものかどうかは解釈の余地が残る。さらに同社は「会話型広告(conversational ads)」の開発に向けて動いているとTNWは伝えている。
規制カテゴリの区分けと、実際のサービスが収集するデータの性質とのズレ——この点については、欧州委員会もOpenAI側も現時点で公式な見解を示していない。
詳細はChatGPT Ads hits $1B annualised as the EU brings it under the Digital Services Actを参照していただきたい。