8月29日、Windows Latestが「In a rare move, Google is bringing native Windows 11 and WSL support to its new AI tools」と題した記事を公開した。GoogleがWindowsアプリをChromiumやElectronなしに開発しようとしている——そう聞けば、多くの開発者が二度見するはずだ。同社のAIエージェント開発部門「**Antigravity**」(Googleが2025年後半に設立したAIエージェント開発専門部門で、DeepMindと連携して運営される)が、WSLおよびWindowsネイティブサポートの準備を進めていることが明らかになった。同時期に競合のGitHub CopilotアプリもWSLの実験的サポートをすでに追加しており、開発者向けWindowsエコシステムが急速に整備されつつある。
GoogleのAntigravity、WSLとWindowsネイティブ対応を準備中
GoogleがWindows向けに本腰を入れるのは珍しい。同社はこれまでWindowsのサポートを後回しにするか、RAMを大量消費するChromiumベースのブラウザアプリで済ませることが多かった。
GoogleのAntigravity部門でシニアデベロッパーリレーションズエンジニアを務めるRody Davis(DeepMind兼任)が、Xへの投稿でWSLと「better native Windows support」の両方に取り組んでいることを明言した。
「WSLとWindowsネイティブサポートの改善に取り組んでいます。きちんと仕上げるために時間をかけています。」
— Rody Davis(Google Antigravity / DeepMind)
WSL対応の意図は明快だ。AntigravityのAIエージェントが、ファイル操作・シェルコマンド・ビルドをWindowsを経由せずLinux環境で直接実行できるようになる。
「ネイティブWindowsサポート」の具体的な意味についてはDavisは明言していないが、記事ではMicrosoftがBuild 2026でWindowsの恒久的なネイティブUIフレームワークとして位置づけた**WinUI**が有力候補として挙げられている。MicrosoftはWinUIのGitHub上でのオープンソース化も進めており、外部コントリビューションと公開イシュートラッキングがすでに稼働している。
もしこれが実現すれば、ChromiumベースでないほぼElectronを使わない唯一のGoogle製Windowsアプリになる。AI系クロスプラットフォームツールの大半がElectronを採用しRAMを大量消費する現状を考えると、WinUIネイティブアプリは開発者体験の面でも差別化になりうる。ただしDavisは「まだかなり時間がかかる」とも述べており、出荷までには相応の時間を要しそうだ。
GitHub Copilotアプリ、WSL上でエージェントセッションが動作するように
開発者にとって即座に実用的なのは、GitHub Copilot側の動きだ。
GitHub CopilotのPMリードであるPierce Bogganが、「GitHub CopilotアプリでWSLが実験的にサポートされた」とXに投稿し、デモ動画を公開した。
設定の手順はシンプルだ。Settings → Experimental にある 「WSL hosts (Preview)」 トグルを有効にすると、wsl.exe 経由でインストール済みのWSL 2ディストリビューションが一覧表示される(デモではUbuntuがデフォルトとして表示)。プロジェクトの登録は /home/pboggan/coloring-book のようなLinuxの絶対パスを指定する形式で、アプリ側がパスを検証してから追加する。
セッション開始後はウィンドウ上部に 「WSL: Ubuntu」バッジが表示され、エージェントがLinuxディストリビューション内で動作していることが一目でわかる。Bogganのデモでは、Next.jsプロジェクトのフッターに文字列を追加するタスクを実行した。エージェントは page.tsx・layout.tsx・globals.css を検索し、WSL内で直接 git status --short && git branch を実行してリポジトリの状態を確認、変更後に git diff --check で検証し「Create PR」ボタンを表示するまでの一連のループを完結した。使用モデルは GPT-5.6 Sol(OpenAIの最新APIモデル系列のひとつ)と表示されている。
GitHubの内部フィードバックスレッドでは以前から「Windows + WSLサポートが限定的」という不満が上がっていた。今回のWSL対応は、リモートSSHホストへの接続基盤としても流用できる設計であり、来週中にもRemote SSHサポートが追加される見込みだという。またMicrosoftエンジニアのMichael Tierneyは、「WSLサポートはCopilotのコード生成ロジック自体には影響しない。変わるのはエージェントのファイルシステムとシェル実行の場所だけだ」と補足している。
WSLはWindowsの開発者プラットフォームとして急成長中
背景として、WSL自体の進化も著しい。最新安定版(バージョン2.7.2)ではディレクトリレベルのVirtioFSマウント、virtioネットワーキングへのIPv6対応、DNSトンネリング、カーネルの6.18へのアップデートが加わった。さらにMicrosoftはWSL Containersを出荷済みで、Docker Desktopなしに Windows上でLinuxコンテナをビルド・実行できる。
またBuild 2026では、ls・grep・mvなど75以上のLinuxコマンドラインツールをWSLなしにWindowsネイティブで使えるCoreutils for Windows(Rustベースのuutilsプロジェクト)も発表されている。
Canonicalの発表によれば、UbuntuはネイティブLinux PCよりもWindows 11上でより速く成長しているという。GitHub CopilotのWSL対応、GoogleのAntigravity対応、そしてWinUIのオープンソース化と、開発者向けのWindowsエコシステムが急速に整備されつつある状況が読み取れる。
詳細はIn a rare move, Google is bringing native Windows 11 and WSL support to its new AI toolsを参照していただきたい。