8月31日、Sergio De Simoneが「Cloudflare Extends AI Search to Make it Easier for Agents and Developers to Search Custom Data」と題した記事を公開した。RAGシステムを自前で構築するとなると、クローラー・パーサー・埋め込みモデル・ベクターDB・検索APIと、多数のコンポーネントを組み合わせる必要がある。Cloudflareはこれまで、Workers AI、AI Gateway、Vectorize、R2、Browser Runといった「プリミティブ」を個別に提供してきたが、新たに発表したAI Searchはそれらをエンドツーエンドで統合し、ワンコマンドで検索パイプライン全体を構築できる仕組みだ。
コマンド一発でRAGパイプラインが完成する
AI Searchの最大の売りは、その圧倒的なセットアップの簡潔さだ。以下のコマンドを実行するだけで、クローリング・インジェスト・埋め込み・検索の全工程が自動的に処理される。
npx wrangler ai-search create cloudflare-community \
--namespace dev-stack \
--source https://community.cloudflare.com \
--type web-crawler \
--parse-type discover
従来のAI Searchでは、インデックス対象のWebサイトがサイトマップを公開していることが必要だった。今回のアップデートで「discoverモード」が追加され、サイトマップがないサイトでもページを自動検出してインデックスできるようになった。
Cloudflareは公式ブログでこの取り組みの目的をこう説明している。
Our goal is to give your agents their own search engine, where they can easily find data to provide better answers for themselves and their humans.
(エージェントに専用の検索エンジンを与え、自分自身とユーザーのために、より良い回答を得るためのデータを容易に見つけられるようにすることが目標だ)
なお、Cloudflareは既存サービスとして個別のベクターDB機能をVectorizeとして提供しているが、AI SearchはVectorizeを含む複数のプリミティブを束ねた上位レイヤーに位置づけられる。個別コンポーネントへのフルコントロールが必要なケースではVectorizeなどを直接利用し、迅速にRAGパイプラインを立ち上げたい場合にAI Searchを選ぶという使い分けが想定される。
マルチソース検索とエージェント統合
AI Searchは複数のインスタンスやWebサイトを横断して検索するための単一のエンドポイントを提供する。現時点でインデックス対象として対応しているサービスは、CloudflareのAPI・開発者ドキュメント、Astro、Vite、Hono、Replicateなどで、これらを独立したソースとしてではなく単一のコーパスとして扱い、一度のクエリで横断検索できる。
AIエージェントへの組み込み方法としては、Cloudflareが推奨するWorkerを通じた統合のほか、デプロイ不要な /mcp および /search エンドポイントを公開する方法も選択できる。後者はパブリックな読み取り専用の検索APIとして設計されており、認証なしで利用可能だ。書き込みや管理操作には別途認証が必要な設計となっているため、公開エンドポイントとして提供することによるセキュリティリスクは限定的だとCloudflareは説明している。MCPとはModel Context Protocolの略で、AIエージェントが外部ツールやデータソースと連携するための標準プロトコルだ。
オープンソースCMS「EmDash」(Cloudflare Workers上で動作する軽量CMSで、エッジ環境でのコンテンツ管理を想定して設計されている)で構築されたWebサイト向けには、専用プラグインによって簡単にAI Searchを統合できる。
構造化・非構造化データのインデックスとマルチモーダル対応
AI SearchはWebサイトだけでなく、構造化・非構造化データのコレクションをインデックスしてエージェントからアクセス可能にすることができる。マルチモーダル検索にも対応しており、テキスト以外のデータ形式——画像や表形式データなど——も将来的にインデックス対象とする方向性が示されている。Cloudflareはこの点について、エージェントが多様なデータ形式を扱う実務シナリオを想定した拡張として位置づけている。
PineconeやWeaviateといったスタンドアロンのベクターデータベースサービスと比較したとき、AI SearchはCloudflareのエッジインフラやWorkers AIと深く統合されている点が最大の差別化要素だ。クローリングから埋め込み生成、検索APIの公開までを単一のプラットフォーム内で完結できるため、サービス間の連携コストを削減できる。一方、特定ベクターDB機能の細かなチューニングや、Cloudflare以外のインフラとの組み合わせを重視する場合は、専用サービスの方が選択肢として適する場面もある。
※編集部の考察:AI Searchは「検索パイプラインの民主化」を狙った設計であり、MLOpsの専門知識がないチームがエージェント向けRAGを迅速に試作する用途に特に適していると考えられる。
ベータ期間中は無料、GA後の料金体系も明確
料金モデルは予測しやすさとスケーラビリティを重視した設計だとCloudflareは説明している。デフォルトモデルまたはWorkers AIカタログから選択した一部モデルを使用する場合、埋め込みとリランキングは無料だ。回答生成とクエリの書き換えはモデルの使用量ベースで課金される。
現在はベータ期間中につきAI Searchは無料で利用可能で、料金体系は一般提供(GA)後に適用される。
詳細はCloudflare Extends AI Search to Make it Easier for Agents and Developers to Search Custom Dataを参照していただきたい。