8月28日、Michal Sutterが「Hugging Face Unveils Microduck: A $399 Open-Source 25 cm Biped You Train with Reinforcement Learning」と題した記事を公開した。この記事では、Hugging FaceのロボティクスチームPollen Roboticsが399ドルの小型二足歩行ロボット「Microduck」を発表し、強化学習による訓練パイプライン一式をオープンソースで公開したことについて詳しく紹介されている。
デモ動画ではなく「訓練ループ」を出荷する
399ドルで歩行RLポリシーを自分で訓練できる時代が来た。
ロボット製品の発表といえばデモ動画が定番だが、Pollen Roboticsが出荷するのはデモではなく訓練環境そのものだ。報酬関数、ドメインランダム化の設定、sim-to-realのレシピがすべてGitHubで公開されている。
Microduckは高さ25cm、重量800g未満の二足歩行ロボットで、価格は399ドル。2026年8月27日から先行予約が始まり、クリスマス前の出荷を目標としている。Pollen Roboticsは同じくHugging Face傘下で、すでに1万台以上を出荷した卓上インタラクション型ロボット「Reachy Mini」を手がけているチームだ。Microduckはその対極に位置する——机の上に置いて使うのではなく、床を歩き、転倒し、自力で起き上がることを前提に設計されている。
二足歩行ロボット市場ではFigure AIやUnitreeなど大手プレイヤーが存在感を増しているが、それらは概して高価格帯・クローズドなソフトウェアスタックが中心だ。Microduckはその対極に位置するアプローチとして注目される。ただし、本記事はあくまでMicroduck自体の特徴を紹介するものであり、他製品との直接比較は元記事の範囲外である点に留意されたい。
ハードウェア構成
15個のモーターを脚・首・頭に搭載し、床からモノをつかめる可動式のくちばしも持つ。コンピュートはRockchip RK3566(AIアクセラレータ搭載)、RAM 1GB、ストレージ32GB。センサー構成は価格帯を考えると充実している。
- フロントカメラ(使用中インジケーター付き)
- IMU×2(胴体と頭部にそれぞれ1基)
- コンパクトLiDAR(8×8 ToFマトリクス)
- マイク・スピーカー
- NFCアンテナ×2、Wi-Fi/Bluetooth
- 着脱式NP-F550バッテリー(2600mAh、約1時間稼働)
箱から出してすぐにゲームコントローラーで操作できる訓練済み動作が7種類収録されている:歩行、座る・立つ、キック、物の把持、ローラースケート、転倒からの自己復帰。
強化学習パイプラインの設計が肝
エンジニア視点でもっとも面白い部分がここだ。
訓練はmicroduck_rlリポジトリで完結する。フレームワークは**MuJoCo Warp(MjWarpとも表記される)+PPOの組み合わせで、4096並列環境で回すとCUDAのGPUで1〜2時間**で歩行ポリシーが得られると報告されている。ローカルにGPUがない場合は--hf-jobsオプションを付けるだけでHugging Face Jobs上で同じコマンドが走る。
sim-to-realの精度を支えるのがアクチュエーターモデルの作り込みだ。各サーボには理想的なPDコントローラーではなく、**BAM M6モデル**(Dynamixel XL330向け)を使用。電圧制御則、逆起電力、クーロン摩擦・ストライベック摩擦・負荷依存摩擦をモデル化している。さらに以下のランダム化を環境ごとに適用する:
- バッテリー電圧と負荷時の電圧降下
- コマンド遅延
- 摩擦係数
- ギアのバックラッシュ±1°(合計2°)——14軸すべてに適用
バックラッシュは実機でも同様に存在するため、エンコーダーの読み値はそのプレイの出力側を通じて観測される。ここまでフィジカルな摩擦特性を模擬することで、シミュレーションと実機の乖離を埋めている。
訓練済みポリシーはONNX形式でエクスポートされ、観測値の正規化処理がグラフに焼き込まれる。手動変換したチェックポイントをデプロイするのは避けるようPollen自身が明示的に警告している。
実機上ではRustランタイムが50Hzの制御ループとモーターバスを担当する。全ポリシーは61次元の共通観測ベクター(固有感覚48次元+twist・頭部姿勢・胴体姿勢のコマンド)を共有しており、歩行・自己復帰・トリックの各ポリシーが実行中にホットスワップできる構造になっている。使わないコマンドスロットはゼロパディングされる。
公開済みのタスクレジストリには13種類が収録されており、速度追従、起き上がり、座る・立つ、床からの物体把持、ボールキック(直径70mm・15gのボール)、側転、ローラースケート系5種が含まれる。
ライセンスと注意点
ソフトウェアはApache-2.0ライセンスで公開されている。ただし、機械設計ファイルと電子回路設計ファイルはオープンではない点には注意が必要だ。
製品タイトルや記事見出しでは「オープンソース」と謳われているが、それはあくまでソフトウェア・訓練パイプライン・シミュレーション環境に限った話だ。ハードウェアを自作・改造したり、回路設計を流用したりすることはできない。「オープンソースロボット」という言葉から完全なハードウェア公開を期待すると誤解を招く可能性があるため、購入・研究利用を検討する際は留意しておきたい。
詳細はHugging Face Unveils Microduck: A $399 Open-Source 25 cm Biped You Train with Reinforcement Learningを参照していただきたい。