8月29日、SiliconAngleが「Andreessen Horowitz raises $1.1B AI infrastructure fund for chips, robots and more」と題した記事を公開した。Andreessen Horowitz(以下、a16z)がAIインフラ特化の新ファンド「The Machine Age Fund」として11億ドルを調達したというニュースだ。投資対象はソフトウェアではなく、チップ・ロボット・変圧器といった物理的なハードウェア領域に絞られており、「ハードウェアのサプライサイドはせいぜい年率20〜30%成長にしか慣れていない」という問題意識が投資判断の核心にある。
チップ・ロボット・エッジAIに的を絞った11億ドルファンド
a16zが組成したThe Machine Age Fundは、AIインフラを支えるハードウェアスタートアップへの投資に特化したファンドである。具体的な投資対象として挙げられているのは、データセンター向けチップ・メモリ・ネットワーク機器のメーカー、エッジAIハードウェアのプロバイダー、そしてスマートホーム機器やロボットメーカーだ。
このファンドはゼロから立ち上げたものではなく、a16zが過去2年間にわたって進めてきたAIインフラ投資の拡張版という位置づけである。すでに同分野の6社超に投資実績がある。
注目ポートフォリオ:固体変圧器のHeron Power
既存投資先の中で、技術的に特徴的な企業が**Heron Power Inc.**だ。データセンター向けの変圧器(トランスフォーマー)を開発している。
一般的な変圧器は、絶縁液に浸した金属コイルで電圧を調整する構造だが、Heronの製品は固体素子設計(ソリッドステート)を採用している。金属コイルの代わりにパワーマネジメントチップを使い、そのチップの素材は炭化ケイ素(SiC)——ダイヤモンドに次ぐ硬度を持つ素材——で作られている。
電圧変換以外の機能も備える。停電時に自動起動するバッテリーを内蔵しており、データセンターの稼働継続に寄与する。筐体はコンテナサイズで、既存の変圧器より小型だとしている。リードタイムの短縮とコスト効率の向上も実現するとしている。
その他のポートフォリオには、データセンター建設・運営を手がけるVolta Infrastructure Holdings、複数のロボティクス系スタートアップ、そして次世代チップアーキテクチャに取り組む**Unconventional Inc.**が含まれる。Volta Infrastructure Holdingsはデータセンターの物理的な建設から運営までを担う企業であり、急増するAI計算需要を受けたインフラ整備の最前線に位置する。Unconventional Inc.は既存のチップ設計の枠にとらわれないアプローチでAI処理性能の向上を目指すスタートアップだ。いずれも、ソフトウェアではなく「物理的な計算基盤」を強化するという同ファンドの投資テーゼと一貫している。
「年率20〜30%成長では追いつかない」
ファンドの背景にある問題意識は明確だ。a16zのゼネラルパートナーらはブログ投稿でこう述べる。
「ハードウェア産業のサプライサイドは、せいぜい年率20〜30%の成長に慣れている。需要に追いつくために必要な100%超の成長には程遠い。これは、急速に変わる」
投稿の著者にはMartin CasadoとRaghu Raghuramが含まれており、両者はVMware(データセンター管理ソフトウェアの大手)の元幹部だ。また、a16zパートナーのGuido AppernzellerはIntelのデータセンター部門で最高技術責任者を務めた経歴を持つ。ハードウェアインフラの内情を熟知した布陣での投資判断と言える。
VC各社のAI投資競争
大型AIファンドの組成はa16zに限った話ではない。今年3月にはKleiner Perkinsが2つの新ファンドで合計35億ドルを調達している。そのうち1つはアーリーステージのAIスタートアップ向けだ。その1カ月前には、OpenAI出資でも知られるThrive Capitalが100億ドルを集めている。
AIモデルの進化が加速する中、モデルを動かすためのインフラ——電力、冷却、チップ、ネットワーク——への需要がモデル開発と並行して急増している。この構造的な需要増が、ハードウェア特化型ファンドの組成を後押ししている。a16zが今回ソフトウェアではなくハードウェアに特化したファンドを組成した背景には、AIの普及がいよいよ「物理層」のボトルネックに直面しつつあるという認識がある。
詳細はAndreessen Horowitz raises $1.1B AI infrastructure fund for chips, robots and moreを参照していただきたい。