8月29日、The Newsが「AI bubble fears hit OpenAI, Anthropic employees」と題した記事を公開した。この記事では、OpenAIやAnthropicなどの先端AI企業に勤める従業員たちが、AIバブル崩壊への懸念から資産運用の相談を富裕層向けアドバイザーに持ち込んでいる実態について詳しく紹介されている。
「これがバブルなら、自分の資産はどうなる?」
AI企業の従業員たちが、毎回のミーティングでほぼ同じ質問を投げかけてくる——。富裕層向けの資産管理会社Compound Planning(運用資産総額50億ドル以上)で働くウェルスアドバイザー、ニコラス・ガルシア氏は現状をそう表現する。
OpenAI、Anthropicをはじめとする先端AI企業の従業員が直面しているのは、「資産が増えるスピードが速すぎて、現実感が薄れている」という状況だ。ガルシア氏は「ドルの金額がこれほど早く、これほど大きくなった」と述べており、その急激な資産増加が当事者たちを戸惑わせている。
背景として、評価額の上昇は著しい。Anthropicは2024年時点で約400億ドルと評価されていた。元記事ではさらに高い評価額の数字にも言及しているが、具体的な水準については報道時点の情報と文脈に依存するため、最新の数字は元記事および一次情報源を参照されたい。OpenAIやSpaceXも同様に急激な評価額の上昇を経験しており、こうした高騰ぶりが従業員の「このまま保有し続けてよいのか」という不安を引き起こしている構図だ。AIスタートアップの評価額をめぐる議論は業界全体で活発化しており、いわゆる「AIバブル論争」は投資家・研究者の間でも意見が割れている。
「パニック売り」は少数派、大多数は静かに出口戦略を練っている
ガルシア氏の見立てでは、本当の意味でパニック売りに走るクライアントは**全体の約5%**にすぎない。むしろ大きな層を占めるのは、特定の株価水準に達した際の売却計画を静かに立てているグループだ。「バブルかもしれないが、今すぐ全部売るわけではない」という、冷静かつ慎重なスタンスが主流といえる。
税負担の軽減策として、多くのクライアントが以下の手法を活用している。
- タックスロスハーベスティング(含み損のある資産を売却し、利益と損失を相殺することで課税所得を圧縮する手法)
- ダイレクトインデックス(インデックスファンドを買う代わりに構成銘柄を直接保有し、個別銘柄レベルで税効率を高める手法)
- バリアブル・プリペイド・フォワード(株式を将来の一定期間後に売却することを約束し、現時点で現金を受け取る仕組み。株式の即時売却とみなされないため、課税タイミングを後ろ倒しにできる)
これらはいずれも米国の富裕層や高収入テック従業員がよく利用する節税・リスク管理の手段であり、AI企業従業員特有の話ではない。ただ、AI企業の場合は評価額の上昇スピードが極めて速いため、こうした手法の需要が急増している点が特徴的だ。
一方、5〜10%のクライアントは積極的に資産を現金化し、ベイエリアの住宅購入、リゾート不動産、高級車に資金を振り向けているという。資産を実物に換えることで、株式集中リスクを物理的に分散させる意図もあるとみられる。
「集中リスク」が最大の懸念
111億ドルの資産を管理するMercer Advisorsのアダム・ゴヴァニ氏は、テクノロジークライアントの最大の懸念として「集中リスク」を挙げる。特定企業の株式に資産が偏りすぎているリスクだ。
AI企業の従業員の場合、給与・RSU(制限付き株式ユニット)・ストックオプションがすべて同一企業に連動しており、人的資本(キャリアそのもの)と金融資産が同じリスクにさらされている構造になりやすい。企業が傾けば、職と資産を同時に失いかねないという意味で、分散の重要性は一般的な株式投資以上に高い。
資金の移動先として目立つのは、商業用不動産、節税効果のある地方債(ミュニシパルボンド)、そして今年に入って3桁の上昇率を記録しているネオクラウド株——具体的には**NebiusやCoreWeave**——への乗り換えだ。皮肉にも、AI関連リスクを分散しようとしながら、別のAI関連銘柄に乗り換えているケースも少なくない点は注目に値する。
割れる判断:売るか、暴落を待って買い増すか
Tidemark Financial Partnersでは、クライアントの約半数がテクノロジー銘柄のエクスポージャーを減らしたいと考えている一方、残りの半数は暴落が実際に来た場合に買い増すポジションを取ろうとしている。同じ「バブルかもしれない」という認識を持ちながらも、そこから導き出す行動は真逆に分かれている形だ。
「バブルかもしれない」という不安が業界の外部ではなく、AI企業の内部から聞こえてきていること自体が、現在の過熱感を示す一つの指標でもある。技術者として就職先を選ぶ際や、RSUやストックオプションの行使タイミングを検討する際にも、こうした資産構造上のリスクを意識する必要性は増している。AI産業の急成長が続く中で、その恩恵を受けながらもリスクを冷静に管理しようとする動きが、業界内部から静かに広がりつつある。
詳細はAI bubble fears hit OpenAI, Anthropic employeesを参照していただきたい。