8月28日、CNBCが「DeepSeek looks for fresh capital as founder's quant empire navigates China's choppy IPO market」と題した記事を公開した。評価額740億ドルでの第2回調達交渉、CXMTへの投資で5倍超の急騰益、そして梁文鋒氏が世界で最も裕福なAI創業者になったとも報じられる——DeepSeekをめぐる資金とビジネスの実態が、かつてなく鮮明に浮かび上がった内容だ。この記事では、DeepSeekが初めて外部資金調達に踏み切った背景と、創業者ファンドHigh-Flyerによる中国ハードテクIPOへの投資戦略について詳しく紹介されている。
DeepSeekがついに外部資金調達へ
DeepSeekはこれまで、創業者梁文鋒(Liang Wenfeng)が率いるクオンツファンド(定量運用ファンド)「High-Flyer」によって資金供給されてきた。クオンツファンドとは、数理モデルやアルゴリズムを用いて定量的に運用判断を行うファンドの総称であり、「量子(quantum)」とは無関係である。High-Flyerは株式取引にAIと深層学習を活用してきたファンドで、DeepSeekへの初期資金とコンピューティングリソースの提供元でもある。
しかし今年、DeepSeekは初めて外部投資家に門戸を開いた。Hutong Researchのアナリスト、Sigrid Wang氏はその理由をこう分析する。「DeepSeekはもはや単なるクオンツファンドのサイドプロジェクトでいられる規模ではなくなった」。
実際、DeepSeekの第1回資金調達額は500億人民元(約74億ドル)に上り、これはHigh-Flyerの運用資産総額800億人民元の60%超に相当する。第1回の投資家にはTencent、JD.com、NetEase、バッテリー大手CATLなどが名を連ねた。
さらにウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、DeepSeekは現在評価額740億ドルでの第2回調達(最低74億ドル規模)に向けた交渉を進めており、8月末までのクローズが見込まれている。7月には、投資家との会議で梁氏が「中国と米国のAI格差はコンピューティングリソースの制約にある」と発言した内容がオンラインに流出し、一時調達を中断する事態もあった。
ロジウム・グループのアナリスト、Ciel Qi氏はHigh-Flyerの収益が「不安定になっている」と指摘しており、DeepSeekが同ファンドに頼り続けることは難しくなりつつある状況だ。実際、7月には世界的なAI・チップ株の急落がクオンツ取引にも波及し、High-Flyerの9商品中8商品が損失を記録した(中国国営メディア報道)。8月に入ってから中国クオンツファンド全般のパフォーマンスは回復傾向にあるとされるが、こうした収益の変動が外部調達へと踏み切る一因となったと見られる。
High-Flyerの戦略:北京の産業政策に乗るIPO投資
High-Flyerの関連会社2社(浙江High-Flyer資産管理、寧波High-Flyerクオンツ投資管理)は、中国の注目ハードテクIPOにプレIPO出資(上場前の株式取得)を複数実施している。
今年の出資先の約半数が半導体とそのサプライチェーンに集中している。最大の案件は中国最大手メモリチップメーカーCXMTで、2社合計で約2,600万ドル(1億7,500万人民元)を投じた。CXMTは7月の上海デビューで5倍超の急騰を記録し、中国で最も時価総額の高い企業となった。
もう一つ注目されるのが、ユニツリーロボティクス(Unitree Robotics)への投資だ。High-Flyer系2ファンドが合計580万ドルを出資したほか、DeepSeek自身も戦略的投資家の1社として全株式の2.31%を取得した。注目すべきはロックアップ期間の差異だ。ロックアップとは上場後一定期間、保有株式を売却できない制限のことを指すが、他の戦略的投資家の多くが受け入れた12ヶ月のロックアップに対し、DeepSeekは36ヶ月という長期コミットメントに同意している。これは短期的なキャピタルゲインではなく、技術連携を目的とした関与であることを示唆している。
Unitreeは先週の上海上場初日に460%急騰したが、その後27%下落している。High-Flyerがユニツリーを「運用資産としての投資対象」として扱ったのに対し、DeepSeekは「AIスタックを構築するための戦略的パートナー」として位置付けた、とWang氏は区別する。
北京の思惑と民間ファンドの関係
Brookings InstitutionのKyle Chan氏は、これらの投資を「中国のテックセクター全体を底上げする役割に対する一種の金銭的ボーナス」と表現する。DeepSeekや梁氏のファンドといったスター投資家の存在は、IPOへの注目と正当性をもたらし、バリュエーションを押し上げる効果がある。
High-Flyerの投資先は中国の国家優先分野と概ね一致しているが、業界専門家は「最終目的はあくまで投資リターン」と見ている。上海系ヘッジファンドのポートフォリオマネージャー、Ke Zong氏はこう言い切る。「梁氏を含むDeepSeekの創業チームは根本的にはトレーダーであり、最大の上昇幅を追う性格だ」。
梁文鋒の資産と上場期待
Bloombergの7月時点の報道によれば、DeepSeekにおける持分から、梁氏は世界で最も裕福なAI創業者となった。米国の多くの創業者がコンピューティング調達のために株式を希薄化させてきたのとは対照的に、梁氏は依然として強い支配権を維持している。
Argo Venture PartnersのWayne Shiong氏によれば、投資家の間ではDeepSeekの中国本土上場への期待も高まっている。シニアエンジニアへの金銭的インセンティブが整備されなければ人材流出のリスクがあるためだ。
詳細はDeepSeek looks for fresh capital as founder's quant empire navigates China's choppy IPO marketを参照していただきたい。