8月28日、Futurismが「Mark Zuckerberg Had a Secret Plan to Replace Meta Staff With AI Agents, and It Backfired Spectacularly」と題した記事を公開した。Metaが従業員をAIエージェントで大規模に置き換えようとした極秘計画が、訴訟・社内監視・技術的な遅延という三重の打撃を受けて頓挫した経緯を詳報している。特に衝撃的なのは、解雇対象の選定にAIが使用されたとして26人の元従業員が訴訟を起こした点と、社員のキーストロークやクリック操作をAIの学習データとして収集しようとした事実が表面化した点だ。「AIネイティブな組織」への転換を旗印にしていたMetaがいかにその実現に苦しんでいるかを、具体的な数字と内部証言で示す内容となっている。
「プロジェクトOT」——最大60%削減を狙った極秘計画
Metaの経営陣はZuckerberg主導のもと、「Project Organization Transformation(プロジェクトOT)」というコードネームの計画を策定した。AIエージェント(※後述)に数千人分の業務を担わせることで、人員を大幅に削減するというものだ。
当初の構想では、チームによっては最大60%の人員削減を想定していた。しかしReutersの詳細な取材によれば、この数字はすぐに「まったく非現実的」と判明した。5月の大規模レイオフに続くとされた「第2波」は最終的に中止に追い込まれた。
5月のレイオフは約**8,000人・全従業員の約10%**に及び、それ自体がすでに大きなPR上の打撃となっていた。26人の元従業員による訴訟では、社内AIプラットフォームが解雇対象者の選定に使用され、障害を持つ従業員が不均衡に標的にされたと告発されている。AIを活用したはずの人事判断が、差別的バイアスを内包していたと指摘されている点は、AI活用の倫理的リスクを改めて浮き彫りにする。
※AIエージェントとは: 人間が逐一指示を出さなくても、与えられた目標に向かって自律的にタスクを実行するAIシステムのこと。近年はコーディング補助・カスタマーサポート・データ分析など業務自動化の文脈で急速に注目されている。
社内も炎上——監視ソフトウェア、士気崩壊、そして「おやつとハッカソン」
計画の失敗は数字だけにとどまらない。レイオフの進め方そのものが社内を深刻に混乱させた。
- 怒りを抱えた社員は社内掲示板に不満や罵倒の言葉を投稿した
- Zuckerbergは社員を宥める策として「おやつの改善とハッカソン」を提案し、社内外から皮肉を買った
- Metaは社員のPCに監視ソフトウェアのインストールを試み、タイプした文字やクリックをすべてAIの学習データとして収集しようとしたことも明るみに出た
特に監視ソフトウェアの問題は単なるプライバシー侵害にとどまらない。労働者の同意なく業務上の入力データをAI学習に転用しようとする行為は、労働法上の問題を孕むと同時に、「AIのために社員を道具化する」という印象を社内に広め、士気をさらに低下させた可能性がある。大規模レイオフとこうした施策が重なったことで、残留した社員の間にも不信感が広がったとReutersは伝えている。
※Project OTとは: 正式名称は「Project Organization Transformation」。Metaが極秘裏に策定した人員再編計画のコードネームで、AIエージェントによる業務代替を前提に、部門によっては過半数の人員削減を想定していたとされる。社外に漏れることなく計画が策定・修正・縮小されたことが、Reutersの取材で初めて詳細に明らかになった。
AIエージェント自体の進捗も遅延
そもそもの前提となるAIエージェント技術自体が、計画通りに進んでいない。Zuckerbergは2025年中に、AIエージェント技術の開発が「想定より大幅に遅れている」と自ら認めた。さらにReutersの報道によれば、社内エンジニアはAIが生成したコードに起因する技術的・セキュリティ上のインシデントへの「消火活動」に追われていたという。
「AIが人間の業務を代替できる」という前提のもとで立案された計画が、その肝心のAI技術が未成熟なまま推進されていたことになる。人員削減を先行させ、技術の完成を後追いで目指すという構造自体が、計画の失敗を内包していたとも言える。
Metaは2025年の設備投資予測を最大1,450億ドルにまで引き上げているが、キャッシュフローは低下している。大量解雇によって確保したはずの資金が、AI投資のための原資という説明にもかかわらず、その成果は現時点では乏しい。業界全体でAIへの大規模投資が続く中、Metaの事例はその費用対効果への疑問を改めて提起するものとなっている。
Metaの公式見解と今後
Metaは声明でReutersに対し、「最終的にはすべてのシナリオを実行したわけではなく、そもそもすべてを実行すると想定していたわけでもない」と述べた。計画の存在そのものは否定しつつ、当初の野心的な数字との乖離を「想定内の軌道修正」として位置づけようとする姿勢が見える。
Zuckerbergは今年中の全社的なレイオフはもう行わないと約束しているが、社員はパフォーマンスに基づく追加削減を依然として警戒している。監視ソフトウェアの問題や訴訟が継続している中で、社内の信頼回復がどこまで進むかは不透明だ。
AIによる組織変革を掲げながら、現場の混乱・訴訟・技術的な遅延が重なり、計画は大幅な縮小を余儀なくされた。「AIネイティブな組織」への転換がいかに困難かを示す事例として、業界に対して重要な示唆を残すことになった。テクノロジー企業がAIを組織変革の手段として使う際に何が起きうるかを、具体的な失敗の記録として参照できる一件だ。
詳細はMark Zuckerberg Had a Secret Plan to Replace Meta Staff With AI Agents, and It Backfired Spectacularlyを参照していただきたい。