8月30日、The Next Webが「Hugging Face built a $4.5 billion empire on free AI models. Now Nvidia is buying it for $12.9 billion」と題した記事を公開した。NvidiaがオープンソースAIプラットフォームのHugging Faceを129億ドルで買収することに合意した経緯と、共同創業者Thomas Wolfのインタビューを通じて見えてくる同社の実態について詳しく報じている。
「断った」NvidiaがHugging Faceを129億ドルで買収
2026年8月27日、NvidiaはHugging Faceの買収に合意したとThe Informationが報じた。買収額は129億ドル。2023年時点の評価額45億ドルの約3倍、年間売上1億5000万ドルに対して約86倍という水準だ。この数字が示すのは単なる割高な買収ではなく、Nvidiaがいかにこのプラットフォームを戦略的に必要としているかという切迫感だ。
皮肉なのは、今年1月にHugging FaceがNvidiaからの5億ドル出資(評価額70億ドル)を断っていた点だ。Nvidiaは出資を断られた後、会社ごと買いに来た。
Nvidiaにとってこの金額は13日分の売上に相当する。同社は買収が報じられた日に四半期売上962億ドルを報告しており、次の会計年度は70%増収を見込んでいる。
Nvidiaが欲しかったのは「オープンソースの流通層」
Nvidiaがコントロールできていないレイヤーが一つある。オープンソースAIだ。
Hugging Faceは300万以上のオープンソースLLM(大規模言語モデル)をホストするプラットフォームで、AIコミュニティでは「AI版GitHub」として知られる。だがその実態は、すでにクラウドビジネスに踏み込んだインフラ企業だ。
開発者はHugging Face上でInference Endpoints(専用GPUのAPI)を時間課金でスピンアップできる。価格帯はCPUインスタンスの0.03ドル/時から、NVIDIA H100×8台クラスターの80ドル/時まで幅広い。Together AI、SambaNova、GroqといったGPUクラウドへのAPIルーティング機能も持つ。
さらにHugging FaceとNvidiaはすでにTraining Cluster as a Serviceという共同製品を持っており、Hugging Faceの50万組織がオンデマンドで大規模GPUクラスターを利用できる。Nvidiaにとってこれは、自社が苦戦していたDGX Cloud(約1年前に縮小したとされる)に代わるクラウドへの再参入ルートでもある。
年間売上1億5000万ドルはNvidiaのスケールでは小さい。買収の本質は売上ではなく、CUDAエコシステムへの開発者の依存を維持しながら、OpenAI・Google・Amazon・Anthropicが独自チップを開発する中でのオープンAI流通経路の確保だ。
「GitHubのふり」をしていたロボット会社
250人規模のスタートアップが129億ドルで買われた背景には、意外な多角化がある。
Hugging FaceのCTO(最高技術責任者)Thomas Wolfは今夏、第2世代のコンシューマーロボットキットReachy Mini(399〜499ドル)をリリースする。初代(約100ドル)はすでに1万台以上を売り上げており、今年は2万台ペースで推移している。
さらに買収報道と同日、WolfはHugging Faceの新製品Microduckを発表した。15個のアクチュエーターとLiDAR・NFC・Bluetoothを搭載した全高25センチの二足歩行ロボットで、価格は399ドル。強化学習(RL)で一からトレーニング可能で、ローラースケートや物体の把持など6種類以上の事前学習済みポリシーも同梱される。Wolfは「初めて真にアクセシブルなRLロボット」と呼ぶ。発表後の受注総額は260万ドルを超えた。
ロボット参入のきっかけはソフトウェアだった。Hugging Faceがロボティクス向けオープンソースライブラリをリリースしたところ、ハードウェアのコスト(安価なものでも7,000〜30,000ドル)がボトルネックになっていると気づいた。そこでフランスのロボットスタートアップPollen Roboticsを買収し、自社のオープンソーススタックと低価格ハードウェアを統合した。
誰も予想しなかったストレージ事業
モデルハブがペタバイト規模のモデルウェイトとデータセットを抱えるようになった副産物として、Hugging Faceは独自の高効率ブロブストレージ基盤を構築した。これをそのまま外販している。
AIモデルの重みファイルは数十〜数百GBに達することも珍しくなく、大規模なモデルリポジトリを自前で運営してきたHugging Faceには、大手クラウドとは異なるAIワークロード特化の知見が蓄積されている。その実績が商業契約につながりつつある。2026年6月、AIラボのArceeがAWS S3からHugging Face Private Storageへ移行した。数百万ドル規模の商業契約だ。Wolfは「このストレージ事業は今、非常に強いトラクションを見せている」と述べる。
オープンソースは「サイドショー」ではない
Wolfが個人的に注目するモデルとして挙げたのはGoogle Gemma 4だ。ローカル実行できるサイズでありながら精度が高く、Hugging Faceは数日前にこのモデルとのライブ対話デモを公開した。
また、Wolfが最近行った実験として、100以上のAIエージェントを1週間自由に協調させたプロジェクトがある。結果、vLLM上でGemma 4の推論速度を5倍改善することに成功した。
雇用への影響についてWolfは率直だ。「エージェントに文脈を与え、追跡できる、良いセンスを持った人間はまだ大量に必要だ。思っているより時間がかかるかもしれない」と述べている。
Nvidiaの傘下で、Wolfは同じやり方を続けられるか
Wolfは今年1月にNvidiaの出資を断り、8月に売却を選んだ。記事は「彼が歴史を繰り返すなら、才能と問題を追い続けるだろう。問題は資金の不足ではなく、アクセスの不足だ」と締めくくる。Hugging Faceがここまで影響力を持てたのは、特定企業の利害に縛られないオープンソースの中立性があったからだ。Nvidiaの完全子会社となった後も、そのコミュニティからの信頼とオープンソース路線を維持できるかどうかが、買収の成否を左右する最大の問いになる。
買収はまだ規制当局の承認待ちで、クローズしていない。
詳細はHugging Face built a $4.5 billion empire on free AI models. Now Nvidia is buying it for $12.9 billionを参照していただきたい。