8月29日、Luke Jamesが「California lawmakers unanimously pass Linux exemption from age-verification law」と題した記事を公開した。カリフォルニア州議会がAssembly Bill 1856(AB 1856)を可決し、同州の年齢確認法においてGPL・MIT・BSD・Apacheライセンスで配布されるオープンソースソフトウェア(OSS)が適用除外となることが明文化された。
カリフォルニア州の**Digital Age Assurance Act(デジタル年齢保証法)**は、子どものオンライン安全保護を目的として2025年に成立した法律で、2027年1月1日から施行される予定だ。OSプロバイダーとアプリストアに対し、アカウント作成時にユーザーの年齢データを収集することを義務付けるもので、Windowsを擁するMicrosoft、macOS・iOSを擁するApple、AndroidのGoogleなどが引き続き対象となる。法律の成立以来、「LinuxもWindowsと同じように年齢データを収集しなければならないのか」という不確実性がOSSコミュニティに約1年間にわたってくすぶり続けていた。
今回の改正案AB 1856は8月21日に上院で修正され、8月26日に39対0の全会一致で可決。翌27日に下院が変更を承認した。現在はガビン・ニューサム知事の署名待ちの状態だ。
改正の核心は「OSプロバイダー」の定義の再定義にある。「受領者がソフトウェアをコピー・再配布・改変することを許可するライセンス条件のもとで配布するOS・アプリケーション」を提供する者はOSプロバイダーから除外されると明記された。この要件を満たすのがGPL・MIT・BSD・Apacheライセンスであり、Debian、Fedora、Ubuntu、Arch Linux、BSDファミリーといった主要ディストリビューションが一括して適用除外となる。
適用除外の範囲はOSにとどまらない。aptやpacmanのようなパッケージマネージャー経由で配布されるライブラリや依存関係も「アプリケーション」の定義から除外された。対象となるアプリは「カバー対象のアプリストアを通じてスタンドアロンの実行可能アプリとして消費者に提供されるもの」に限定され、ブラウザの拡張機能ストアも適用外となる。
改正前の法律には、定義上の深刻な問題も内包していた。元の「user(ユーザー)」の定義が「デバイスの主要ユーザーである子ども」とされており、技術的にはカリフォルニア州のすべてのデバイス所有者が子どもとして分類される状態になっていた。年齢確認の仕組みはアカウント設定時に成人が年齢を申告することで「18歳以上」のフラグが立つ設計だが、この定義では誰も成人としてフラグが立てられない。今回の改正でこの定義は削除されている。
一方、**SteamOSの扱いは引き続き不明確だ。システムコンポーネントはArchベースのオープンソースだが、ValveはプロプライエタリなSteamクライアントと合わせてイメージを配布しており、法的にどう判断されるかは現時点では示されていない。プロプライエタリなコンポーネントを含む「混合型」のOSが今後どう扱われるかは、同様の構成をとる他のディストリビューションにも影響しうる論点として残る。対照的に、GrapheneOS**(プライバシー重視のAndroidフォーク)はMITおよびApacheライセンスで配布されており、今回の改正により完全に適用除外となる。GrapheneOSは2025年3月、年齢確認の義務付けには従わないと表明していた。
AB 1856の改正案を提出したのは、Digital Age Assurance Act自体も起草したBuffy Wicks議員だ。自ら成立させた法律の定義上の欠陥を、自らの改正案で修正するという異例の経緯をたどった。2025年2月にLinux開発者コミュニティおよび**Electronic Frontier Foundation(EFF)**から批判を受けたことが直接の契機で、EFFは「オープンソースのOSを商用プラットフォームと同列に扱うことは、フリーソフトウェアの根本的な性質を無視している」として改正を求めていた。GPLやMITといったOSSライセンスの種別が法律の適用除外条件として明文化された事例は珍しく、ライセンス形態が商用ソフトウェアとの法的な線引きとして機能した事例として記録される。
詳細はCalifornia lawmakers unanimously pass Linux exemption from age-verification lawを参照していただきたい。