8月28日、SD Timesが「Report: Business Leaders Say Data Quality is Key to Using AI Agents」と題した記事を公開した。AIエージェントの組織全体への展開において、データ品質とアクセス範囲が成否を左右するという調査結果を紹介したものだ。AIへの投資が加速する一方、「なぜ現場でAIが信頼されないのか」という問いに対して、データ基盤の観点から具体的な数字で答えている点が注目に値する。
Google Cloud × MIT調査:AIエージェント活用の壁は「データの質」にあった
Google CloudとMIT Technology Review Insightsが共同で発表したレポート「Scaling AI Agents with Trustworthy Data」は、データ・テクノロジー系エグゼクティブ300人へのアンケート調査と、HCA Healthcare、Shopify、Deutsche Telekomといった大企業へのインタビューをもとに構成されている。
現在、AIエージェントを組織全体で広く活用している企業はわずか10%にとどまる。しかし、2年以内に69%の組織が大規模展開を計画しており、小規模な実験から全社規模の運用への移行が急速に進む見通しだ。
最も示唆に富む発見:データアクセス範囲がAIの信頼性を左右する
このレポートで特に注目すべき知見が、「データリーダー」と「データラガード」の比較だ。
- データリーダー:企業データの70%超をAIシステムから参照・利用できる状態にしている組織
- データラガード:AIが利用できるデータの割合が30%以下にとどまっている組織
- 平均的な組織:AIが利用できるデータの割合は**45%**程度
この差が、AIの信頼性評価に直結している。データラガードでは、AIエージェントの判断精度を「信頼できる」と回答したエグゼクティブは**22%**に過ぎない。一方、データリーダーでは回答者の大多数が「ほぼ正確」または「一貫して正確」と評価している(※編集部注:元レポートの原文では「100%」という数字が示されているが、強い主張を含む数字のため、原文との照合を推奨する)。
AIが参照できるデータの範囲という一見シンプルな指標が、組織内でのAI信頼度に極端な差を生んでいる。「まずモデルを改善しよう」という発想より先に、「どのデータをどこまで使えるようにするか」を問い直すべきだというメッセージは、エンジニアリング判断にも直結する視点だ。
レガシーシステムが足を引っ張る4つの構造的問題
調査対象のエグゼクティブの**55%**が、レガシーデータシステムがスケールの障害になっていると回答した。具体的な問題は以下の4点に整理されている。
- データサイロ:情報が分断されたシステムに閉じており、AIが組織全体の状況を把握できない
- 非構造化データの未活用:PDF・メール・動画・通話ログといったデータをAIが扱いにくい状態のまま放置している
- バッチ処理による遅延:リアルタイムではなくバッチ単位でデータ処理が行われており、イベント発生時の即応が困難
- コンテキストの欠如:データが何を意味するか、組織内でどう位置づけられるかという業務文脈をAIが持てていない
組織が取り組むべき3つのデータ施策
レポートでは、スケールに向けた優先施策として以下の3点が挙げられている。
- データアクセスの拡大:構造化・非構造化データの双方を接続・活用できる環境の整備
- ガバナンスの強化:AIがより正確に動作できるよう、データモデルに業務コンテキストを付与する
- リアルタイムデータの活用:バッチ処理からストリーミング処理への移行による意思決定の高速化
レポートはさらに、旧来のアーキテクチャにAIを無理に組み込もうとするアプローチは「非効率でコストが高い」と指摘する。そのうえで、データ基盤の役割を「System of Intelligence(知識・情報の蓄積基盤)」から「System of Action(実際の意思決定や行動を支える基盤)」へと転換すべきだと結論付けている。前者が情報を蓄積・検索するための静的な仕組みを指すのに対し、後者はAIがリアルタイムにデータを参照し、ビジネスプロセスに直接介入できる動的なプラットフォームを意味する。データを静的なストレージから動的なプラットフォームへと転換することが、AIが実際のビジネス速度で動くための前提条件だという主張だ。
詳細はReport: Business Leaders Say Data Quality is Key to Using AI Agentsを参照していただきたい。