8月28日、CNBCが「Judge blocks Pentagon blacklist of Anthropic as supply chain risk」と題した記事を公開した。米連邦地裁が、国防総省(DOD)によるAnthropicの「サプライチェーンリスク」指定を憲法違反として無効化したという判決を伝えている。政府がAI企業に対して「国家安全保障」を名目にどこまで制裁的措置を取れるかを問う、業界全体に影響しうる先例だ。
カリフォルニア州連邦地裁のRita Lin判事は8月28日、DODによる当該指定が修正第1条(言論の自由)および修正第5条(デュープロセス=適正手続き条項)に違反すると認定し、指定の無効化(vacate)を命じた。あわせて、DODがAnthropicに対して発したすべてのガイダンス、指令、通達、指示の撤回も指示している。判決文には次の一節が含まれる。
「国家安全保障を空虚に持ち出すことは、政府批判者を罰し報復するための白紙委任状にはならない。」
そもそもの発端は2026年3月に遡る。AnthropicはClaude AIモデルの軍事用途での利用条件をめぐってDODと交渉を進めていたが、条件が折り合わず交渉が決裂。その直後、DODはAnthropicを国防連邦調達規則補則(DFARS)に基づく「サプライチェーンリスク」として指定した。本来この制度は、サイバーセキュリティ上の懸念や外国の影響を受けたサプライヤーを防衛調達から排除するための仕組みだ。しかし今回の指定によって、防衛関連請負業者がAnthropicの技術をDODとの業務に使用することが禁止された。
Anthropicは、この措置が公開的な発言や政策提言への報復として行われたと主張した。交渉決裂という「内部的な出来事」の直後にただちに制裁的指定がなされた経緯について、Lin判事も「正当な安全保障上の理由ではなく、報復的意図に基づくものだ」と認定した。これが修正第1条の「政府への批判・反論を理由とした不利益処分の禁止」原則に抵触するという判断だ。修正第5条の観点では、Anthropicに十分な反論機会が与えられないまま指定が実行されたことが「適正手続きの欠如」として問題視された。
Anthropicはこの措置に対して2つの裁判所で法的対抗手段を取っている。DODが異なる法的根拠に基づいて指定を行ったため、カリフォルニア州とワシントンD.C.の両地裁に別々に提訴した経緯がある。今回の判決はカリフォルニア側のものであり、D.C.側の訴訟は現在も継続中だ。D.C.側の結果次第では、指定の完全な無効化がさらに確実になる。Anthropicは今回の判決を受けて次のように声明した。
「このサプライチェーンリスク指定が違法とされた裁判所の判決を歓迎する。引き続き、すべてのアメリカ国民がこの技術から恩恵を受けられるよう、AIを国家安全保障に活用するために政府と生産的に協力することに注力していく。」
AI企業と政府機関の関係が緊張しているのはAnthropicだけではない。OpenAI、Google、Metaといった主要AI各社も軍・政府との契約をめぐって対立と協調を繰り返しており、AIの軍事・安全保障用途における法的・政治的枠組みは現在進行形で形成されつつある。今回の判決は、「国家安全保障」という名目で政府がAI企業に対してどこまで制裁的措置を取れるかの限界を司法が明確に示したケースとして、防衛分野でのAI活用を検討する企業にとっても参照すべき事例となった。
詳細はJudge blocks Pentagon blacklist of Anthropic as supply chain riskを参照していただきたい。