8月27日、CNBCが「Nvidia is bolstering support for Chinese open AI models as it warns of White House crackdown」と題した記事を公開した。Nvidiaは中国製オープンAIモデルへの最適化を積極的に進める一方、ホワイトハウスによる規制強化のリスクをSEC提出書類に明記した。好決算を背景に攻勢をかけながら、同時に自社ビジネスへの脅威を公式文書で警告するという、一見矛盾した行動の背景には、AI開発者エコシステムをめぐる米中の覇権争いがある。
NvidiaがDeepSeek・Qwen向け最適化を強化
Nvidiaは8月27日、「ローカルAIイニシアティブ」として、複数のオープンモデルへのハードウェア最適化を発表した。対象にはDeepSeekのV4 FlashとAlibabaのQwen 3.8が含まれており、GoogleおよびNvidia自身が開発したモデルも並んでいる。
具体的な取り組みとして、NvidiaはRTX GPUシステムでのQwen3.8-27Bへの「デイゼロサポート」(リリース当日から動作保証すること)を発表。さらに、DGX Spark(Nvidiaが提供するAIワークステーション製品)複数台をクラスタリングしやすくするソフトウェアアップデートを実施し、Z.aiのGLM 5.2(中国・清華大学発のLLMシリーズ)やDeepSeek V4 Flashといった中国モデルのローカル実行を容易にしている。
なぜNvidiaは中国モデルを支援するのか
こうした動きの背景には、開発者エコシステムをめぐる競争がある。HuaweiのAscendシリーズやAlibabaも、DeepSeekやQwenシリーズ向けの独自最適化を進めており、Nvidiaとしては中国製ハードウェアに開発者を取られる前に手を打つ必要がある。
Nvidiaの匿名社員はCNBCに対し、その論理をこう説明した。
「世界中のモデルをサポートすることで、開発者はアメリカのテックスタックの上に構築できる。人気のある米中モデルを使う開発者は、モデルが最適化されたスタックを選ぶ。だからこそ、アメリカのスタックへの最適化が不可欠だ」
要するに、モデルの出所を問わず、インフラレイヤーとしての地位を確保するという戦略だ。Forrester VP・主席アナリストのCharlie Daiはこう分析する。「DeepSeekやQwenのプラットフォームを最適化することで、Nvidiaはモデルの出所に関わらず、AIインフラの最優先レイヤーとしての地位を固めている」
一方で、SEC提出書類には規制リスクの警告
こうした攻勢と並行して、Nvidiaは規制リスクも正式に認めている。好決算(第2四半期の売上が予想を上回り、ガイダンスも市場予測を超えた)を報告した同タイミングのSEC提出書類で、規制リスクを明記したのだ。
米国政府が検討しているとされる制限は、Nvidiaが「DeepSeek、Qwen、Kimiなどのモデルをベースに構築されたサードパーティアプリ・モデル」を支援する能力を制限するものだ。Nvidiaはこれを「ビジネスに重大な影響を与えうるリスク」として記載している。
オープンAIモデル(ダウンロード・改変・自己ホストが可能なモデル)の規制は、米中のAI覇権争いにおける新たな戦線になっている。ホワイトハウスは半導体への新関税も検討中とされるが、ホワイトハウス当局者はCNBCに対し「正式発表なき報道は根拠のない憶測と見なすべき」と述べた。支援を強化すれば規制リスクが高まり、手を引けばエコシステムの主導権を失う。Nvidiaが置かれたジレンマの構図は明確だ。
開発途上国を巡る地政学的な懸念
この問題は単なるビジネス競争にとどまらない。シンクタンクCNAS(新アメリカ安全保障センター)の上級研究員Daniel Remlerはこう述べている。
「中国のAI技術が開発途上国のデフォルトになれば、それらの国々は政治的に北京に近づく可能性が高まる。中国AI企業はそれらの市場に橋頭堡を得ることになる」
Nvidiaの匿名社員も同様の視点から、「中国は世界最大規模の開発者人口を持つ国のひとつであり、すべてのモデルがアメリカのテックスタックで最もよく動くようにすることが、世界各国にアメリカを選ばせることにつながる」と主張している。技術スタックの選択が、そのまま地政学的な影響圏の形成につながるという認識が、Nvidiaの行動原理の根底にある。
Microsoft・Metaらとの連携
Nvidiaはこの問題で単独行動しているわけではない。MicrosoftやMeta、Palantirを含む20社以上が7月、オープンウェイトモデル(モデルの重みが公開されているオープンソース型AI)への「時期尚早な規制」を避けるよう求める共同声明を発表している。業界全体として規制の方向性をけん制しながら、各社が独自のエコシステム戦略を展開するという構図だ。
詳細はNvidia is bolstering support for Chinese open AI models as it warns of White House crackdownを参照していただきたい。