8月26日、gHacksが「Apple Announces M6 Mac mini and M5 Ultra Mac Studio Aimed at Local AI Workloads and Mac Clustering」と題した記事を公開した。Appleがローカルアシスタントとクラスタリング向けに設計した新チップ「M6」搭載Mac miniおよび「M5 Ultra」搭載Mac Studioを発表したことを詳しく伝えている。
最大の注目点:複数のMacをつなぎ、大規模モデルをローカル実行する「Macクラスタリング」
エンジニアにとって最も刺さるのが、Thunderbolt 5経由のRDMAを使ったMacクラスタリングの公式サポートだ。
AppleはmacOS 26.2をリリースし(※macOSのバージョニングは26系に移行しており、これはiOSと番号を統一した2026年以降の命名規則に基づく)、Thunderbolt 5ホスト間の低レイテンシ通信と、MLX(AppleシリコンのUnified Memoryを活用したApple製の機械学習フレームワーク)を使った分散推論をサポートした。それ以降、ホビイストや開発者がMac miniやMac Studioをデイジーチェーン接続し、1台では載りきらない巨大モデルをローカルで動かす構成が広まっていた。
今回、Mac Studioでこのクラスタリングが公式にサポートされた。4台のStudioをクラスタ構成にした場合、単体比で最大3倍の推論スループットが得られるとAppleは主張している。また、MLXに加え、新たに「Core AI」フレームワークも追加された。
背景にある経済合理性は明快だ。クラウドベースのコーディングエージェントの利用コストが上昇する一方、QwenやDeepSeekのようなオープンウェイトモデルがローカルで同等の作業を担えるようになりつつある。ただし、一般的なコンシューマー向けMac単体では、高度なAPIを完全に置き換えられる規模のモデルはまだ動かせない。そこでMacを複数台連結するアプローチが注目されていた。
AppleはMac Studioをオンデバイスで動くAIのトップデスクトップ、Mac miniを常時稼働するエージェント実行マシンと位置づけている。
M6とM5 Ultraのチップ概要
M6はTSMCの2nmプロセスを採用した初のAppleチップだ。CPUは12コア構成で、スーパーコア×2、パフォーマンスコア×4、エフィシェンシーコア×6の3種すべてを1チップに統合した初めての設計となる。Appleはシングルスレッド性能が「世界最速」、M5比でマルチスレッドスループット1.2倍、M4比でCPU性能40%向上と主張している。GPU面ではM5比でAI向けピーク演算量が約30%増、メモリ帯域は170GB/s、ストレージは15GB/sと前世代比で2倍になった。
M5 Ultraは、2つのM5 MaxダイをUltraFusion接続で1パッケージに収めたクアッドダイ設計で、Appleとして初の試みだ。ダイ間帯域は4.4TB/s超で、前世代比で接続密度が6倍以上に向上している。4つのダイは単一プロセッサとして動作し、最大36 CPUコア(スーパーコア12+パフォーマンスコア24)、80 GPUコア、32コアNeural Engineを備える。ユニファイドメモリは最大512GB(帯域1.2TB/s)に対応し、M3 Ultra比でAI向けピークGPU演算量4.5倍とされている。
なお、M5 UltraはM6ではなくM5ベース(3nmプロセス)だ。UltraチップはMaxダイを2つ組み合わせる構造上、対応するMaxより1世代遅れて登場するのが常となっており、M6 MaxをベースにしたM6 Ultraは将来登場する見込みだが、今回はM5 Maxダイを流用した先行投入という位置づけになる。また、AppleはM6 ProやM6 Maxを出さず、次はM7(2027年中頃予定)に直接移行するとしている。
価格と値上げの実態
価格は以下のとおり。
| モデル | 価格 |
|---|---|
| M6 Mac mini(ベース) | $899 |
| M5 Pro Mac mini | $1,699 |
| Mac Studio(M5 Max) | $2,499 |
| Mac Studio(M5 Ultra) | $5,499 |
注目すべきは、M5 Pro搭載のMac miniが$1,699というラインナップに加わった点だ。Mac miniとMac Studioの間を埋めるモデルとして突如加わった印象があり、上位志向のユーザーへの選択肢が一段階広がった格好になっている。
M6 miniはM4 mini比で$100高い。問題は、その比較対象の価格自体が既に変わっている点だ。M4 miniは2024年10月に$599で発売されたが、2025年5月にその価格帯が廃止され$799に引き上げられ、さらに6月末には全体的に15〜20%値上がりした。最安のAppleデスクトップは2ヶ月前と比べて50%高い。メモリ増設コストも厳しく、8GB追加で$200かかる。
背景にあるのはDRAM価格の高騰だ。2026年Q1に前四半期比約90%、Q2にも50%超上昇した。HBM向けのウェハ供給がAI需要に食われ、一般向けDRAMに回る量が減っているためで、IDCは「ウェハ容量の構造的な再配置」と呼んでいる。Microsoft、Asus、MSI、Nintendo、Sony、Valveも同様の理由でハードウェア価格を引き上げており、Apple固有の問題ではない。
512GBメモリ構成は10月下旬出荷とされており、発売直後には購入できない点に注意が必要だ。
Tim Cookの最後の製品
Tim Cookは8月31日にCEOを退任し、ハードウェア担当のジョン・ターナスが後任となる。今回のMacはCookの最後の製品リリースに当たる。M6 Mac miniとM5 Ultra Mac Studioは、Cookが長年推進してきたAppleシリコン戦略の集大成とも言える製品であり、その締めくくりとして象徴的な位置づけを持つ。9月のiPhoneイベントはターナスが初めてCEOとして臨む場となり、Appleの初折りたたみデバイスやタッチスクリーン搭載MacBookが発表されるとみられている。
M6 Mac miniおよびM5 Ultra Mac Studioの大半のモデルは9月22日に出荷開始、現在予約受付中だ。
詳細はApple Announces M6 Mac mini and M5 Ultra Mac Studio Aimed at Local AI Workloads and Mac Clusteringを参照していただきたい。