8月26日、Euronewsが「Ox Alpha: A powerful, mysterious AI model no one will admit to making」と題した記事を公開した。開発元が一切不明のまま登場した強力なAIモデル「Ox Alpha」をめぐる混乱と、その背後に透ける中国のAI戦略について詳しく紹介されている。
「誰も作ったと言わない」AIモデルが出現
8月20日、「Ox Alpha」というAIモデルがOpenRouterに突如登場した。開発元は匿名の独自ステルスモデルとして登録されており、現時点でも誰が作ったのかは公式には不明だ。
OpenRouterはさまざまなAIモデルをAPIで束ねて提供するプラットフォームであり、開発元不明のモデルが掲載されること自体は珍しい。しかし今回のOx Alphaは、その性能の高さからテック界隈で急速に注目を集めた。
なお、公開時点では無料プレビューが提供されていたが、この期間はすでに終了している可能性がある(元記事執筆時点の情報であり、現在の提供状況は要確認)。オープンソースではない。
性能はOpenAI・Anthropicと肩を並べる水準
コーディングベンチマーク「**DeepSWE」の結果によると、Ox AlphaはOpenAIやAnthropicの主力モデルと同等か、それ以上**の性能を示している。「超える」と断言できるほどの差ではなく、トップクラスと肩を並べる水準という表現が実態に近い。
具体的なスペックは以下の通りだ。
- コンテキストウィンドウ:100万トークン超(画像・テキスト・動画のマルチモーダル入力に対応)
- 最大出力:131,072トークン(1レスポンスで長大なコードやスクリプトを一気に生成できる)
- 設計用途:複雑なプログラミング、本番規模のデータ処理、長期的なエージェントワークフロー
131,072トークンという出力上限は、GPT-4oの最大出力(16,384トークン)の約8倍に相当する規模だ。長大なコードベースの一括生成や、複数ステップにわたる自律的なタスク処理(いわゆる「AIエージェント」用途)を想定した設計だといえる。
プロンプトは「プロバイダーによって保持されるが、トレーニングには使用されない」とウェブサイトに記載されているが、この点は第三者による検証がされていない。
開発元として疑われるのは中国のZhipu AI
開発元について、テック界隈では中国のZhipu AIが未公開の「GLM-5.xシリーズ」ではないかとの憶測が出ている。ただしこれは確認されていない。
Zhipu AIはGLMシリーズで知られる中国のAIスタートアップだ(元記事における位置づけに基づく表現であり、詳細な組織分類は公式情報を参照されたい)。今回の件に限らず、中国企業が開発元を明かさずにモデルをリリースするケースは過去にも存在する。AlibabaやByteDanceが、リリース直後には自社モデルとして公表しなかった事例がある。
その背景として記事は以下を指摘している。
- 国際的な輸出規制の審査を回避するため
- 規制当局からの即座の反発を避けるため
- 特定の企業に責任を紐付けずに、高性能モデルを実地テストするため
米中AI競争の非対称性
Ox Alphaの出現が改めて浮き彫りにするのは、米中のAI開発体制の非対称性だ。
中国はAIを国家戦略上の優先事項として位置づけており、企業はコスト削減・迅速な展開・方針転換を機動的に行える環境にある。一方、米国のAI企業は高コストな独自モデルの維持に加え、輸出規制やチップ禁輸措置の頻繁な変更によって展開が遅延・段階的になりやすいと記事は指摘する。
「誰が作ったかわからないが、トップクラスの性能を持つ」モデルが無料で公開される——この状況は、従来の競争構図では想定しにくいものだ。
詳細はOx Alpha: A powerful, mysterious AI model no one will admit to makingを参照していただきたい。