8月24日、The Next Webが「Twitch rewrote its licence terms the day it revealed AI training」と題した記事を公開した。この記事では、TwitchがAI学習の開示と同日に利用規約を書き換えていたことを根拠に、配信者がTwitchとAmazonを訴えたクラスアクション訴訟について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
規約書き換えのタイミングが訴訟の核心
2026年8月20日、コネチカット州在住のTwitch配信者Warren PandisciaがTwitchとAmazonを相手取り、北カリフォルニア地区連邦裁判所(サンフランシスコ部)に訴状を提出した(事件番号:3:26-cv-08721)。訴状は37ページに及ぶ。
この訴訟で最も注目を集めるのが、規約改定のタイミングだ。
TwitchはAIトレーニングへのオプトアウト設定を8月12日に発表した。訴状によれば、同じ8月12日に、クリエイターのコンテンツに関するライセンス条項(第8条(a)(i))も書き換えられている。
旧条項では、TwitchのライセンスはTwitchサービスの収益化("monetizing the Twitch Services")に紐づいていた。それが改定後は「TwitchおよびまたはそのアフィリエイトのBusiness("Twitch and/or its affiliates' business")」に変更された。アフィリエイトとはAmazonのことだ。
訴状はこの改定そのものを「以前の条項が被告らが行使した権利を付与していなかった証拠である」と主張する。つまり、わざわざ書き換えたということは、旧条項ではAIトレーニングが許されていなかったことを自白しているに等しい、という論法だ。
削除してもトレーニングデータは消えない?
旧条項の第8条(a)には、クリエイターがコンテンツを削除した場合、ライセンスも終了すると明記されていた。AIトレーニングは、削除後も存続する用途として列挙されていない。
加えて、訴状はTwitch自身のルールの矛盾も突く。第7条はデータマイニングやボットを禁止し、第10条はクローラーや自動スクレイピングによるアクセスを禁じている。これらの条項はAIトレーニングのためのデータ収集とも矛盾しうると訴状は指摘する。
プライバシーポリシー(2026年1月15日最終更新版)にも、AIトレーニングへの言及はなかった。8月12日に追加された文言では初めて、「機械学習および人工知能を含む技術のテストと改善」および「生成AIモデルとサービスの開発または展開のためのデータ利用」が明記された。
CPOの発言が訴状に引用される
訴状はTwitchのチーフプロダクトオフィサー(CPO)Mike Mintonの発言を2回引用している。
Mintonは8月12日のライブセッションで、全ユーザーをデフォルトでオプトインにした理由をこう説明した。
「オプトインにしたら、誰もオプトインしない。それが正直な答えです」
また、自分のコンテンツがすでにトレーニングに使われたかどうかという質問に対し、こう答えた。
「その質問の答えは実際わかりません。Amazonがモデルトレーニングについて何をしたか、何を使って何を使っていないか、知らないのです」
さらに訴状は2024年にさかのぼる。当時チーフマネタイゼーションオフィサーだったMintonは、The Informationのイベントで「AmazonはTwitchをAIモデルのトレーニングに使っているか」と問われ、「Yeah, for sure」と答えていた。ただし「プロトタイピングレベルであり、プロダクションスケールではない」と付け加えた。
オプトアウト設定の問題点
オプトアウト設定にも問題が指摘されている。設定はチャンネル単位であり、人物単位ではない。Twitchのヘルプページには「他の人のストリームでチャットした場合、そのチャットがトレーニングに使われるかどうかはチャンネルオーナーのオプトアウト設定に従う」と記されている。
告知はメールもポップアップもなく、ライターZach Busseyが設定の存在を発見した。また、オプトアウトに切り替えた後に設定が有効(オプトイン)に戻ったとの報告も複数ある。
請求の内容とクラス規模
Pandisciaはおよそ10年にわたってTwitchで配信を続け、900人超のフォロワーを持ち、1,000時間以上のコンテンツを投稿してきた。機材・小道具・サブスクリプションに数万ドルを費やしたとされる。
訴状が定義するクラスは「同意なくAmazonのAI製品のトレーニングにコンテンツを使用されたすべてのTwitch配信者」。開始日も地理的制限も設けられていない。「おそらく数百万人規模」とされ、争訟額は500万ドル超(連邦管轄のクラスアクション公正法の閾値)とされている。
請求内容は、クラス認定、差止命令、損害賠償、不当利益の返還、そして「違法に取得されたコンテンツ・データの特定・隔離・削除」の命令だ。著作権侵害の主張は含まれていない。理由は、Twitchの配信・動画が米国著作権局に登録されていないためだという。
業界の文脈
デフォルトオプトインによるデータ収集をめぐる法的・社会的摩擦は続いている。HubSpotは7月に顧客データAI機能を4日間の反発を受けて撤回し、Cursorは先週、データ利用条件を公開しないままコードプラットフォームをリリースした。
また、Googleの収益化モデルとの比較として、訴状はGoogleがRedditの投稿をAIトレーニングに使う対価として年6,000万ドルを支払ったこと、Redditのデータライセンス収益が2億ドルを超えることを引き合いに出している。Twitchの月間アクティブユーザーは2026年時点で2億4,000万人超、毎月320万〜690万人のクリエイターが配信しているとされる。
現時点でTwitchとAmazonはコメントを出しておらず、裁判所の記録には担当判事もまだ割り当てられていない。
詳細はTwitch rewrote its licence terms the day it revealed AI trainingを参照していただきたい。