8月25日、Runtime Wireが「Cognition's Devin Outposts moves code execution onto customer-controlled infrastructure」と題した記事を公開した。この記事では、AIコーディングエージェント「Devin」がコード実行環境を顧客管理インフラ側へ切り出す新アーキテクチャ「Devin Outposts」について詳しく紹介されている。
推論はCognitionのクラウド、実行は顧客側へ
Devin Outpostsの核心は、「考える層」と「動かす層」の分離だ。
Cognitionの公式ドキュメントによれば、Devinはクラウド上の「ブレイン」がdevbox(コードを読み、コマンドを実行し、テストを走らせる隔離環境)を制御する構造を持つ。推論レイヤーは常にCognitionのクラウドで動くが、devboxはCognitionのデフォルト環境に限らず、顧客のプライベートインフラに接続された専用環境へ移動できる。
2026年7月21日にアルファ公開された「Devin Outposts on Modal」は、このdevboxをCognitionのデフォルト環境からさらに引き離す。Devin Cloudのセッションとキューでつながった顧客側のアウトポストを、Modalのオープンソース統合ツールmodal-devinが監視し、各セッションを隔離されたModal Sandbox内で起動する仕組みだ。
この構成が意味を持つのは、Cognitionの標準サンドボックスでは提供できないインフラが必要な場面だ。Modalの例では、DevinがGPU搭載マシン上でモデルの最適な推論設定を探す作業を依頼されたとき、デフォルト環境ではGPUが存在しないためタスクが失敗する。OutpostsならGPUサンドボックスをオンデマンドで作成し、セッション終了後はゼロにスケールバックできる。
エンジニアが気にするポイント:セッション状態の保持
実務上で面白いのはスナップショット機能だ。Modalによれば、セッションをサスペンドするとファイルやインストール済みツールの状態がスナップショットとして保存され、再開時にリポジトリの再クローンや依存関係の再インストールが不要になる。
加えて、チームごとに独立したアウトポスト・デプロイメント・認証情報を持てる。別チームのシークレットやセッションにはアクセスできない設計だ。カスタムイメージ、プライベートネットワーク、ファイルシステムスナップショットにも対応し、Devinを起動した時点でリポジトリ・依存関係・内部レジストリ・ツールが揃った状態にできる。
「マルチVMクラウドエージェント」というラベル
Nader DabitはCognitionのデベロッパーエデュケーターであり、AWSでフロントエンド・モバイルのデベロッパーリレーションズを率いた経歴を持つ。Dabitはコーディングエージェントが「マルチVMクラウドエージェント」へ進化しつつあると主張する。Linux、Windows、macOS、Amazon EC2、外部サーバー、クラウドサンドボックスを共通の制御レイヤーで操作できる推論システム、という定義だ。
ただしDabit自身も認めるように、このラベルは厳密な技術用語ではない。対象となる環境はコンテナの場合も、フルVMの場合も、物理マシンの場合もある。共通の抽象化は「エージェント配下でターミナルアクセス可能な計算資源」というレベルにとどまる。
競合が揃うサンドボックス市場
実行環境の市場はすでに混み合っている。E2BはFirecracker製マイクロVMによるホスト型・BYOC・オンプレミスの3形態を提供し、DaytonaはLinuxコンテナ・Linux VM・Windows VM・GPUサンドボックスを揃える。Vercelは2026年1月30日にFirecracker製マイクロVMを使ったSandboxを一般公開した。
Outpostsのアーキテクチャが示すビジネス上のポジションは、これらの実行層プロダクトの「上」にある。エージェントプラットフォームがルーティング・認証情報・セッション状態・オーケストレーションを握れば、配下のマシンは「選択可能なリソース」になる。CognitionはDevinをコーディングエージェントから「ソフトウェア作業をどのマシンに割り当てるかを決める層」へと拡張できる。Modalは推論レイヤーを持たずに、エージェントの実行ターゲットとして分配を得られる。
資金面では、Modalは4億6,600万ドル以上を調達(2025年9月のシリーズBで8,700万ドルを調達し、ポストマネー評価額は11億ドル)。Cognitionは260億ドルの評価額で10億ドル超を調達し、2026年初頭からのエンタープライズ利用は10倍超の成長を報告している。
実行範囲と正確さは別の問題
記事の末尾でRuntime Wireが指摘する点は重要だ。Cognitionの2025年パフォーマンスレビュー自身が、Devinは要件が明確な場合に最もよく機能し、結果の検証が難しい場面では引き続き人間のレビューが必要だと認めている。動かせるマシンが増えることは、扱えるタスクの種類が増えることを意味するが、同時に管理すべきシステム・認証情報・コストが増えることでもある。
詳細はCognition's Devin Outposts moves code execution onto customer-controlled infrastructureを参照していただきたい。