8月24日、Help Net Securityが「Cybersecurity job ads demanding AI skills double in a year」と題した記事を公開した。この記事では、G7諸国のサイバーセキュリティ求人においてAIスキルを要求する割合が1年間で倍増したという調査結果について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
AIスキル要件が1年で14.2%→28.5%に
Cisco創設のAI Workforce Consortiumが発表した調査によると、2025年10月〜2026年3月のサイバーセキュリティ求人のうち**28.5%がAIスキルを要件として掲げており、1年前(2024年10月〜2025年3月)の14.2%**から倍増した。データは採用企業Cornerstone・Indeedが24ヶ月分(2024年4月〜2026年3月)のG7市場を対象に分析したものだ。
求人で繰り返し登場するスキルセットは5つ——Python、プロンプト&コンテキストエンジニアリング、AIセキュリティ、エージェントオーケストレーション、機械学習オペレーション(MLOps)——であり、これらが「エージェント型スキルスタック(agentic skill stack)」として定着しつつある。対象となる職種はセキュリティエンジニアリング、クラウドセキュリティ、検知・対応エンジニアリングといった採用ボリュームの大きいポジションだ。
給与面でも差は明確で、米国のLightcastデータ(同期間)によれば、AIスキルを要件とする求人の給与中央値は、サイバーセキュリティ求人全体の中央値より14.9%高い。

(出典: Cisco)
「同じ肩書き、違う仕事」——SOCアナリストが最も変化
G7のサイバーセキュリティ求人で最も多い職種はSecurity Engineer(全体の18%)、Cybersecurity Engineer/Analyst(16%)、SOC Analyst(12%)、Cloud Security Engineer(9%)の順だ。
なかでも変化が急速なのがSOCアナリストの職務内容だ。アラートのトリアージ、脅威インテリジェンスフィードの相関分析、標準的なデシジョンツリーワークフローの実行といった反復作業をAIが吸収しつつある。CiscoのDistinguished EngineerであるOmar Santosは、SOCアナリストは「アラートの処理者」から「オーケストレーター」へと役割が変わっていると述べている。
レポートは「AIエージェントは一部の領域で人間レベルの性能に近づき、別の領域では超えている」としつつも、人間のドメイン知識は不可欠と位置づけている。パケットキャプチャの読み方を知らなければ、機械の判断を検証できない——という例が端的だ。これに加えて求められる新スキルが、エージェントの監督、出力の検証、自動化が弾き出した例外処理だ。
求人票の変化は職種だけでなくスキル項目にも表れている。倫理的推論(ethical reasoning)を求める求人が前年比533%増、ステークホルダーエンゲージメントが125%増と、技術外のコンピテンシーへの要求も急伸している。
また、「AIフォレンジクスエキスパート」という職種が台頭している。AIシステムが障害を起こしたり損害を与えた際に、ディスクイメージではなく学習データやプロンプト履歴を対象に調査する役割だ。「digital forensics analyst」の求人は調査期間中453%増と追跡した職種の中で最も伸びが大きかった。ただし絶対数はまだ少ない。
エントリーレベルの求人が先細り、経験のパラドックス
市場全体のサイバーセキュリティ求人は2026年3月末の6ヶ月で9.5%増(前の6ヶ月は6.8%増)と伸びているが、その恩恵はシニア層に偏っている。
- シニア職(Senior-titled):前期46.1%増 → 当期65.0%増
- ジュニア職(Junior-titled):前期0.6%減 → 当期5.9%増
シニア職は全G7求人の約6.7%、ジュニア職は0.7%とシェア自体は小さいが、成長率の格差は拡大している。
さらに問題なのが採用側の要求水準だ。Ciscoが30市場・14業界のセキュリティリーダー8,000人を対象に実施した調査(2026年5月)では、エントリーレベル候補者に不足していると感じるコンピテンシーとして以下が挙がった:
- AIエージェントの実務経験:49%
- 技術的なサイバーセキュリティの深度:48%
- 対人・コミュニケーションスキル:45%
レポートはこれを「経験のパラドックス(experience paradox)」と表現している——エントリーレベルの求人にもシニアレベルのスキルを求める構造が生まれている、という指摘だ。
2030年までのエントリーレベル人材に最も重要なスキルとして、セキュリティリーダーの半数以上が「自律型AIシステムのセキュリティ確保」を挙げ、半数が「強固な技術基盤と継続学習力」を挙げた。
詳細はCybersecurity job ads demanding AI skills double in a yearを参照していただきたい。