8月25日、Dataconomyが「Anthropic launches Claude Security with Mythos 5 for vulnerability scanning」と題した記事を公開した。AnthropicがClaude Mythos 5モデルを組み込んだ脆弱性スキャンサービス「Claude Security」をエンタープライズ向けに正式提供開始したことを伝えている。
Claude SecurityにMythos 5が統合、エンタープライズ向けに公開ベータ開始
2026年8月21日より、AnthropicはClaude SecurityのスキャンエンジンにClaude Mythos 5モデルを統合した。Mythos 5はAnthropicのモデルラインナップの中でも最上位クラスに位置するモデルであり、これまではProject Glasswing——防衛・セキュリティ領域の機密性の高い用途向けに設けられたアクセス制限プログラム——を通過した組織のみが利用できる状態に置かれていた。それが今回、Claude Enterpriseの契約を持つ組織であれば**claude.ai/security**から追加のモデルアドオンなしで利用できるようになった。Mythos 5クラスのモデルが一般的なエンタープライズ契約の範囲で広く提供されるのは、これが初めてのことだ。
料金体系については、スキャンは既存エンタープライズプランの標準トークン使用量として課金される仕組みだ。タイトルに「追加料金なし」と表現されることもあるが、正確にはスキャン専用の追加料金が不要という意味であり、トークン消費は通常どおり発生する点には留意が必要だ。また利用条件は明確で、Claude Enterprise契約を持ち、かつコードをGitHubで管理している組織に限定される。スタートアップや中小規模チームが利用する下位プランは対象外である。
単なるパターンマッチングとは異なるスキャンの仕組み
エンジニアにとって気になるのは、実際のスキャンがどう動くかだ。
Claude Mythos 5はGitHubリポジトリに接続し、コードを解析する際にデータフローを追跡しながらGitの履歴も参照する。SAST(静的アプリケーションセキュリティテスト)の領域では従来、パターンマッチングや構文ルールベースのツールが主流であり、文脈を考慮しない検出によって偽陽性が多発することが長年の課題とされてきた。Claude Securityはコードの意味的な文脈をモデルが理解した上でスキャンを行う点で、こうした従来型ツールとは設計思想が異なる。
さらに特徴的なのが自己検証ステップだ。各検出結果に対してモデル自身が「本当に脆弱性か」を再評価することで、偽陽性(false positive)を減らす設計になっている。誤検知の多さはセキュリティスキャンツールの実用上の最大の障壁のひとつであり、この仕組みは実務上の負担を下げる上で重要な意味を持つ。
出力結果には以下の情報が含まれる:
- **CWE**(Common Weakness Enumeration:共通脆弱性タイプ一覧)によるカテゴリ分類
- 信頼度スコアと深刻度評価
- 修正パッチの提案
- SlackやJira連携、CSV・Markdown形式でのエクスポート
なお、パッチの適用はClaude Codeを通じて別途行う設計になっている。Mythos 5は脆弱性の特定にとどまり、ユーザーはインタラクティブなプロンプト操作ではなく固定された出力を受け取る形式だ。これにより、モデルがエクスプロイト(攻撃コード)生成に誘導されるリスクを構造的に排除している。スキャン機能とコード操作機能を意図的に分離したこの設計は、エンタープライズセキュリティ用途における安全性の担保という観点から重要な判断といえる。
対象とされるユースケースと業界
Anthropicが想定する利用シーンは以下の4つだ:
- リリース前のコード監査
- レガシーコードのレビュー
- 定期的なリグレッションスキャン
- 既存の脆弱性バックログの管理
対象業界としては、ヘルスケア・金融システム・公共インフラ(utilities)・ソフトウェアサプライチェーンが挙げられている。いずれも規制要件や社会的影響の大きさからコードの脆弱性管理の優先度が高い領域であり、Anthropicがエンタープライズセキュリティ市場への本格参入を意識した選定だといえる。
$3,500万ドルのDefender Advantage Fundと今後の展開
Claude Securityの提供開始と合わせて、AnthropicはDefender Advantage Fundの設立も発表した。これはオープンソースソフトウェアのセキュリティ強化に取り組む組織を対象とした支援プログラムであり、3,500万ドル相当のClaude creditsを提供するものだ。商業製品の提供にとどまらず、OSS基盤のセキュリティ底上げに直接資源を投じるという姿勢は、Anthropicが単なるツールベンダーではなくセキュリティエコシステム全体への貢献を打ち出していることを示している。
また、Cyber Verification Program——デュアルユース機能(防衛・攻撃の両面で使いうる機能)へのアクセスを審査する認証プログラム——の拡張も計画されており、OpusおよびSonnetモデルでの機能強化と、Mythosクラスの機能へのアクセス拡大が続く見込みだ。
今回の展開で押さえておくべきポイントは3点だ。Mythos 5クラスのモデルが初めてエンタープライズ向けに広く提供されたこと、スキャンが既存プランのトークン消費に統合されており専用の追加課金が不要であること、そして出力が固定形式であることでモデルの悪用リスクを構造的に制限していることだ。AIによるコードセキュリティツールは競合も増えつつある領域だが、AnthropicがMythos 5という最上位モデルをこの用途に投入し、かつ安全設計と商業展開を同時に示した点は、今後の業界動向を読む上でも注目に値する。
詳細はAnthropic launches Claude Security with Mythos 5 for vulnerability scanningを参照していただきたい。