8月24日、The Newsが「UK graduate job vacancies plunge to lowest in a decade amid AI shift」と題した記事を公開した。10年前には5万5,000件以上あった英国の新卒求人が、今や8,383件——その落差は、単なる景気変動では説明しきれない構造的な変化を示唆している。
新卒求人が前年比45%減——2016年以来最低の水準
採用プラットフォーム「Adzuna」のデータによると、英国全土で求人広告が掲載された新卒向け求人数はわずか8,383件にとどまり、前年同期比で45%減という大幅な落ち込みを記録した。これは同社が追跡を開始した2016年以来、最低の数字である。
比較として、2017年には5万5,000件以上の新卒ポジションが存在していたことを踏まえると、約10年で求人数がいかに急激に萎縮したかがわかる。
同社共同創業者のAndrew Hunter氏は次のようにコメントしている。
「7月の数字は一時的な落ち込みではなく、後退だ。年間求人減少率は1月以来初めて悪化し、求人1件あたりの求職者数も1年前より増えている。新卒求人市場は記録的な低水準を更新し続けており、企業がその層の採用を再開する理由をまだ見いだしていないことを示している。」
採用抑制の二つの要因:コスト増とAI投資
採用が冷え込んでいる背景には、主に二つの要因が挙げられている。
一つ目は雇用コストの上昇だ。財務相Rachel Reevesが直近2度の予算案で発表した国民保険(NI)拠出金の増額と最低賃金の引き上げが、企業の人件費負担を押し上げている。
二つ目は自動化・AI投資へのシフトだ。コスト増に直面した企業が新規採用よりも自動化ツールやAIへの投資を優先するようになっており、これまでジュニアスタッフが担っていた業務を代替する動きが加速している。エントリーレベルの職種がAIに侵食されつつあるという構図は、英国固有の問題ではなく、グローバルな採用市場でも同様の傾向が観察されている。
記録的な大学進学者数と求人不足の乖離
皮肉なことに、今年9月に大学進学を予定している学生数は26万2,820人と過去最多を記録している。入学者数が増え続ける一方で、卒業後に待ち受ける雇用環境は悪化の一途をたどっており、需給のミスマッチが拡大している。
この状況は英国の若年層雇用危機とも連動している。現在、英国では**100万人以上の若者がNEET**(Not in Education, Employment, or Training——教育・雇用・職業訓練のいずれにも参加していない状態)に分類されており、新卒市場の低迷はその数字をさらに押し上げるリスクをはらんでいる。
エンジニア職も無縁ではない
※編集部の考察
ソフトウェアエンジニアリングや技術系職種においても、GitHub CopilotやCursorといったAIコーディング補助ツールの普及がジュニアエンジニアの採用ニーズを下押しする方向に働いているという議論は以前から存在する。今回の英国のデータはその傾向を裏付ける一つの具体的な数値として受け止めることができる。
新卒・若手エンジニアがキャリアをどう形成していくかという問いは、AIツールが実務に浸透するにつれて、より切実なものになりつつある。
詳細はUK graduate job vacancies plunge to lowest in a decade amid AI shiftを参照していただきたい。