8月24日、Simon Willison氏が「Anthropic's best AI model struggles to attract users as cheaper tools thrive」と題した記事を公開した。Anthropicの年間換算収益が急拡大する一方、最上位モデルがコストの高さから普及に苦しんでいる実態を、法人の実支出データをもとに詳しく分析している。
収益は急成長、しかし上位モデルは伸び悩む
Financial Timesが「事情に詳しい関係者」から収集した数字によると、Anthropicの年間換算収益(annualized revenue)は7月時点で65億ドルに達した。5月時点では47億ドルだったため、わずか2ヶ月で約38%増加したことになる。
さらにAnthropicは、Q3(第3四半期)も黒字化する見込みを投資家に伝えており、Q2黒字化の際と同じ算出モデルを使用している。年間10万ドル以上を支出する顧客数は6,000社に上るという。
競合のOpenAIも好調で、7月のGPT 5.6リリースを機に年間換算収益が四半期内で35%増加、40億ドル超に達したと報じられている。
Ramp AIインデックスが示すモデル別シェアの現実
この記事で紹介されているのが、**Ramp AIインデックス**だ。法人向けカード決済サービスのRampが、7万社以上の加盟企業の請求データをもとにAIモデルの採用状況を推計したものである。
ただし、このインデックスにはデータの性質上の限界がある点に注意が必要だ。集計対象はRampの決済ネットワークを利用している法人に限られるため、大企業との直接契約や他の決済手段を使う企業は含まれない。あくまでRamp加盟企業における支出傾向として読む必要がある。
2026年7月のAnthropicモデル別支出シェアは以下のとおりだ:
| 順位 | モデル | シェア |
|---|---|---|
| 1 | Opus 4.8 | 28.0% |
| 2 | Sonnet 4.6 | 8.3% |
| 3 | Fable 5 | 8.0% |
| 4 | Opus 4.6 | 6.9% |
| 5 | Sonnet 5 | 3.6% |
| 6 | Opus 5 | 3.5% |
| 7 | Opus 4.7 | 1.7% |
| 8 | Sonnet 4.5 | 1.3% |
| 9 | Haiku 4.5 | 1.0% |
| 10 | Opus 4.5 | 0.7% |
最上位モデルであるOpus 5の支出シェアはわずか3.5%。旧世代のOpus 4.8(28.0%)が圧倒的にシェアを維持している。
なお、表中のFable 5はAnthropicのモデルラインにおける位置付けが現時点では必ずしも広く知られていないが、元記事ではOpus 5と並ぶ上位モデルとして言及されており、Rampデータ上では**8.0%**のシェアを持つ。
Opus 5のシェアが低い理由としてまずリリースタイミングの問題が挙げられる。Opus 5のリリースは7月24日と月末直前であり、7月分の集計に反映された期間が短いため、シェアが低く出ている面はある。
一方、Fable 5(8.0%)については、リリースタイミングだけでは説明がつかない低さだ。Simon Willison氏は、このデータが「価格の高さがAnthropicの上位モデルを相対的に不人気にしているという見方を裏付ける」と述べている。つまり、Fable 5・Opus 5いずれについても、コストの高さが法人採用の壁になっているという構図が共通して浮かび上がる。
「安いモデルで十分」という市場の声
タイトルが示す「安価なツールの台頭」という構図は、このシェアデータに如実に表れている。企業の実際の支出を見ると、最高性能モデルよりもコストパフォーマンスの高い旧世代モデルが選ばれている。この傾向は、法人がAI導入においてベンチマーク上の最高性能よりも、運用コストと実用十分性のバランスを優先していることを示唆している。
Hacker Newsでもこの話題は議論を呼んでおり、元記事のリンクがスレッドに掲載されている。
IPO前哨戦としての意味
Anthropicは現在、IPO(株式公開)に向けた準備段階にあるとされている。65億ドルという年間換算収益の規模はIPO評価額の根拠として投資家向けに重要なシグナルだ。ただし、このシェアデータはあくまでRamp加盟企業における支出比率であり、Anthropicの収益65億ドルそのものの内訳を直接示すものではない点には留意が必要だ。
それでも、最上位モデルの採用が伸び悩む中で、収益成長がどのモデル帯に依存しているかは、今後のプロダクト戦略と収益構造の持続可能性を読む上で重要な論点になる。最上位モデルで稼ぐか、旧世代モデルの広範な普及で稼ぐかという戦略的選択は、IPO後の企業価値評価にも影響しうる。
詳細はAnthropic's best AI model struggles to attract users as cheaper tools thriveを参照していただきたい。