8月22日、Runtime Wireが「Khosla backs Jeff Dean's plan to automate science, starting with AI research」と題した記事を公開した。この記事では、GoogleのAI研究を長年牽引してきたJeff Deanらが設立したスタートアップ「Discovery Loop」がKhosla VenturesやAlphabetなどから大型資金調達を実施し、AI研究の自動化を皮切りに科学実験全体の自動化を目指す計画について詳しく紹介されている。
GoogleのAIレジェンド4人が集結
Jeff Dean、Sanjay Ghemawat、Quoc Le、Oriol Vinyals——この4人の名前は、Googleの技術スタックを知るエンジニアには馴染み深い。
Dean と Ghemawat は1999年にGoogleに入社し、MapReduce、BigTable、Spannerといった分散システムの礎を築いた。LeはGoogle Brainの共同創設者の一人であり、VinyalsはGoogle DeepMindでAlphaStarやGeminiの開発に携わったシニア研究者だ。4人が共に関わったシステムの一覧は、Google検索、TensorFlow、TPU、Pathways、AlphaFold、Geminiと続く。
元記事によれば、この4人はいずれもDiscovery Loopの共同創業者として名を連ねており、それぞれが創業チームのコアメンバーとして参画している。その4人が2026年8月5日、Discovery Loopとして独立した。科学実験の自動化を掲げるスタートアップだ。
タイトルに掲げた「プロダクトより先に信頼が売れた」とは、まさにこの状況を指す。リリース済みのシステムも技術ベンチマークも存在しない段階で数百億円規模の資金が集まったのは、4人の創業者がGoogleという世界最大の研究機関の中核で積み上げてきたトラックレコードへの、投資家側の全面的な賭けにほかならない。
「数億ドル規模」の資金調達
資金調達はKhosla VenturesとRadical Venturesが共同リードし、Kleiner Perkins、Lightspeed、Doerr Capitalが参加。さらにAlphabetも出資していることをTechCrunchが報じた。
調達額・バリュエーションは非公開だが、Axiosは8月6日、関係者の話として調達規模を「数億ドル(hundreds of millions)」と報じている。プロダクトも技術ベンチマークも未公開の段階で、これほどの資金が集まる背景にあるのは、4人の創業者の経歴そのものへの賭けだ。
Khosla Ventures側の対応を説明したのは、マネージングディレクターのSamir Kaul。彼自身がゲノム研究者出身で、Arabidopsisゲノムイニシアチブへの参加や、シーケンシング企業Helicos BioSciencesの共同創設、合成生物学企業Codon Devicesの初代CEOなどの経歴を持つ。科学系投資家としての実績がKhosla Venturesの意思決定を後押しした形だ。
なお、AlphabetによるDiscovery Loopへの出資については、元記事はTechCrunchの報道を引用するにとどまっており、出資の具体的な条件や戦略的意図については公式に明らかにされていない。Alphabetがコンピューティングリソースへのアクセスを確保しつつ創業チームとの関係を維持する意図がある可能性はあるが、元記事に明示的な記述はない点に注意が必要だ。※編集部の考察
まずはAI研究自体を自動化する
Discovery Loopのアプローチで最も特徴的なのは、最初のターゲットを機械学習研究に絞った点だ。
薬学や材料科学では実験にロボット・計測器・物理的なラボが必要になる。それに対しML研究の実験は「コンピュータの中で完結する」。Discovery Loopはまず、実験の提案・実行・評価をすべて計算機上で回す仕組みを構築し、数千の実験を並列で走らせ、結果から次の実験を自律的に選択するシステムを目指すとしている。
さらに、Discovery Loop自身が最初の顧客になる計画だ。Deanは、内部の高速フィードバックループを使ってインフラ・モデル・システムを構築していくと述べており、自動化研究システムが次世代の自動化研究システムを改善するという構図を描いている。
この段階的なアプローチは、競合他社との差別化ポイントでもある。同じ「科学の自動化」を掲げる企業でも、Lila Sciencesは5億5000万ドルを調達して生命科学・化学・材料分野向けの物理的な「AIサイエンスファクトリー」を構築中であり、Automataは1月に4500万ドルのシリーズCを調達して自動化ラボのロボティクス・ソフトウェアを開発している。Discovery Loopは当面、こうしたハードウェア統合の複雑さを回避できる。
残る課題
Discovery Loopの公開情報は現時点でアーキテクチャと採用計画の説明にとどまり、リリース済みのシステムも技術ベンチマークも存在しない。自動化実験が「安価だが結論の出ない試行を大量生産するだけ」にならず、再現性のある改善をもたらせるかどうかは、これから示す必要がある。
拠点はパロアルト。現在、創業チームの採用を進めている段階だ。
詳細はKhosla backs Jeff Dean's plan to automate science, starting with AI researchを参照していただきたい。