8月20日、How-To Geekが「AI is splitting Linux and nobody wants to say it out loud」と題した記事を公開した。この記事では、AIコーディングツールの扱いをめぐってLinuxの主要プロジェクトが互いに相反するポリシーを打ち出し、OSSコミュニティが静かに分裂しつつある現状について詳しく紹介されている。
AIコードの受け入れをめぐり、主要プロジェクトの立場が真っ二つに
GentooとFedora、そしてLinuxカーネルそのもの——同じLinuxエコシステムの中でも、AIツールへの対応は大きく異なる。
禁止派:Gentoo Linux
Gentoo Linuxはwikiに明文化されたAI禁止ポリシーを持つ。2024年更新のそのポリシーには次のように書かれている。
自然言語処理AIツールの支援によって作成されたコンテンツをGentooにコントリビュートすることを明示的に禁止する。著作権・倫理・品質の懸念を生じさせないツールのケースが示された場合、この決議を再検討する可能性はある。
カウンシルが禁止を決議した根拠は著作権・品質・倫理の三点だ。LLM(大規模言語モデル)がこれらすべての基準を侵害しうると判断した。
事前承認制:NetBSD
Linuxとは別系統の*BSDファミリーに属するNetBSDも、注目に値する立場をとる。コミットガイドラインでは、AIが生成またはアシストしたコードをデフォルトで「汚染されたコード(tainted code)」と見なし、コアチームの書面による事前承認なしにはコミット不可としている。
GitHub CopilotやChatGPT、Code LlamaといったLLMや類似技術によって生成されたコードは、汚染されたコードと推定され、コアによる書面での事前承認なしにコミットしてはならない。
容認の全体傾向:研究が示すデータ
HoraとRobbesによる研究(arxiv.org/abs/2605.16706)では、1,000件の一般的なOSSプロジェクトを調査した結果、「AIポリシーの78%がAIアシストによるコントリビューションを認めている」ことが判明した。なお、この調査対象はLinux関連プロジェクトに限定されない一般的なOSSプロジェクトであり、Linux固有の傾向を直接示すものではない点には留意が必要だ。それでも、OSSコミュニティ全体の大勢としては、条件付きながら「AI容認」に傾いていることが読み取れる。
Fedoraの「中間路線」——責任は人間が取れ
FedoraはGentooともNetBSDとも異なる立場をとる。カウンシルのポリシー提案のキーフレーズはこうだ。
AIアシスタントをコントリビューターのツールキットの進化として活用することを推奨する。ただし、人間によるオーバーサイト(監督)は引き続き不可欠だ。コントリビューターは常に著者であり、自らのコントリビューションに完全な責任を負う。
つまり品質管理の責任はコントリビューター個人に委ねられる。AIを使って粗雑なコードを出せば、手書きで粗雑なコードを書いた場合と同等に扱われる。
Linus Torvaldsの立場:「フォークするか、立ち去れ」
Linuxの生みの親であるLinus Torvaldsは、AIが生成した無意味なプルリクエストに苛立ちを覚えていることを公式の場で認めている。だからといってAI否定派ではない。
Ars Technicaの報道によれば、LLMの一律禁止を「的外れ」と断じ、こう述べた。
「誰かにLLMツールを使えと強制しているわけではない。だが、他の人間がそれを使うことに反対しようとする人間は、大声で無視する。」
さらに同報道によれば、Torvaldsはvibe coding(コードの詳細を理解せずにAIに任せるスタイル)に自ら取り組んでいるとも語っている。批判派が指摘するのは、LLMの問題は技術的なものではなく、倫理的・哲学的なものだという点だ——だが、Torvaldsはその議論を受け付けない姿勢を明確にしており、異議があるなら「フォークするか立ち去るか」という選択肢を提示している。
本当の問題は「誰がAIのミスを負担するか」
記事が最終的に指摘するのは、コードの品質よりも深い問題だ。AIがコードを生成し、さらにAIがそのコードをレビューするという二重の依存が始まれば、一度も人間の目に触れないコードがLinuxに入り込む。そうなれば、OSそのものが「ブラックボックス」に侵食される。
比較として挙げられるのがMicrosoftだ。2025年にCNBCが報じたところでは、MicrosoftのCEO Satya Nadellaはコードの最大30%がAIによって書かれていると述べている。記事筆者はこの事実を、Windowsを離れた理由の一つと受け止めており、Linuxコミュニティが同じ轍を踏むことへの懸念を率直に示している。
GentooとFedoraとLinuxカーネルが、同じAIという課題に対してこれほど異なる答えを出しているのは、Linuxの多様性の強みでもあり、弱みでもある。統一した品質基準を持てないエコシステムで、AI由来の負債がどこに積み上がるかは、まだ誰にもわからない。
詳細はAI is splitting Linux and nobody wants to say it out loudを参照していただきたい。