8月21日、Digital Trendsが「One-third of the web is showing signs of AI authorship, thanks to ChatGPT」と題した記事を公開した。Pew Research Centerの調査によれば、ChatGPT登場以降に公開されたウェブページの約3分の1にAI著作の痕跡が確認されており、「ネット上のコンテンツはおそらく人間が書いたものだ」という長年の暗黙の前提が、静かに、しかし急速に崩れ始めている。
ウェブの3分の1にAIの痕跡
Pew Research Centerが発表した調査によると、ChatGPTが公開された2022年11月以降に公開されたウェブページのうち、約3分の1にAI著作の痕跡が見られるという。
ただし「痕跡」という言葉には注意が必要だ。この調査は「ページ全体がAIによって書かれた」と断言するものではない。AIが何らかの形でコンテンツ制作に関与した可能性を示す指標を探したものである。Pewはこの検出にあたり、AI生成テキストに共通して現れる語彙的・文体的特徴(後述の図も参照)を統計的に分析する手法を採用しており、単純なAI検出ツールの出力をそのまま集計したわけではない点は押さえておきたい。
現実のウェブライティングは「人間が書いたか、AIが書いたか」の二択ではなく、AIによる初稿生成、文章校正、SEO向け文章の生成など、人間とAIが混在した形で制作されるケースが多い。最終的なページには、両者の貢献が混在している。

ドメイン別のAI著作割合の推移。.comページでChatGPT登場以降の増加が最大(出典: Pew Research Center)
「ウェブに書かれていることは人間が書いた」という前提が崩れつつある
この調査が示す本質的な問題は数字そのものよりも、インターネットに対する根本的な前提の変化にある。
これまで「オンラインで公開されたコンテンツはおそらく人間が書いたものだ」という暗黙の前提があった。Pewの調査は、その前提が急速に信頼性を失いつつあることを示している。
別の調査会社Graphiteの分析では、新規公開されるオンライン記事のうちAI生成のものが半数近くに達しつつあるという結果も出ている。一方で同社の別の分析によれば、Googleの検索結果やAIの引用においては依然として人間が書いた記事が優位を保っている。つまり、ウェブ上にAIコンテンツが大量に存在することと、人々が実際に目にするコンテンツの割合は別の話だ。

AI著作テキストに共通して見られる特徴(出典: Pew Research Center)
AIが学習し、AIが書き、またAIが学習する
記事が指摘する構造的な問題も興味深い。AIモデルの訓練には大量の人間制作コンテンツが必要だが、そのモデルが今度はウェブ上に公開されるコンテンツの制作を助けている。結果として、人間が機械のために書き、機械が人間のために書き、さらにその機械が別の機械の書いたものを学習するというループが生まれつつある。
この問題は「モデルの崩壊(Model Collapse)」とも呼ばれる。AIがAI生成データを繰り返し学習し続けることで、出力の多様性や品質が徐々に劣化していく現象を指す。たとえば人間が書いた文章に含まれる微妙なニュアンスや例外的な表現が訓練データから薄まっていき、モデルが生成する文章がより均質・画一的になっていくとされる。この概念はすでに複数の研究者が論文で警鐘を鳴らしており、Pewの調査はその懸念に実データで裏付けを与えるものといえる。
訓練データの汚染が進めば、次世代モデルはより「AIらしい」文章しか生成できなくなるという負のスパイラルが生じうる。これはAI技術そのものの長期的な品質にも関わる問題であり、ウェブコンテンツの現状を示す今回の調査はその入口に当たるデータとして重要な意味を持つ。
ウェブがAIコンテンツに一夜で置き換わったわけではない。しかし、Pewの調査が示すように、AIはもはやインターネットの「珍しい隅」に存在するものではなく、ウェブ全体に静かに浸透している。
詳細はOne-third of the web is showing signs of AI authorship, thanks to ChatGPTを参照していただきたい。