8月20日、Maximilian Schreinerが「Anthropic's most capable model, codenamed "Model 2," is for internal use only」と題した記事を公開した。Anthropicが外部に一切公開していない最高性能モデルを社内で実運用しているという事実は、AI開発における安全審査と商用展開のあり方を考える上で示唆に富む。そのモデルの名は「Model 2」——公開済みのどのClaudeモデルをも上回る能力を持ちながら、Anthropicの社内システムの中だけで静かに稼働している。
公開されていない最強モデル「Model 2」の存在
Anthropicが、公開済みのどのClaudeモデルをも上回る性能を持つ未公開モデルを社内で運用している。同社が2026年8月に公開したリスクレポートによって明らかになった事実だ。
このモデルは社内で「Model 2」と呼ばれており、モデルファミリーの分類上は「Mythosクラス」に属する。Mythosクラスとは、Anthropicが内部で使用するトップティアモデル群のカテゴリ名だ。Claudeのモデル体系は世代ごとに命名規則が変化しており、かつては「Claude 2」「Claude 3 Opus」といった名称が使われていたが、現在はMythosという世代名のもとで複数のバリアントが管理されている。Opusは以前の世代における最上位グレードの呼称であり、MythosはそのOpus世代から能力面で大きくジャンプした次世代ファミリーに相当する。
レポートによれば、Model 2は全体的な性能で現在公開されているClaude Mythos 5をわずかに上回るが、一部の領域ではMythos 5に劣る部分もあるという。OpusからMythosへの世代交代のような大きな能力ジャンプではなく、あくまで漸進的な改善にとどまる。
Anthropicが社内で使用している能力評価指標AECI(Anthropic's internal capability index)では、Model 2はMythos 5より約1.5ポイント上に位置する。ただしこの差は、Mythos PreviewからMythos 5への移行時のスコア差よりも小さい。AECIは外部のベンチマークとは異なり、Anthropicが独自に設計した複数の内部評価指標を組み合わせた総合スコアであり、モデルの汎用的な能力の推移を社内で追跡するために用いられる。

AnthropicのAECIは社内ベンチマークの集合体。「Model 2」はMythos 5より1.5ポイント上とされるが、このグラフにはプロットされていない。| 画像: Anthropic
社内では本番コードの大半をClaudeが生成
Model 2の用途として挙げられているのは、コーディング、データ生成、研究・エンジニアリング業務だ。継続的に動作するエージェント経由での利用も含まれる。
特筆すべきは、Anthropicの本番システムのコードの大半をClaudeが書いているという点だ。これは単なる開発支援ツールとしての利用にとどまらず、AI企業がその自社製品を実際の開発インフラの根幹に組み込んでいることを示す具体的な証拠でもある。「AIが自社のコードを書く」という構造は、開発速度と品質管理の両面でどのような影響をもたらすのか——Anthropicが内部モデルをあえて最前線に置く理由の一端がここにある。
安全審査は通過したが、公開予定なし
Model 2は社内展開前に内部レビューを経ているが、Mythos 5ほど徹底的なテストは行われていないとAnthropicは認めている。外部公開モデルと比較して審査の深度が異なる点は、社内限定運用だからこそ許容される判断といえる。
ただし、レビューの結果として新たなミスアラインメント(AIの目標や行動が人間の意図と乖離するリスク)は発見されなかった。AnthropicはConstitutional AIなどの安全性研究で知られる企業であり、ミスアラインメントの検出と評価は同社の中核的な研究領域だ。その観点から、同社はModel 2のミスアラインメントに関する全体的なリスクを「低い(low)」と評価している。
現時点で外部公開の計画はないとされている。
「社内限定の最強モデル」という戦略の意味
今回の開示で浮かび上がるのは、Anthropicが最先端の能力を持つモデルを外部リリース前に社内で実運用する、という開発・運用サイクルだ。安全審査の徹底度と実用性のトレードオフを社内環境で先行検証してから商用展開を判断するという流れは、同社が掲げる「安全性と有用性の両立」という方針と整合する。
一方で、最高性能モデルを非公開に保つことは、競合他社や研究者コミュニティからの独立した評価の機会を閉ざすという側面もある。内部評価指標であるAECIだけでは、外部研究者がModel 2の実力を独立して検証する手段がない。
Model 2がいずれ公開モデルとして登場するのか、あるいはさらに上位のモデルが先にリリースされるのかは、現時点では不明だ。Anthropicの開発サイクルを考えれば、Model 2はすでに次世代モデルへの橋渡し役として機能している可能性もある。
詳細はAnthropic's most capable model, codenamed "Model 2," is for internal use onlyを参照していただきたい。