8月20日、sacredheartsc.comが「Browser De-Slop」と題した記事を公開した。FirefoxおよびChrome/ChromiumにJSONポリシーファイルを配置するだけで、AI機能・テレメトリ・スポンサー広告など「頼んでいないのに入っている機能」を一括で無効化する方法を詳しく解説している。
「頼んでいない機能」が増え続けるブラウザ事情
ここ数年、主要ブラウザはAI要約・スポンサーリンク・クラウド同期・天気ウィジェットといった機能を次々と標準搭載してきた。さらにChromeはManifest V3への段階的移行を進め、Chrome 127(2024年)でManifest V2拡張機能の無効化を開始した結果、従来のuBlock Originフル版がChromeで動作しなくなった。こうした流れに対し、ブラウザを「自分の道具」として取り戻したいユーザーの間で、エンタープライズ向けのポリシー機能を個人利用に転用するアプローチが注目されつつある。
今回紹介する方法は、設定画面を一項目ずつ変更するのではなく、JSONポリシーファイルをシステムの所定パスに置くだけで複数設定を一括適用するものだ。本来は企業のIT管理者がブラウザを一元管理するために設けられた仕組みだが、個人のマシンでも同様に機能する。特筆すべき点は、Firefoxであれば制限のないフル版uBlock Originを強制インストールしてトラッキング・広告を徹底的にブロックできることだ。
ポリシーファイルの配置場所
対応するパスはOS・ブラウザの組み合わせによって異なる。記事の著者はLinux/FreeBSD環境をメインに解説しており、macOS(plistファイル)・Windows(グループポリシー)にも対応するとしているが、詳細は各ブラウザの公式ドキュメント(Firefox・Chrome)を参照されたい。
| OS | ブラウザ | ポリシーファイルのパス |
|---|---|---|
| FreeBSD | Chromium | /usr/local/etc/chromium/policies/managed/policies.json |
| FreeBSD | Firefox | /usr/local/lib/firefox/distribution/policies.json |
| Ubuntu | Chrome | /etc/opt/chrome/policies/managed/policies.json |
| Ubuntu | Chromium | /etc/chromium-browser/policies/managed/policies.json |
| Ubuntu | Firefox | /etc/firefox/policies/policies.json |
| RedHat | Chromium | /etc/chromium/policies/managed/policies.json |
| RedHat | Firefox | /etc/firefox/policies/policies.json |
Firefoxの設定:AIも追跡も一括ブロック
記事の中で最も内容が濃いのがFirefoxの設定だ。公式ポリシーテンプレートに基づき、以下を制御している:
- AI関連機能をすべてブロック(
AIControlsでblockedかつlocked)※Firefox 128以降で利用可能なポリシー - テレメトリの無効化(
DisableTelemetry: true) - Pocket・Firefox Accounts・Firefox Studiesの無効化
- uBlock Originを強制インストールし、EasyList・EasyPrivacy・fanboy-cookiemonsterなど複数のフィルターリストを事前設定
- ネイティブのトラッキング防止機能を無効化(uBlock Originで一元管理するため、競合を避ける目的)
- DNS-over-HTTPSを無効化
- Safe Browsingを無効化(
browser.safebrowsing.*をすべてfalse・locked) - デフォルト検索エンジンをDuckDuckGoに変更
- ビルトインパスワードマネージャーを無効化(著者はBitwardenを使用)
- 初回起動時のオンボーディングメッセージを非表示
ひとつ注意が必要なのはSafe Browsingの無効化だ。Safe Browsingはフィッシングサイトや不正ダウンロードを警告する機能であり、これを切るとそのぶん自衛が必要になる。著者はuBlock Originのフィルターリストで代替するスタンスだが、セキュリティ上のトレードオフとして理解した上で適用を判断したい。
設定の一部を抜粋する:
{
"policies": {
"AIControls": {
"Default": {
"Value": "blocked",
"Locked": true
}
},
"DisableTelemetry": true,
"DisablePocket": true,
"DisableFirefoxAccounts": true,
"DNSOverHTTPS": {
"Enabled": false
},
"ExtensionSettings": {
"uBlock0@raymondhill.net": {
"install_url": "https://addons.mozilla.org/firefox/downloads/latest/ublock-origin/latest.xpi",
"installation_mode": "force_installed"
}
}
}
}
Chromeの設定:Manifest V3の制約あり
Chrome(Chromium)でも同様のポリシーファイルが使えるが、大きな制約がある。ChromeはManifest V3への移行に伴いコンテンツフィルタリングAPIを刷新した結果、フル版uBlock Originが動作しなくなった(詳細はuBlock Originの公式案内を参照)。そのため記事では、機能を絞った**uBlock Origin Lite**(Manifest V3対応版)を代替として強制インストールしている。
また、Chromeはポリシーファイルからカスタムルート証明書(CA)を追加する機能を廃止しており、著者はその代替として~/.pki/nssdbに証明書を追加するスクリプトを使っている。
Chromeで制御している主な項目:
- テレメトリ・メトリクスレポートの無効化(
MetricsReportingEnabled: false、CloudReportingEnabled: false) - PrivacySandbox広告関連機能をすべて無効化(
PrivacySandboxAdTopicsEnabled等) - Chromecast(MediaRouter)・Cloud Printの無効化
- ブラウザサインイン・同期の無効化(
BrowserSignin: 0、SyncDisabled: true) - デフォルト検索エンジンをDuckDuckGoに変更
FirefoxがuBlock Originをフルで使えるのに対し、ChromeはLite版に留まる。広告ブロックの網羅性という点で、両者の差は現時点では小さくない。
設定画面から変えればいいのでは?
もちろん設定画面から同じ変更は可能だ。ただしポリシーファイルには2つの実用的な利点がある。
第一に、複数マシンへの一括展開が容易なこと。ファイルを配置するだけで同じ設定を再現できる。
第二に、**"Locked": trueを指定した項目はUIから変更不可になる**こと。ブラウザのアップデートで設定がリセットされる事態を防ぐ効果もあり、個人利用でも恩恵がある。「設定を変えたつもりがいつの間にか元に戻っていた」という経験のある人には特に有効な手段だ。
詳細はBrowser De-Slopを参照していただきたい。