8月19日、Janakiram MSVが「Agent2Agent Joins The Agentic AI Foundation Alongside MCP」と題した記事を公開した。AIエージェント間通信プロトコル「A2A」がLinux Foundation傘下の「Agentic AI Foundation(AAIF)」に加入し、MCPと同一の中立ガバナンス下に置かれることになった経緯と意味について詳しく論じられている。
A2AとMCPが同一ファウンデーションに集結
8月17日、Agentic AI Foundation(AAIF)はAgent2Agent(A2A)プロトコルのAAIF加入を発表した。 AAIFはLinux Foundation傘下の組織であり、すでにModel Context Protocol(MCP)、Blockのgooseランタイム、OpenAIのAGENTS.md規約、agentgatewayプロキシを管理している。
ただし、この発表を「GoogleがA2Aの支配権を手放した」と読むのは正確ではない。Googleはすでに2025年6月、AWS・Cisco・Microsoft・Salesforce・SAP・ServiceNowとともに、A2Aの仕様・SDK・ツール一式をLinux Foundationプロジェクトへ寄贈していた。今回変わったのは「どのファウンデーションがホストするか」であって、「誰がコントロールするか」ではない。
エンジニアリング視点で整理すると、これはマルチエージェントシステムの主要な相互運用プロトコル2本が、同一のガバナンス傘下に収まった「調整の話」である。各プロトコルは独自のメンテナー、仕様策定プロセス、リリーススケジュールを維持する。
A2AとMCPの役割分担
2つのプロトコルが担う領域は異なる。
- MCP:エージェントがデータベース・API・ファイルシステムにアクセスする方法を標準化する
- A2A:あるエージェントが別のエージェントにタスクを委譲し、結果を受け取る方法を標準化する
A2Aの中核は「ディスカバリーと委譲」の仕組みである。エージェントは「エージェントカード」と呼ばれる構造化された自己記述情報(できること・到達方法)を公開し、他のエージェントはそれを読んで人間を介さずにタスクを引き渡す。
Googleが2025年4月にA2Aを公開し、2026年3月にv1.0へ到達した。v1.0では以下が追加されている。
- マルチプロトコルバインディングとバージョンネゴシエーション
- マルチテナントサポート
- 暗号署名付きエージェントカード(信頼する署名鍵に対してカードのIDとメタデータを検証する仕組み)
採用状況とここまでの経緯
プロトコルの普及は、一般的な仕様発表と比べて広い。AAIFによれば、150以上の組織が支持し、複数の業界で本番環境への導入が進んでいる(ただし数字はファウンデーションとベンダー側の報告であり、独立した検証はない)。
具体的な採用事例として以下が挙げられている。
- Google Cloud・Azure AI Foundry・AWS Bedrock AgentCoreでの対応
- HuaweiがHarmonyOS上でCeliaとアプリ内エージェント間にA2Aを採用
経緯として押さえておきたいのが、2025年8月のIBM Agent Communication Protocol(ACP) のA2Aへの統合である。ACPはIBMが独自に推進していたエージェント間通信仕様で、A2Aとは設計思想の一部が異なっていた。両仕様の競合状態が続いていたが、IBMはAAIFへの参加を機にACPをA2Aへ統合する形で収束させた。主要な競合仕様のひとつがこの形で消滅したことは、A2Aが業界標準としての求心力を高めたことを示す出来事だといえる。一方、CiscoのAGNTCYはディスカバリーとIDの領域で依然として重複しており、完全な一本化には至っていない。
今回の移管で解決しないこと
ファウンデーション統合は「仕様の管理主体」を確定させるが、以下は解決しない。
エンタープライズの認可ポリシーは標準化されない。 A2Aはサーバーが認可チェックを行い、結果を呼び出し元の権限範囲に絞り込むことを規範的に要求しているが、ポリシーモデル自体は意図的に開放されている。組織の境界をまたいでタスクが移動した際に「相手エージェントが何にアクセスできるか」は、依然として企業側の判断に委ねられる。
また、A2A対応を謳うプラットフォームでも実装の深さはまちまちである。エンドポイントを立てることと、バージョンネゴシエーション・マルチテナント・署名済みカードをフルサポートすることは別物だ。
エンタープライズが確認すべき3点
記事では、A2A採用を検討する企業向けに以下の確認項目を挙げている。
- 適合性:ベンダーがどのA2Aリビジョンを実装し、どのバインディングに対応し、旧クライアントとのバージョンネゴシエーションが可能か
- 信頼とアイソレーション:署名なしエージェントカードを拒否するか、署名鍵の組織帰属をどう確認するか、テナント間の分離はどう実現されているか
- アカウンタビリティ:パートナーのエージェントへの委譲時にアクセス境界を施行するのはどのシステムか、コンプライアンスチームが読める監査記録が残るか
MCP・A2Aの両コミュニティにとって、同一ファウンデーション内に調整の場が生まれたことの実質的な意味は「どちらの仕様も単一ベンダーのロードマップに引きずられるリスクが下がった」点にある。仕様自体は引き続き別々に存在し、エージェントの相互運用を実現する作業はデプロイするチームの仕事のままだ。
詳細はAgent2Agent Joins The Agentic AI Foundation Alongside MCPを参照していただきたい。