8月19日、Tero Piiirainenが「Bun 1.4 Rust rewrite is not looking good • Tero Piirainen」と題した記事を公開した。この記事では、BunのRust書き換えプロジェクトが技術的・コミュニティ的に深刻な問題を抱えているという懸念について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
「明日リリース」が3ヶ月続いている
Bunは2022年に登場したJavaScriptランタイムで、Node.jsの代替として高いパフォーマンスと開発体験の良さから注目を集めてきた。開発言語にZigを採用し、少人数で圧倒的な速度を叩き出したことで「個人エンジニアリングの傑作」とも評されていた。
Piiirainenは2022年の初期リリースからBunを支持してきた開発者で、自身のフレームワーク「Nue」や新プロジェクト「Hertta」でもBunを採用している。そのPiiirainenが今回、Bunへの正直な懸念を綴った。
問題の出発点はバージョン1.4のリリースの遅れだ。前回の安定版リリースからすでに3ヶ月以上が経過しており、これはBun史上最長の空白期間となっている。以前はリリース日を具体的な数字で告知していたBunのメインコントリビューター・Jarred Sumnerだが、最近のコミュニケーションは「明日」「来週」を繰り返すだけになっている。
コミュニティの反応は率直だ。Piiirainenが引用しているXのリプライには以下のようなものがある。
「2ヶ月かかるなら最初からそう言えばいい。毎週『明日リリース』を繰り返すのではなく」
「どうやってあなたを信じろというんですか?明日、来週、月曜日……いつも守れない約束をする」
GitHubが映す"AIによる書き換え"の現実
今回のBun 1.4は、ZigからRustへの大規模な書き換えを伴うリリースだ。その開発体制がGitHubのコントリビューター統計に如実に現れている。
直近1ヶ月のコミット数:
- robobun(AIボット): 15,800コミット
- autofix-ci[bot]: 1,600コミット
- Jarred Sumner本人: 790コミット

Jarred自身もXでこう述べている。
「6ヶ月前、BunのPRのほとんどは人間がClaudeにプロンプトを打って生成されていた。今では、ClaudeがClaudeにプロンプトを打って生成されている」
— Jarred Sumner
さらに、オープンなPull Requestの数が5,000件を超えている。ReactのオープンPRが441件、PiiirainenがOpenClawを比較に出しているが同2,200件であることを考えると、異常な数字だ。GitHubは1つのブランチに対してオープンなPRが1,000件を超えるとマージ可能性チェックがタイムアウトし始めると推奨しており、5,000件はその5倍に当たる。
Zigは本当に問題だったのか
書き換えの理由としてBun側が挙げたのは「Zigのメモリ安全性の問題」だったが、Piiirainenはこれに疑問を呈する。
Zigの作者であるAndrew Kelleyもこの書き換えについてブログ記事を公開しており、そこでBunのコードベースを次のように評している。
「私たちはBunのコードベースに見られるプログラミングの実践に、ますます恐怖を覚えるようになった。ハックの上にハック。アサーションの乱用。JarredはLLMを使える環境になるずっと前から、すでにスロップ(粗悪なコード)を書いていた」
— Andrew Kelley(原文)
加えて、Rustに書き換えた後もunsafeブロックが多数存在するという点をPiiirainenは問題視している。メモリ安全性を理由にRustへ移行したにもかかわらず、unsafeを多用するならその根拠が崩れる。
Piiirainenの見立てはこうだ。JarredとAnthropicは早い段階でRustへの書き換えを決め、Zigのメモリ問題はその口実として使われた。「ClaudeでRust書き換えができる」というデモンストレーションとしては絶好のストーリーであり、実際に大きな話題を呼んだ。しかし今、その後始末に追われているというのが現状だ。
「同じAI支援の労力を、人間が理解できる規律あるZigのコードに投じるべきだったのではないか。Jarredがこの選択肢を真剣に検討した様子は見たことがない」
エンジニアが注目すべき本質的な問いかけ
この件は単なるBunの遅延問題にとどまらない。Piiirainenはこう述べる。
「この書き換えは、AIエージェントが本番コードベースを引き継げるかどうかを、現実世界で最も注目されている形でテストしているプロジェクトだ。Anthropicの評判もかかっている。うまくいけば、エージェント型コーディングが何をできるかの証明になる。うまくいかなければ、逆のシグナルを発することになる」
AIによる大規模コード生成が実際の本番プロジェクトでどこまで機能するのか——Bun 1.4はその試金石になっている。
なお、記事執筆時点でv1.4はまだリリースされていない。
詳細はBun 1.4 Rust rewrite is not looking good • Tero Piirainenを参照していただきたい。