8月17日、CNBCが「Synchrony, credit card issuer to Amazon and Walmart, partners with OpenAI for ChatGPT shopping」と題した記事を公開した。Amazon・Walmart向けクレジットカードを発行するSynchrony FinancialがOpenAIと提携し、ChatGPT内で直接決済を完結させる仕組みの構築に乗り出したことを報じている。
ChatGPTで商品を買う——誰がその決済を担うか
AIチャットbot内で商品を発見し、そのまま購入まで完結させる「エージェント・コマース(agentic commerce)」は、次世代ECの形として注目されている。ただし現状では、ChatGPTで見つけた商品もブランドのウェブサイトへ誘導されてから決済する流れが一般的で、チャット内での購入完結には至っていない。
この課題に対応すべく、OpenAIはすでにVisaやStripeと提携し、チャット内購入の実現に向けた基盤整備を進めている。今回のSynchronyとの提携は、そこへ消費者金融・ストアカードという要素を加えるものだ。
Synchrony Financialは、Amazon・Walmart・Lowe'sなど大手小売ブランドのプライベートラベル(特定店舗専用)クレジットカードや汎用クレジットカードを発行する米国の大手消費者金融会社だ。米国内で1億件超のアクティブアカウントを持ち、数千社を超える小売パートナーと提携するなど、米国消費者金融市場で存在感の大きい企業である。今回の提携により、ChatGPT上でSynchrony発行のカードを「ロード済み」の状態にしておき、AIエージェントが商品を提示した際にそのまま決済まで通せる状態を目指す。
同社の最高戦略責任者であるMaran Nalluswami氏はこう述べている。
「現状では、OpenAIのようなプロバイダー側でトランザクションがきれいに完結していない。我々のカードが正しい場所に登録されていれば、そのエコシステム内でトランザクションを完結させられる状態にしておきたい」
実現までの壁:6〜12ヶ月、あるいはそれ以上
Nalluswami氏によれば、汎用クレジットカードをChatGPT内に統合するだけでも6〜12ヶ月を要する見通しだ。さらに特定小売専用のプライベートラベルカードは、ブランド側との追加調整が必要なためそれ以上かかる可能性がある。
技術的な課題だけでなく、経済的な課題も残る。ChatGPT内で完結した購入に対する手数料(フィー)の配分について、小売業者・Synchrony・OpenAI間での交渉がこれから必要になるとNalluswami氏は認めている。また、消費者側もAIにクレジットカード情報を渡したり、エージェントに購入を任せたりすることへの抵抗感がまだ強いという課題もある。
Anthropic・Googleとも交渉中
Synchronyの動きはOpenAIだけにとどまらない。同社は現在、AnthropicのClaudeやGoogleのGeminiとも、チャットbot内へのカード統合に向けた交渉を並行して進めている。どのAIプラットフォームが主要な購買チャネルになるかが不透明な中、複数プラットフォームにポジションを確保しておく戦略だ。
ChatGPTプラグインの提供とモデルの社内活用
今回の発表には、もう一つの取り組みも含まれている。SynchronyはChatGPT向けプラグインを公開し、消費者がSynchronyのマーケットプレイスディール・分割払いプロモーション・パートナー特典などを閲覧できるようにする。また、OpenAIの最新モデルを社内に導入し、自社のプロダクト開発を加速させることも明らかにした。
これらの動きは、OpenAIが大型IPOに向けた準備を進める時期と重なっている。OpenAIにとってIPOを控えた今、ChatGPTをオンラインコマースの広範なプラットフォームへと転換させることは収益モデルの多様化という観点でも重要な意味を持つ。Synchronyとの提携は、その布石の一つと読み取ることもできる。
詳細はSynchrony, credit card issuer to Amazon and Walmart, partners with OpenAI for ChatGPT shoppingを参照していただきたい。