8月18日、Los Angeles Timesが「Big Tech's gas-hungry AI hubs risk blowing up climate pledges」と題した記事を公開した。Amazonがテキサス州ペコス郡に8,000エーカー(約32平方キロメートル)のデータセンターサイトを開発中であり、近隣ではChevronがMicrosoftのために天然ガス発電所を建設中だ。この2拠点だけで年間最大4,500万メトリックトンのCO₂換算を排出する可能性があり、Big TechのAIインフラが各社の気候公約を根底から揺るがしかねない実態を伝えている。
AmazonとMicrosoftがテキサスに巨大拠点を建設中
問題の規模が最も大きいのがテキサス州だ。豊富な石油・ガス資源と歴史的に緩い規制環境から、追跡されているプロジェクトの3分の1以上がテキサスに集中している。
インフラ追跡サービスのCleanviewは今月上旬、Amazonがテキサス州ペコス郡に8,000エーカー(約32平方キロメートル)のサイトを開発中だと特定した。米国最大級の単一CO₂排出源になる可能性がある規模だ。
そこから約48キロ西、ピーカンの果樹園と油田櫓が点在する荒野の先では、ChevronがMicrosoftのために天然ガス発電所を建設中だ。2,000エーカーのデータセンター複合施設に電力を供給する。
この2拠点だけで10ギガワット超の発電能力を持つ見込みで、ニューヨーク市が猛暑日に消費する電力量に相当する。両拠点の年間排出量は規制当局への届出によれば最大4,500万メトリックトンのCO₂換算に上る可能性がある。両社が本社を置くワシントン州の累積排出量の約半分に迫る数字だ。
なお、テキサス州では急増するデータセンター開発に対する懸念が高まっており、Greg Abbott知事は最近、新規データセンターの承認を一時停止すると発表している。規制当局レベルでの動きとして注目される。
AIデータセンターが"専用ガス発電所"を建てている
電力不足に直面したデータセンター事業者が、規制当局の管轄外で独自の天然ガス発電所を建設する動きが加速している。いわゆる「behind-the-meter(系統外)」方式だ。
通常、大規模な発電設備を系統(送電網)に接続する場合は、電力会社や系統運用機関(ISO)の審査・承認が必要であり、環境影響評価や公益性の審査が課される。一方、behind-the-meter方式はその発電電力を系統に流さず需要家施設内で直接消費する構成であるため、系統連系に関わる規制プロセスを経ずに許可・建設が可能だ。大手テック企業がこの方式を選ぶ背景には、系統接続の待ち行列が数年単位に及ぶほど逼迫していることがあり、規制をバイパスするというより「承認待ちでは間に合わない」という実情がある。
BloombergNEFが追跡する提案中の99プラント(合計126ギガワットの発電容量)が業界標準の稼働率で運転された場合、年間約3億1,800万メトリックトンのCO₂を排出すると試算される。米国の電力セクター全体の排出量が年間約14億8,500万メトリックトン(EIAデータ)であることを踏まえると、データセンター向けインフラだけで電力部門排出量を最大20%、フル稼働なら最大3分の1(約33%)押し上げる計算になる。
現在計画されている発電機の多くは「単純サイクル(single-cycle)」型だ。効率の高い「複合サイクル(combined-cycle)」型も需要はあるが、タービンの納期が数年単位でバックオーダーになっており、調達が困難な状況にある。単純サイクル型は複合サイクル型より燃焼効率が低く、CO₂排出量が多い。
「クリーン」を掲げていた企業が化石燃料インフラを急増させている
AmazonもMicrosoftも、再生可能エネルギー開発を大規模に支援し、ネットゼロ排出を目標として掲げてきた企業だ。しかしそれらの公約はAIブームが起きる前、従業員や環境活動家からの圧力を受けて設定されたものだった。両社の広報担当は「気候目標は変わっていない」と述べており、Amazonは西テキサスのサイトで太陽光発電とバッテリーストレージの選択肢を検討中だとしている。
Microsoftでサステナビリティ強化を訴える社内活動を組織した元従業員のDrew Wilkinsonはこう語っている。
「この3年間の変化は驚くべきものだ。企業の気候アクションの基準を設定していた会社が、今や猛烈なペースで新たな化石燃料インフラをオンラインにしている。これを予見していた人はほとんどいなかった」
Energy and Policy Institute(電力ウォッチドッグ)のエグゼクティブ・ディレクター、David Pomerantzも状況を端的に表現している。
「業界全体に、とにかく電力を、しかも素早く確保しなければならないという猛烈なプレッシャーがかかっている。クリーンかどうかはほぼ問われていない」
「絵に描いた餅」も混在、全プロジェクトが実現するわけではない
BloombergNEFが追跡する126ギガワット分のプロジェクト全てが建設されるわけではない。AI向け計算需要の急増に便乗した「幻のプロジェクト」や実現性の低い提案も含まれているとされる。ただし、AmazonやMicrosoftといった大手が絡む案件は規模・進捗ともに現実的な脅威として捉えられている。
プロジェクトは22州に分散しており、アラスカからジョージアまで広がっている。OpenAIやAnthropic、クラウド大手、さらには投資家グループが手がけるものも含まれている。
詳細はBig Tech's gas-hungry AI hubs risk blowing up climate pledgesを参照していただきたい。