8月17日、NVIDIAが「NVIDIA Guarantees SB Energy's PORTS-Pike Technology Campus in Ohio to Exclusively Host NVIDIA AI Compute」と題した記事を公開した。かつてウラン濃縮施設として稼働し、2001年に閉鎖されたオハイオ州の連邦施設跡地に、最大8 IT-GWという業界の常識を超えるAIコンピュートキャンパスを建設する計画だ。NVIDIAはGPU供給にとどまらず15億ドルを直接投資する株主として参画し、SoftBankグループ傘下のSB EnergyがOpenAIに対して20年間のリース契約でこのインフラを提供する。
NVIDIA・SoftBank・OpenAIが組む「8 GW」AIインフラ
今回の発表の核心は、その規模の異常さにある。
NVIDIAはSB Energyが開発するオハイオ州パイク郡のPORTS-Pikeテクノロジーキャンパスにおいて、土地・電力・建屋(LPS: Land, Power and Shell)の容量を確保した。初期フェーズで4.25 IT-GW、オプション行使で残り3.75 IT-GWを追加し、最終的に合計8 IT-GWのAIファクトリーキャパシティを構築する計画だ。
「IT-GW(IT Gigawatt)」はデータセンターのIT機器が消費する電力の単位だ。1 GWは米国基準で一般家庭約33万世帯分の電力消費に相当するとされており、8 IT-GWはその8倍、約264万世帯分に匹敵する規模感となる。現在世界最大級のハイパースケールデータセンターでも数百MWクラスが多く、8 GWという数字は業界の常識を大幅に超える。
このキャンパスに搭載されるのはNVIDIAのフルスタックプラットフォーム「DSX AIファクトリー」で、GPU・CPU・ネットワーキングをまとめて提供する構成だ。OpenAIが20年間のリースで同施設を使用する顧客となり、SoftBankグループ傘下のSB Energyがビルド・オーン・オペレートを担う。
NVIDIAがインフラ事業に本格参入する意味
従来、NVIDIAはGPUを売る半導体企業だった。今回の動きはそれと一線を画す。
NVIDIAはLPS容量の確保にあたってクレジットサポート(信用補完)を提供し、さらにSB Energyへ15億ドル(約2,200億円)を直接投資する。既存投資家であるSoftBankグループとOpenAIに並ぶ株主となる形だ。GPUの販売事業を継続しながら、インフラレイヤーへの直接参入という新たな軸を加えた拡張と見るのが正確だろう。
NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアンは次のように述べている。
「AIはインフラになりつつある。あらゆる産業において知性の基盤となる。土地・電力・建屋はAI時代において不可欠な要素だ。我々はNVIDIAのコンピュートのための長寿命インフラを確保することで、OpenAIが最も生産性の高いAIファクトリーを展開し、新世代のたびにアップグレードし続けられるようにする」
ハードウェアを売るだけでなく、インフラレイヤーそのものを押さえにいく戦略は、AWSやAzureのようなクラウド事業者に近い動き方だ。
キャンパスの背景:廃核施設の再活用
PORTS-Pikeが建設される場所は、ポーツマス・ガス拡散プラント(Portsmouth Gaseous Diffusion Plant)の跡地だ。冷戦期から核兵器・原子力発電向けのウラン濃縮を担った連邦施設で、最盛期には数千人規模の雇用を抱えていた。2001年に濃縮運転を停止した後、施設は米エネルギー省(DOE)の管理下で廃止措置(除染・解体)が進められてきた。連邦・民有地にまたがるこの広大なサイトを民間主導で再産業化するプロジェクトとして、DOEおよび商務省(DOC)、地域電力会社AEP Ohioとの協力のもとで開発が進む。
アパラチア・オハイオ地域は長らく製造業の衰退に苦しんできた地域であり、今回の開発は雇用創出の観点からも注目されている。SoftBankグループ傘下のSB Energyは少なくとも10 GWの新規電力設備を建設するとともに、地域電力網インフラに42億ドル以上を投資する計画だ。
コミュニティへの直接還元として、OpenAIがSB Energyの当初発表した4,000万ドルの地域貢献基金に追加で4,000万ドルを上乗せし、合計8,000万ドルの地域貢献基金を設立する。対象は安価なエネルギー供給、雇用・人材育成支援、地域経済開発だ。キャパシティは2028年からフェーズ別に稼働を開始する予定とされている。
体制と規模のまとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| キャンパス | PORTS-Pike Technology Campus(オハイオ州パイク郡) |
| AIコンピュート容量 | 初期4.25 IT-GW、最大8 IT-GW |
| AIプラットフォーム | NVIDIA DSX AIファクトリー(GPU/CPU/ネットワーク) |
| 顧客 | OpenAI(20年リース) |
| 運営 | SB Energy(ビルド・オーン・オペレート) |
| NVIDIA投資額 | SB Energyへ15億ドル |
| 地域貢献基金 | 8,000万ドル(SB Energy 4,000万+OpenAI 4,000万) |
| 稼働開始 | 2028年〜(フェーズ別) |
SoftBankグループの孫正義会長兼CEOは「次の知性の時代はあらゆる産業を変革する。AGIの力を解放し、人類を前進させる」と述べており、SoftBankグループとしてもAGI時代のインフラ投資に本腰を入れる姿勢を示した。
詳細はNVIDIA Guarantees SB Energy's PORTS-Pike Technology Campus in Ohio to Exclusively Host NVIDIA AI Computeを参照していただきたい。