8月18日、Futurismが「Amazon Caught Destroying Rare Books to Train AI」と題した記事を公開した。AmazonがAIモデルの学習データ収集のために希少本を大量にスキャン・廃棄していた実態について、古書業者の追跡調査と複数の証言をもとに報じている。ただし本記事の情報源には古書業者への取材・匿名フォーラムへの投稿・404 Media経由の引用が含まれており、すべての事実がAmazon自身によって確認されたわけではない点には留意が必要だ。
AirTagで追跡、辿り着いた先はAmazonの倉庫
発端は、ある古書販売業者の疑惑だった。書籍マーケットプレイス「Biblio」(購入者が匿名のまま取引できるプラットフォーム)経由で、1,000冊の希少本を一括購入するという注文が入った。書籍の種類の無作為さ、注文の規模、そしてすべての本にISBNが付いているという点から、業者はAI企業による購入ではないかと疑った。
そこで業者はApple AirTagを本の間に仕込み、荷物を追跡した。荷物が届いたのは、ネバダ州にあるAmazonの巨大倉庫「VGT3」だった。
そこで何が行われているか。Amazonの従業員とみられる人物がワーカー向け匿名フォーラムに投稿した内容が、404 Mediaに引用されている(投稿者の身元は確認されておらず、二次引用である点に注意)。
「ここVGT3では、ひたすら本をスキャンするだけです。背表紙を切り取る係と、バーコードを読み取る係に分かれています」
つまり、本の背を裁断してページをばらし、高速スキャン後に廃棄するという工程が日常業務として存在しているとされる。VGT3のロゴは、本を食べようとしているティラノサウルスという、あまりにも露骨なデザインだ。
Amazonは404 Mediaのコメント取材に対し、「Amazonは顧客向け製品・サービスの開発・改善を支援するため、商業チャネルを通じて書籍を購入している」とだけ回答した。書籍の裁断・廃棄については明確に否定も肯定もしていない。
「変換的利用」として著作権侵害に問われない
この手法がAI業界で広く注目されるきっかけとなったのは、Anthropicに対する訴訟だった。Claude(クロード)の開発元Anthropicが、数百万冊の書籍を工業用機器でページごと裁断・スキャンし、その後廃棄していたことが訴訟資料から判明した。
注目すべきはその司法判断だ。担当裁判官は、物理的なテキストをデジタルデータに変換して原本を廃棄する行為は「変換的利用(transformative use)」に当たり、著作権侵害には該当しないとの見解を示した。ただしこれはあくまで一審段階の判断であり、控訴や今後の上級審によって覆る可能性もある。現時点で確定判決とは言えず、法的な決着がついたと断言するのは早計だ。とはいえこの司法判断が事実上の参照点となり、同様の手法がAI業界に広がっているとみられている。
書籍のデジタル化とAI学習データをめぐる法的グレーゾーンは今に始まった話ではない。2000年代にはGoogleがGoogleブックスプロジェクトで膨大な書籍をスキャンし、著作権侵害を問われたが、米連邦控訴裁判所は2015年に「変換的利用」として適法との判断を下した。この前例がAI時代においても引き継がれ、より大規模・より破壊的な形で適用されつつある。
「すべての本をスキャンしようとしている」という仮説
404 Mediaの取材が裏付けるのは、古書業者たちの間で囁かれていた不気味な仮説だ。AI企業がISBNのリスト(世界中で発行されたすべての書籍に付与されたシリアル番号)を元に、体系的に書籍を収集・スキャンしようとしているというものだ。Amazon倉庫の従業員とみられる人物の証言によれば、受け取ったすべての本のISBNをスキャンしているとされており、この仮説に一定の信憑性を与えている。
今回廃棄されたのは希少本、つまり現存する部数が極めて少ない書籍だ。必ずしも古典の初版本に限らないが、歴史的・学術的・個人的に価値を持つものも含まれる。
業者は404 Mediaにこう語った。
「価値には様々な種類があります。金銭的価値はもちろん、歴史的価値、知的価値、感情的価値。あらゆる種類の価値があるのに、AI企業はそれらを一切気にしない。彼らが欲しいのは、言葉の羅列としてのコンテンツだけです」
著作権上は違法でなくとも、世界に数部しか残っていない書籍がAI学習のために物理的に失われていくという現実は、法律の枠を超えた問題をはらんでいる。書籍という物理的な文化財の不可逆的な消失は、デジタルデータとして保存されたとしても取り戻せるものではなく、図書館や研究機関、そして書籍文化全体にとって長期的な損失となりうる。
詳細はAmazon Caught Destroying Rare Books to Train AIを参照していただきたい。