8月17日、The Decoderが「AI video market has bounced back from Sora's false start」と題した記事を公開した。OpenAIのSoraが期待外れに終わった後、AI動画市場が広告・AIペルソナ・ハイブリッド制作という独自のビジネスモデルで急成長している実態を詳報している。
Soraの「フォルスタート」が市場を再編した
現在の盛り上がりを理解するには、2024年初頭のSora登場時の文脈が欠かせない。OpenAIが公開した最初のデモは技術的に競合を圧倒しており、ハリウッドに衝撃を与えた。しかし公開されたデモと同等のモデルは一般に提供されることなく、2024年末にリリースされた版は期待を下回った。その間に米国・中国の競合が急速に追い上げ、2025年秋に独立アプリとしてリリースしたSora 2は勢いを維持できず、元記事によればサービスは終了。Disneyとの大型提携も破談に終わった。
こうした経緯を経て市場が証明したのは、スタジオ向け制作ツール・企業向けマーケティングプラットフォーム・クリエイターエコノミー向けペルソナ生成という3つの領域がAI動画の実用的なビジネスモデルとして機能するという点だ。
Netflixの1000タイトルのうち300本でAIを活用
コンテンツ産業へのAI浸透を象徴する数字がある。Netflixは2026年までに1,000タイトルのうち300本でAIを活用すると表明している。監督のロン・ハワードもAIスタジオObsidianとアニメドキュメンタリーを制作中で、そのエグゼクティブプロデューサーはコスト削減効果を**30〜40%**と見積もる。
ハリウッドでは、GoogleやDisneyが出資するAIスタジオ「Promise」のような企業が台頭している。共同創業者のGeorge Strompolosは、人間の俳優とAI技術を組み合わせたハイブリッド制作は従来の映画より20〜50%安価になると推算する。撮影現場では、女優の動きにリアルタイムでAI生成の背景を合成するワークフローがすでに実用化されており、中国のモデル「Seedance 2.5」が使われているケースも報告されている。
一方でChristopher NolanやGuillermo del Toroのような監督はジェネレーティブAIに批判的であり、業界内の議論は続いている。
Higgsfield:評価額が8ヶ月で4倍超、年換算売上高は7億ドルに
ハリウッドの議論を横目に、AI動画スタートアップHiggsfieldは商業化で先行している。Financial Timesの報道によれば、元Snap幹部のAlex Mashrabovが創業した同社は4億ドルを調達し、評価額は54億ドルに達した。わずか8ヶ月前の評価額は13億ドルで、約4倍に跳ね上がった計算だ。
年換算売上高も1年以内で2,000万ドルから7億ドルへと急拡大した。主な用途は長編映画ではなくプロモーション動画で、Dollar Shave Clubのようなブランドが以前なら1本の広告キャンペーン動画しか作らなかったところを、今は1日に複数本のマーケティング動画を生成しているという。売上比率でも、法人顧客は1月時点では全体の4分の1未満だったが、現在は過半数を占めるまでに逆転した。
AIペルソナ量産という新業態
動画生成とは別に、AIキャラクターの大量生成という新しい産業も育ちつつある。スタートアップのInception Point AIは、英国の園芸専門家「Nigel Thistledown」やDIYインフルエンサー「Lila Walker」など100以上のAIペルソナを管理している。各キャラクターには15〜30ページの「キャラクター・バイブル」が用意され、親近感を演出するための架空の人生史が設定されている。
ビジネスモデルは徹底したボリューム戦略で、現在5,000以上のポッドキャストを運営。制作コストが極小のため、CEOのJeanine Wrightによれば1エピソードあたり20リスナーで黒字になるという。ファッション分野ではGuessなどのブランド向けにAIモデルを制作するSeraphinne Vallora、音楽分野ではBillboardチャートに登場したXania MonetのようなAIアーティストも台頭。Spotifyは今後こうしたプロフィールに「AI Persona」タグを付与する計画だ。
AIペルソナの量産は、コンテンツ流通や著作権をめぐる新たな摩擦も生みつつある。Spotifyのタグ付与計画はその一例で、プラットフォーム側がAI生成コンテンツをどう識別・管理するかという問題は業界全体の課題になりつつある。また、「AIペルソナ・マネージャー」「キャラクター・バイブル執筆者」といった従来存在しなかった職種が生まれており、クリエイティブ産業の雇用構造にも変化が及んでいる。
詳細はAI video market has bounced back from Sora's false startを参照していただきたい。