8月16日、TechRadarのライターDavid Nieldが「You can now turn off visible watermarks for AI-made content in Gemini, though the hidden watermarks are staying」と題した記事を公開した。GeminiのAI生成コンテンツに付与される可視ウォーターマークがオプション化され、ユーザーが非表示にできるようになったことについて詳しく紹介されている。
可視ウォーターマークが任意になった
GoogleのJosh Woodwardが発表したこの変更により、Geminiで生成した画像・動画・楽曲に自動で付与されていたGeminiロゴのウォーターマークを、ユーザーが任意でオフにできるようになった。
対象となるのは以下のとおりだ。
- 画像:Nano Banana(GeminiのAI画像生成に使われる内部モデル名)で生成したもの
- 動画:Omni(Geminiの動画生成モデル)で生成したもの
- 楽曲:Lyria(Google DeepMindが開発した音楽生成モデル)で生成したもの
ただし、可視ウォーターマークの表示が法律で義務付けられている国(中国を含む)では、この設定は適用されない。
Woodwardはこの変更を「papercut fixed(小さな摩擦の解消)」と表現しており、クリーンなAI制作ワークフローを求めていたユーザーへの対応であることが示唆されている。変更の詳細な理由は明示されていない。
ChatGPTとの横並びに
この変更により、GeminiはChatGPTと同じ立場に並んだ。ChatGPTはもともと生成画像に可視ウォーターマークを付与していない。両者の大きな違いは薄まったかたちだ。
無効化の手順
Gemini(Web版)での操作手順は以下のとおりだ。
- 画面左下のコグアイコン(歯車)をクリック
- 「Media watermark」を選択
- トグルでオフに切り替え
現時点ではモバイルアプリには当該トグルが実装されておらず、近日中の対応が予告されている。また、FlowおよびSearchでも近日中に同様の設定が利用可能になる予定とのことだ。
「見えない」ウォーターマークは残る
可視ウォーターマークがオプションになる一方、不可視のウォーターマーク技術は継続して適用される点は押さえておく必要がある。
具体的には以下の2層構造だ。
- **SynthID**:Google DeepMindが開発した不可視の電子透かし技術。画像・音声・動画・テキストのピクセル値や周波数成分に人間が知覚できない微細な変化を加えることでAI生成の証跡をファイル内部に埋め込む。圧縮・リサイズ・スクリーンショットなどの一般的な加工操作に対しても耐性を持つよう設計されている
- C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)メタデータ:Adobe・Microsoft・Intel・BBCなど業界横断の団体が策定したコンテンツの来歴・真正性を記録するオープン規格。AI生成であること、生成日時、使用ツールなどをメタデータとして署名付きで保持する。GoogleのほかMeta・OpenAIも採用を表明しており、業界標準として普及が進んでいる
Woodwardは「可視ウォーターマークは任意になったが、SynthIDとC2PAによる透明性の確保は継続している。クリエイティブなコントロールと安全性のバランスを取っている」と述べている。
AI生成かどうかを確認したい場合、Geminiアプリに画像をアップロードすれば、埋め込まれた不可視ウォーターマークを根拠にAI生成か否かを判別できる。
ウォーターマーク議論の現在地
AI生成コンテンツの識別をめぐる議論はここ数年で急加速している。EUのAI法(AI Act)は2024年に成立し、段階的な施行が進んでいる。同法はAIシステムのリスク分類に応じた義務を定めており、生成AIが出力するコンテンツについては透明性確保の要件が設けられているが、可視ウォーターマークの義務付けを直接規定するものではなく、技術的な実装手段はSynthIDやC2PAのような不可視の仕組みも含めて各事業者に委ねられている。今回Googleが可視ウォーターマークをオプション化しながらSynthIDとC2PAを維持した判断は、こうした規制の要件を満たしつつユーザビリティを改善するという方針と整合する。
今回の変更は、可視ウォーターマークが「ユーザーの利便性を損なう」という側面を認めつつも、技術的な透明性(SynthID・C2PA)は手放さないという姿勢を示している。とはいえ、可視的な識別手段が減ることで、AI生成コンテンツの見分けはさらに難しくなるのも事実だ。元記事でもDavid Nieldは、目視でAI生成を見破ることへの限界を示唆しつつ、不可視の技術的手段による追跡の重要性を指摘している。
詳細はYou can now turn off visible watermarks for AI-made content in Gemini, though the hidden watermarks are stayingを参照していただきたい。