8月17日、How-To Geekが「I used Claude to build Anki flashcards」と題した記事を公開した。「日本語の親族名称を20枚のデッキにして」と話しかけるだけで、Claudeが即座にカードを生成してAnkiに直接書き込む——キーボードもAnkiのUIも一切触らずに、である。記事の著者はこの体験を「学習の未来のように感じる(it feels like the future of learning)」と表現しており、単なる自動化ツール紹介にとどまらない熱量で書かれている点が、技術系読者の間でも注目を集めている。
Ankiのカード作成がボトルネックになっている問題
Ankiは、間隔反復(Spaced Repetition)アルゴリズムを採用した無料・オープンソースのフラッシュカードアプリだ。回答時に「簡単だった/難しかった」を自己評価すると、苦手なカードほど高頻度で出題され、習熟したカードは出現頻度が下がる。記憶の定着効率を最大化するために設計されており、語学学習や資格試験対策で広く使われている。
問題はカードの作成コストにある。
質の高いカードは、テキストだけでなく発音音声ファイルや画像も組み合わせて作るのが効果的だ。しかしAnkiのカード作成UIで、それらを一枚ずつ手動でセットアップしていくと、20枚程度のデッキを作るだけで午後まるごと消費することになる。この手間を嫌って、他人が作成した既製デッキをダウンロードして使う人も多い。ただし既製デッキは自分の苦手ポイントに合わせて調整されていないため、学習効率は下がる。「作る手間」と「学習効果」のあいだに生じるこのトレードオフが、Ankiユーザーの長年の悩みだった。
ClaudeとAnkiを繋ぐ仕組み:AnkiConnect
ClaudeをAnkiに接続するには、**AnkiConnect** というアドオンを使う。これはAnkiの機能をローカルのHTTP API(デフォルトではlocalhost:8765)として外部に公開するものだ。外部のスクリプトやツールがAnkiを直接操作できるようになる仕組みで、開発者コミュニティではすでに広く使われている実績あるアドオンである。
インストール手順は以下のとおり:
- Ankiのメニューから Tools > Add-ons を開く
- Get Add-ons をクリックしてAnkiConnectのコード(2055492159)を入力してインストール
- Ankiを再起動し、ブラウザで
http://localhost:8765を開いてAPIが動作していることを確認(apiVersion: AnkiConnect v6のJSONが返れば成功)
次に、ClaudeのMCP(Model Context Protocol)サーバー設定にAnkiConnectのエンドポイントを追加する。具体的には、Claude Desktopの設定ファイル(claude_desktop_config.json)に対して、AnkiConnectのURL(http://localhost:8765)をツールのエンドポイントとして登録するMCPサーバーの設定を追記する。これによりClaude側がAnkiConnectのAPIをツールとして認識し、カード作成・デッキ管理などの操作をClaude自身が呼び出せるようになる。設定の詳細な記述形式はMCP公式ドキュメントを参照するとよい。
実際の使い方:音声指示でデッキを自動生成
接続が完了したあとの操作は、Claudeに話しかけるだけだ。
たとえば「日本語の親族名称を20枚のデッキにして。発音の難しいものには音声ファイルも付けて」と指示するだけで、Claudeがカードの内容を生成し、AnkiConnectのAPIを叩いてAnkiに直接書き込む。テーマや苦手な概念を伝えれば、それに応じたカードを生成する。ウェブから関連画像や音声クリップを取得してカードに添付することも可能だ。
さらに記事では、キーボードを使わずに音声でそのまま指示できる点も強調されている。記事の著者は「messy voice dump(口頭でざっくり喋るだけ)」という表現を使っており、カード設計を細かく考えなくてもClaudeが構造化してくれるため、従来の手動作業と比べて参入コストが大幅に下がる。「何を覚えたいか」だけを伝えれば、「どうカード化するか」はClaudeが考えてくれる——この体験の質的な変化こそが、著者が「学習の未来のように感じる」と書いた理由だろう。
エンジニア視点での補足
この構成のポイントは、AnkiConnectがREST的なローカルAPIを提供しているという点だ。Claude(あるいは他のLLM)がツールとして呼び出せる形になっており、MCP対応のクライアントであれば同様のことが実現できる。Anki側の既存エコシステムを壊さずに、AIのフロントエンドをかぶせるだけで自動化が完結する構造は、他のデスクトップアプリへの応用という観点でも参考になる。
ユースケースとしても広がりがある。語学学習に限らず、技術書の重要概念を口頭でClaudeに説明しながらカード化する、会議のメモをそのまま投げてフラッシュカードに変換するといった使い方も、この仕組みがあれば自然な延長として実現できる。「まず覚えるべき情報を整理する」という認知コストすら、Claudeに肩代わりさせられる点が大きい。
なお、AnkiConnectはデフォルトでローカルホストのみに接続を許可しており、外部からのアクセスには設定変更が必要だ。セキュリティ上は現状の設定のまま使うのが無難である。
詳細はI used Claude to build Anki flashcardsを参照していただきたい。