8月17日、GeekWireが「Etzioni on AI: Become a power user」と題した記事を公開した。AI研究者・起業家のOren Etzioniが実践するAIパワーユーザーになるための20の習慣を、「作業中に使うもの」と「セットアップ系」の2カテゴリに分けて公開している。
Oren Etzioniは、Allen Institute for AI(AI2)の共同創設者であり、学術論文の意味検索エンジンSemantic Scholarを主導してきた人物だ。AIの学術研究にとどまらず、複数の企業を創業してきたシリアル・アントレプレナーでもある。そのEtzioniが「すぐに試せる」と断言するハックを20個公開した。
記事の冒頭にはメタ的な一言がある。「これらすべてを自分でセットアップするのが面倒なら、Claudeにやらせた」という。それ自体がハックの実例になっている。
作業中に使う10のハック
AIに自分をインタビューさせる
最初のハックは、AIにいきなり成果物を作らせるのではなく、要件を引き出すインタビューをさせるというものだ。
「オンボーディングを再設計したい。まず何もするな。制約、エッジケース、私が誤って前提にしていることを聞き出すインタビューをしてくれ。必要なものが揃ったら仕様を書け。」
自分では気づかない前提や盲点を、AIとの対話で浮かび上がらせる手法だ。要件定義フェーズで使うと、後工程の手戻りを大幅に減らせる。
AIに自己採点させる
採点基準(ルールまたはチェックリスト)をAIに渡し、合格するまで作業させるというハックも強力だ。
「このメモが通過すべきチェックリストを渡す:全数値はソースファイルに追跡可能なこと、根拠のない主張は禁止、2ページ以内。」
「それっぽく完成した状態」で止まるのではなく、明確な合否基準を設けることで、アウトプットの品質が安定する。コードレビューのlintルール的な発想だ。
残りの8ハック
- ステップではなく結果を指示する:「どう作るか」はAIに委ねる。「何ができていれば良いか」「誰が読むか」「何のためか」を伝える。
- 先に計画させ、計画を編集する:完成物を直すより計画を直す方がコストが低い。
- 引用を要求し、一つずつ確認する:AIは「それらしい引用」を作れてしまう。確認できなかった箇所はフラグを立てさせる。いわゆる「ハルシネーション」対策として有効だ。
- 自分が答えを知っているタスクで先にテストする:信頼できるかどうかは、採点できる問題で先に確認する。
- 複数の選択肢を出させ、自己批判させる:「3つの構成案を出して、それぞれを批判せよ」。1つの答えは根拠がなくても権威的に見える。
- 実行中に軌道修正する:誤解に気づいたら完成を待たず止める。
- 長いタスクは並列で走らせる:10分かかる調査を走らせながら別の作業をする。
- タスクに合わせてモデルを選ぶ:Googleで済む検索に最上位モデルを使うのは時間とクレジットの無駄だ。
セットアップ系の10ハック
こちらは「設定に20分使えば、その後何ヶ月も恩恵を受ける」タイプの習慣だ。特に見落とされがちな3つを取り上げる。
「タイピングより話す」:音声入力を一度オンにするだけで良い。話す速度はタイピングの約3倍で、しかも「わざわざ打たなかった背景情報」を自然に話してしまう。その文脈こそがAIに欠けていたものであることが多い。
「AIに与えるアクセス権は最小限にする」:Webアクセスだけのリサーチタスクと、ファイルとメールボックスにアクセスできるタスクでは、リスクのスケールが全く異なる。Webページやメールに埋め込まれた悪意ある指示が、あたかも自分がタイプしたかのように実行される「プロンプトインジェクション」を念頭に置いた指摘だ。
「AIが記憶した内容を定期的に監査する」:メモリ機能は便利だが、誤った記憶が静かにその後の全回答を劣化させる。四半期に一度はメモリリストを確認することを推奨している。
その他のセットアップハックは以下の通り:
- 一つの仕事の関連ファイル・指示・履歴を一カ所にまとめる:プロジェクトをまたいだコンテキストの混濁を防ぐ基本的な衛生管理だ。
- カレンダー・ドライブ・メールを接続する(10分で設定可能)
- 繰り返す指示はプロンプトに書かずに設定ページに書く
- 「絶対にやらせないこと」(送信禁止、ファイル削除禁止など)を固定指示に書いておく
- 繰り返すタスクはテンプレート化して保存する
- スケジュール実行は、プロンプトが完成してから行う
- 2回修正しても改善しないセッションは切り捨てて新規セッションを始める
Etzioniの結論
記事はこう締めくくっている。AIは自分が生み出した選択肢のどれが正しいかを判断できない。その判断は人間の仕事だ。
「絶対に眠り込んでAIにハンドルを渡すな。」
Caveat promptor(プロンプトを出す者は用心せよ)。
「Caveat promptor」は、「買い手は用心せよ」を意味するラテン語の法律格言「Caveat emptor」をもじった造語だ。AIに指示を出す者こそが責任を持て、というEtzioniのメッセージが込められている。
モデルの性能向上でこれらのハックの一部は遅かれ早かれ不要になる、とも明言している。変わらないのは、判断する人間が必要だという点だ。
詳細はEtzioni on AI: Become a power userを参照していただきたい。