8月17日、IEEE Spectrumが「How AMD's AI Swarms Are Rewriting the Software Development Playbook」と題した記事を公開した。AMDが社内のソフトウェア開発ライフサイクル全体にAIエージェントスワームを導入し、バグ自動修正の成功率を6%から75%超へ引き上げ、一部コンポーネントではコードの80%以上がAI生成になっているという。自律型AIエージェントが「SDLCを改善する」のではなく「SDLCそのものを書き直す」段階に来ている、というのがAMDの現在の立場だ。
「AIに作業を教える」段階はすでに終わった
GitHub CopilotやTabnineといったコード補完ツールが普及し、AIによるコード生成は珍しくなくなった。しかしそれらはあくまで「エンジニアの手を速める」補助ツールであり、タスクの完了はエンジニア自身が担う構造だ。AMDが取り組んでいるのはその先にある。コード生成にとどまらず、バグのトリアージ、デバッグ、テスト、レビュー準備、リリース統合まで、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の全工程をAIエージェントでカバーするという構想を、AMDは実際に実装し始めている。
ここで重要なのはAMDというコンテキストだ。AMDはGPUアーキテクチャとROCm(オープンソースのGPUコンピューティングプラットフォーム)を擁し、NVIDIAのCUDAエコシステムに対抗するソフトウェアスタックを自社で抱えている。ハードウェアと密結合した低レイヤのコードベースを大量に持つという特殊な背景が、AI自動化の恩恵を受けやすい土壌を作っているとも言える。
2024年時点の目標は「2027年までにAI生成コードを本番コード全体の25%にする」だった。それが1年足らずで30%の生産性向上を達成し、一部のソフトウェアコンポーネントではすでにコードの80%以上がAI生成になっているという。コードベース全体では今年初めに20%を超え、現在は50%に向けて進んでいる。
AMDが計測に用いる指標はシンプルで、「全レビューとテストを通過し、最終製品に採用されたコードのうち、AI生成の割合」だ。意図的に客観的な指標に絞っている点が、数字の信頼性を高めている。
具体的な事例:RSXの自動バグ修正
最も具体的な事例が、AMDのRadeon Software eXperience(RSX)への適用だ。RSXはRadeonドライバスイート全体を構成する製品群の総称で、グラフィックス設定やパフォーマンス監視、ドライバ更新管理などを含む。
2025年10月、AMDはRSXに報告されたバグをAIエージェントで自動修正する取り組みを開始した。市販のAIツールをそのまま使った初期段階での自動解決率は**わずか6%**だった。
そこからAMDが取り組んだのはモデルの再学習ではなく、エージェントに与える目標の洗練化だ。エージェントが複数のアプローチを探索し、定義した成功基準と照らし合わせて評価・収束できるよう、学習ループを構築した。モデル自体の進化とも相まって、解決率は2026年6月時点で75%超まで上昇している。
この「失敗を学習ループに戻す」設計が肝で、モデルを差し替えるよりもループの質を上げる方が効果的だという立場をAMDは取っている。
次のステップ:スワーム型への移行
現在のエージェントは本質的に「エンジニアの思考パターンを模倣するもの」だとAMDは整理している。エンジニアが「どう直すか」を教え、AIがそれを再現する構造だ。
次世代として想定しているのは、エージェントスワーム(swarm=群れ)だ。複数のエージェントが並列に動き、互いに解法を評価・改善し合うアーキテクチャで、エンジニアは「何を解くか」「どんな制約・品質基準か」だけを定義する。「どう解くか」はエージェント群が自律的に決める。
具体的なフローとして記事が示すのは以下のとおりだ:
- エンジニアが問題・目標・制約を定義する
- エージェントスワームが並列で複数の解法を生成・評価・改良する
- 正確性の検証、パフォーマンス計測、トレードオフ比較が自動実行される
- ランク付けされた解法候補と検証結果がエンジニアのレビューに提出される
現在はOpenAIのCodexやAnthropicのClaude Codeといった外部のエージェントハーネスを活用しながら、社内独自のマルチエージェントシステムも並行開発中だという。
エンジニアの役割はどう変わるか
AMDは「AIで人員削減する」という方向性を明示的に否定し、「生産性向上と高付加価値業務へのシフト」が目的だと説明している。社内全体でのAI教育・トレーニングにも投資しているとのことだ。
エンジニアの仕事は「実装」から「仕様の定義」「結果の検証」「戦略的意思決定」へと移行していくというのがAMDの見通しだ。
自律型AIエージェントが「SDLCを改善する」のではなく「SDLCそのものを書き直す」という表現を記事は使っており、これはAMDがどの段階まで変化を見据えているかを端的に示している。
詳細はHow AMD's AI Swarms Are Rewriting the Software Development Playbookを参照していただきたい。