8月18日、Techstrong AIが「A $207 Billion Reality Check: How Oracle's AI Gamble Triggered a Historic Meltdown」と題した記事を公開した。この記事では、OracleのAI基盤投資が株価55%超の暴落と2070億ドルの個人資産価値消滅を引き起こした経緯について詳しく紹介されている。
ラリー・エリソン、個人資産が2070億ドル消滅
かつてドナルド・トランプ大統領とホワイトハウスに並び立ち、「米国AI産業の旗手」として脚光を浴びたOracleの共同創業者ラリー・エリソン(現CTO)。しかし今、その賭けは壮絶な結末を迎えつつある。
2025年9月から2026年8月にかけて、エリソンの個人資産価値は2070億ドル目減りした。 これは単一銘柄の株価下落に起因する個人資産価値の消滅額として史上最大規模だ。一時は純資産4000億ドルを超えて世界第2位の富豪となっていたが、現在は1810億ドルまで落ち込み、Bloombergビリオネア指数で7位に後退している。
Oracleの株価はピークの345.72ドルから55%超暴落し、時価総額は約4940億ドル消えた。
何が起きたのか——Project Stargateという賭け
エリソンが仕掛けたのは「Project Stargate」だ。OpenAIとSoftBankを共同パートナーとした、4年間・総額5000億ドルのAIインフラ建設計画で、10ギガワット級のデータセンター複合施設を大量建設する構想だ。
この計画を実行するため、Oracleは財務を極限まで引き延ばした。
- 2026年度設備投資額:556.6億ドル(自社ガイダンスの500億ドルすら超過)
- フリーキャッシュフロー:マイナス237億ドル(前年度まではプラス)
- S&PグローバルはOracleの信用格付けを引き下げ、短期流動性への懸念を示した
受注残(RPO:Remaining Performance Obligations=将来履行が契約済みの売上残高)は6380億ドルと前年比363%増という数字を打ち出したものの、市場関係者はその大半が長期契約であり、即座のキャッシュに転換されないと見ている。さらに主要顧客であるOpenAI自身のIPOは2027年にずれ込む見通しで、収益化の目算は遠のいている。
MeliusリサーチはOpenAIやAnthropicといったAI企業が計算資源の需要を縮小した場合、Oracleの財務計画の実行可能性そのものが問われると警告する。
「ドットコムバブルの17倍」という試算
MacroStrategy Partnershipのパートナーであるジュリアン・ガランは、現在のAIインフラ投資ブームについて厳しい見解を示している。
「現在のAI投資は、ドットコムバブルの17倍、2008年サブプライム危機の4倍の規模の資本誤配分にあたる」
ガランはさらに、AIエコシステム全体で実際に利益を上げているのはNVIDIAだけであり、データセンター事業者やソフトウェアベンダーは政府系ファンドや継続的なベンチャー資金に依存した持続不可能なサイクルに陥っていると指摘する。
個人資産も担保に入っていた
財務的な打撃はOracleの決算にとどまらない。エリソンは息子デイヴィッド・エリソンが主導するParamount Skydanceによる1100億ドルのWarner Bros. Discovery買収にも深く関わっており、エリソン家の信託が457億ドルの株式コミットメントを行っている。
ラリー本人は404億ドルを個人保証しており、その担保はOracle株11.6億株だ。この株式の価値は契約締結時から約半分に目減りしており、さらに2026年7月末に連邦裁判所が暫定的差止命令を発令したことでディール自体の行方も不透明になっている。
市場は「構造崩壊」か「成長痛」かで割れている
Wall Streetの見方は二分されている。Deutsche Bankなど強気派は、今回の巨額投資が長期的な価値創造の土台を築くと主張しており、現時点でも目標株価を据え置いている。その根拠は、RPO6380億ドルという受注残が将来の収益に転換された際の爆発的な成長シナリオだ。一方、懐疑派はフリーキャッシュフローの大幅なマイナス転落と信用格付け引き下げを根拠に、今のOracleはAI過剰投資の典型事例として市場に刻まれつつあると見る。
記事はNYタイムズやウォール・ストリート・ジャーナルもOracleの苦境と大規模なレイオフを相次ぎ報じていることにも触れており、今や業界全体が固唾を飲んで注目する案件となっている。
エリソンが賭けたのは「コンピューティング需要が資本の制約を上回る」という前提だった。市場はその前提を激しく再評価している。
詳細はA $207 Billion Reality Check: How Oracle's AI Gamble Triggered a Historic Meltdownを参照していただきたい。