8月16日、The Decoderが「One in five US workers now delegates tasks to AI instead of colleagues, survey finds」と題した記事を公開した。米国の就労者5人に1人がかつて同僚や外部委託先に任せていた業務をAIに委譲しているという調査結果を紹介している。「AIを使っている」のではなく「人間の代わりにAIにやらせている」という点が今回の調査の核心だ。
調査の概要
Epoch AIと調査会社Ipsosが共同で実施したこの調査は、2026年7月10日〜19日に、米国の就労成人1,106人を対象にしたものだ。米労働省のデータをもとに選定された、知識労働を代表する10種類の業務タスクについて、AI活用の実態を聞いた。10タスクの内訳は、コンピュータシステム・ソフトウェア開発、データ分析、業務文書の読み込み、記録管理のほか、情報収集・調査、文書作成、コミュニケーション、教育・研修、財務・会計処理、プロジェクト管理が含まれる。
なお、サンプルサイズが1,106人と比較的小規模であるため、結果の代表性については留意が必要だ。また回答はすべて自己申告ベースであり、実際の時間節約量やAI出力の品質は客観的に計測されていない。
最大の発見は「就労成人の約20%が、かつて人間が担っていた少なくとも1つのタスクをAIに委譲している」という事実だ。
ソフトウェア開発での利用率は57%
タスク別のAI利用率を見ると、最も高いのは**コンピュータシステム・ソフトウェア開発で57%**。次いでデータ分析が46%、業務文書の読み込みが39%、記録管理が最低の25%となっている。

タスクによって利用率は25〜57%の幅がある。システム・ソフトウェア設計が最も高い。| 画像: Epoch AI
ただし、AIが「タスク全体をこなす」ケースはまだ少数派だ。AIがほぼ全工程を完了させるのは、ソフトウェア開発でのみ10%に達し、他のタスクでは7%未満にとどまる。現時点ではAIは「部分的な補助ツール」として機能している場合がほとんどであり、タイトルに掲げた「委譲」はあくまで「一部タスクの移管」を指す。完全な自律的遂行とは区別して読む必要がある。
人間からAIへのタスク代替が最も進んでいるのはデータ分析で、7.1%の回答者が「以前は人間が担当していた業務をAIが引き継いだ」と回答した。次いで業務文書の読み込みが5.7%、記録管理が5.3%となっている。Epoch AIはこのタスク代替が「即座に雇用の喪失を意味するわけではない」と強調している。
時間節約は「AIへの依存度」に比例する
AIがタスクの一部のみを担当する場合、時間が節約されたと報告されたのは**37%のタスク。AIがほぼ全工程を担当する場合は53%**に上昇する。

AIが大半を担うと、時間節約を報告する割合は53%に上がる。| 画像: Epoch AI
一方で、AI支援を受けたタスクの約6分の1は、以前より時間がかかるようになったとも報告されている。AIとのやり取り自体に時間を要するケースや、空いた時間を使ってより丁寧に仕上げるようになったケースが要因として考えられるという。
AIの出力の3分の2はほぼそのまま使われている
特に注目したいのが編集量のデータだ。AIが生成したアウトプットの66%は、変更なしまたは軽微な修正のみで使用されている。完全無編集は6%、逆に大幅な書き直しを行うケースは5%にとどまる。

約3分の2のAI支援タスクで、出力は無編集か軽微な修正のみで使用される。| 画像: Epoch AI
ただし調査者は「編集量が少ないこと=品質が高いこと」ではないと断っており、時間節約と編集量の間に一貫した相関も見られなかったとしている。
「完全自動化」より「タスクの再分配」が実態
Epoch AIはこの調査をまとめて、AIを「汎用性は高いが通常は自律的でない職場ツール」と定義づけている。データが示すのは、職務全体の自動化ではなく、人間とAIの間でのタスク再分配が進んでいるという構図だ。

就労成人の約5人に1人が、調査対象の10タスクのうち少なくとも1つをAIに委譲している。| 画像: Epoch AI
他調査との比較
同様の傾向は他の調査でも確認されている。2025年8月のGallup調査では、米国労働者の45%が業務でAIを使用しているものの、毎日使うのは10%のみという結果が出た。またAnthropicが実施した調査(Claude利用者約9,700人対象)では、回答者の約半数が「AIはすでに自分の仕事の50%以上を担えると思う」と回答している。ただしこちらは特定AIサービスのユーザーに限定されたサンプルであり、今回のEpoch AI調査のような無作為抽出ではない。
詳細はOne in five US workers now delegates tasks to AI instead of colleagues, survey findsを参照していただきたい。