8月15日、Inside AI Newsが「Anthropic IPO Valuation Hinges on $190-200 Billion 2028 Revenue Forecast」と題した記事を公開した。上場企業の評価では通常「現在の利益」が基準となるが、AnthropicのIPO評価額は2年後の2028年の売上予測1,900〜2,000億ドルを根拠に算定されつつあるという。先行投資が膨大で現在の損益が実態を反映しにくいAI企業特有の事情が、この異例の評価手法を生み出している。評価額は最大2兆ドルに達する可能性があると複数の情報源は証言している。
2028年売上1,900〜2,000億ドルという数字の根拠
同社の財務事情に詳しい2人の情報源によると、Anthropicは2028年の売上高を約1,900〜2,000億ドルと社内で予測している。この数字はこれまで外部に公表されておらず、同社が今年5月に公開した年換算売上高470億ドルをはるかに上回る。
直近の数字を並べると、成長の速度感がつかめる。
- 2025年末時点の年換算売上高:約90億ドル
- 2026年5月時点の年換算売上高:470億ドル超
- 2026年第2四半期の売上高予測:109億ドル以上(前四半期比2倍超)、同四半期の営業利益は5億5,900万ドルで初の黒字転換を見込む
- 2026年初頭までの3年間、売上高の年換算成長率は毎年10倍以上
この爆発的な成長ペースが、投資家をして通常よりはるか先の将来——2028年——に目を向けさせる背景にある。
なお、AnthropicはAmazonとGoogleから巨額の出資を受けており、競合するOpenAIやGoogle DeepMindと並ぶ大型LLMプロバイダーとして市場に位置づけられている。こうした資本構造と競合環境が、2028年時点の市場規模予測の前提となっている。
なぜ「2年後の売上」で評価するのか
上場企業の評価には通常、現在の利益が重視される。代表的な指標がEBITDA(利払い・税金・償却前利益)で、企業の実質的なキャッシュ創出力を測る際に広く使われる。しかしAnthropicの場合、GPU購入、モデル訓練、推論インフラ、採用といった莫大な先行投資が現時点の利益を大きく押し下げており、EBITDAは実態を反映しにくい。
そこでウォール街が採用するのがEV/Revenue(企業価値÷売上高)倍率だ。高成長のソフトウェア企業に広く使われる手法ではあるが、2年先の売上予測に掛け合わせるのは異例で、4人の情報源がこの手法の採用を証言している。
比較対象として挙がっている企業は以下の3社だ。
- Palantir:今期予想売上高の53倍で取引中。AI関連の急成長銘柄として参照される
- Cloudflare:2026年予想売上高の41.6倍。高成長ソフトウェア・インフラ企業として比較
- SpaceX:同じく41.6倍。現在の財務よりも将来の規模への期待で評価された前例として
SpaceXは今年6月に記録的な評価額でIPOを実施しており、その過程では2029年までの売上予測が使われた。AIチップメーカーのCerebras Systemsも今年のIPOに際し、2028年の売上見通しを根拠として示している。こうした前例が、Anthropicの評価手法を正当化する文脈として機能している。
「2兆ドル評価もあり得る」——ただし持続するかは別問題
投資会社Aleph Investmentsのプリンシパル、David Merkel氏はこう述べている。
「Anthropicが2兆ドルの評価額に達することはあり得る。ただ、それが長期的に維持されるかどうかは疑問だ。AIが本当にそれだけの生産性向上をもたらすのか——これを値付けする立場なら、当然問わなければならない問いだ」
現在のAI関連株への投資熱は高い一方、AI投資の支出ペースを嫌気した売りが大手テック株を直撃しており、Anthropicの比較対象企業も例外ではない。高い評価額が正当化されるかは、モデル訓練・推論の効率改善と、売上拡大に伴うコスト比率の低下——この2点が現実のものとなるかにかかっている。
さらに視野を広げると、OpenAIも2026年のIPOを視野に入れているとされており、大型AIスタートアップの上場ラッシュが今後の市場センチメントや評価基準そのものを塗り替える可能性がある。AnthropicのIPO評価手法の成否は、後続する同業他社の上場戦略にも影響を与えることになりそうだ。
詳細はAnthropic IPO Valuation Hinges on $190-200 Billion 2028 Revenue Forecastを参照していただきたい。