8月13日、Techstrong.AIが「Deloitte: Enterprises Face Major Readiness Gap for Agentic AI」と題した記事を公開した。エンタープライズ企業がエージェントAIの導入計画を積極的に掲げる一方、実行準備が大幅に追いついていないという実態について詳しく紹介されている。
デロイトが発表したレポート「AI agents are only the beginning: The path to agentic transformation」は、エンタープライズ企業のエージェントAI導入をめぐる「計画と現実のギャップ」を数字で浮き彫りにした。
計画は壮大、準備は最低水準
調査対象のビジネスリーダー・ITリーダーのうち、74%が「4年以内に業務プロセスの約半分をAIエージェント中心に再設計する」と回答した。さらに61%が「大半のエージェントがほぼ自律的に動作し、人間は監督役に回る」と期待している。
ところが、現在の準備状況は惨憺たるものだ。
- 自社がエージェントAIに「十分準備できている」と答えたのはわずか5%
- マルチエージェントシステムの本格展開に達した企業は15%
- 本格展開済みの企業ですら、「さらなる拡大に準備できている」と答えたのは**46%**にとどまる
エージェントAIとは、単一のタスクをこなす従来の生成AIとは異なり、複数のステップを自律的に判断・実行できるAIシステムのことだ。近年、OpenAIのOperatorやAnthropicのComputer Useなどが注目を集め、企業導入が加速しつつある。
「技術の導入」より「業務の再設計」が難関
調査結果が示す最も核心的な問題は、技術的な壁よりも組織・業務プロセス面の未熟さだ。
準備状況を領域別に見ると、差は歴然としている。
| 領域 | 準備できている・十分準備できている割合 |
|---|---|
| ビジョン・戦略 | 52% |
| テクノロジーインフラ | 48% |
| データ | 42% |
| リスク・セキュリティ・ガバナンス | 39% |
| ワークフォース(人材・組織) | 25% |
| ビジネスプロセス | 21% |
ビジネスプロセスとワークフォースの準備度が突出して低い。技術スタックを整えてもエージェントが「使える仕事」をするためのプロセス設計が追いついていない、という構図だ。
スケール展開を阻む障壁として挙げられた主な要因は以下のとおり。
- 統合・アクセス可能なデータの欠如:72%
- エージェントのガバナンスと信頼性への懸念:70%
- 統合コストと複雑性:67%
「現行ワークフローに乗せる」アプローチの限界
多くの企業は、業務フローを根本から作り直すのではなく、既存のワークフローにエージェントを追加するという現実的な選択をしている。デロイトはこのアプローチが早期の成果や経験獲得につながると認めつつも、「最終目標ではなく過渡的な戦略にとどめるべきだ」と指摘している。
人材面の課題も深刻だ。43%のリーダーが「今後12〜18ヶ月以内にエージェントAIが大幅な人員構成の変化を引き起こす」と予測し、2〜3年先を見るとその割合は72%に跳ね上がる。
一方で、従業員とAIエージェントの協働設計は進んでいない。75%が「人間とエージェントの協働は自動化単独より高い価値を生む」と信じているにもかかわらず、実際にその仕組みを定義できている企業は半数に満たない。また、半数の企業がAI関連の人材変革への投資が不十分だと認めている。
デロイトが提言するロードマップ
デロイトは企業に対し、以下を求めている。
- 長期的なエージェントAIロードマップの策定と、業務成果から逆算したワークフロー再設計
- エージェントが独立して決定できる範囲、人間が介入すべきタイミング、責任の所在を明文化したルール整備
調査は2026年4〜6月にかけて、エージェントAI戦略・実装に直接関与する米国の501名(シニアマネージャーからCスイートまで)を対象に実施。20名のエグゼクティブおよびAI・データサイエンスリーダーへのインタビューも加えて分析されている。
※編集部の考察:「計画74%、準備5%」という数字は、多くのCTOが感覚として抱いている懸念を端的に裏付けている。技術選定やPoC(概念実証)の段階を終えた今、問われているのはプロセス設計と組織変革への本気度だ。
詳細はDeloitte: Enterprises Face Major Readiness Gap for Agentic AIを参照していただきたい。